君は誰

「君を想う」の「君」は誰なのか、それをぼんやりと意識しながら読んでいた。「君」といえば、戦国時代なのだから主君であろうが、野武士が主君をどのように意識するのか興味が湧いてくる。次々と現れる戦国大名に見出され、主従関係ではないものの、君が主人公の中で重きを成していく。
その一方、育った環境の中での君も大きくなっていく。この君は母、兄弟、幼馴染、友達、周囲の人々であり、主君とは全く違った君である。
多くの君との係りで「声」が聞こえてくる。天の声なのか、天の代わりの君のそれなのか、それとも主人公にとっては君の声が天の声だったのか。

題名の『天声 -君を想うー』はこうした流れを一言で表し、常に題名を意識できる作品である。また重要なキーワードである「〇〇〇」(あえて伏字にします)が「君を想う」ことを痛切に感じさせる。

登場人物の仕草や物の言い方が如何にもそうだろうなと納得してしまう。戦国時代の武将だけでなく、芸能一座や名前の残っていない足軽などの話ぶりもなるほどと感心してしまう。

戦国武将も、「天声」を聞き「君」を想ったのだろうとしみじみと感じる作品だ。

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天声 -君を想うー