有機物であれ、無機物であれ、条件が揃えば腐食する。

 主人公のハナエと、その恋人になったテツ(正確には彼から付き合おうと言った)のお話です。
 まず、タグに『せつない』とありましたが、私は『悲しい』や『虚しい』だと思いました。
 各話のタイトル通り、高校二年、大学二年、社会人二年時のお話となっていて、全てハナエ視点のお話となっています。
 ハナエは、彼氏になった、いつも泰然としているテツに憧れを抱いています(三話目までこれは同じなので現在形とします)。
 しかし、テツは小さな失敗を繰り返し、挫折してしまったのです。流されないで生きようとした結果、潰れてしまったのです。これは私にも似たような体験があるので、ちょっと気持ち悪くなりました。あまりにも似すぎていたので。
 ハナエはその彼を彼女の感性でいう『桜』と同じような感覚で見ています。
 社会人になる頃には、残念な事に、泰然とし、『孤高』という言葉が似合うテツは、ハナエに『依存』するようになっていました。
 おそらく、テツは挫折した事によって、ハナエしか心の拠り所がなくなってしまったのでしょう。ハナエはそれを嫌いつつも、抗えなくなっています。
 それでも、最後にハナエはテツを向き合おうとします。最後にその描写があるので、どうしようもなく虚しい中に救いだけはあると思いました。

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