来るべき文字禍

無駄のない設定と鮮やかな起承転結、それらを補強する豊富な知識。
〈カクヨム計劃トリビュート/〉に相応しい、言語をテーマにした傑作短編です。

ディスレクシアの主人公、文字を持たない村出身の留学生、そして言語学者。
言葉に対し独特の視点を持つ人々によって物語は進んでいきます。
その過程で明らかになるのは言葉の在り方と、人の在り方。
そして人の行き着く先。

虐殺の言語のアイデアを煮詰めた高密度な設定を展開しつつも、決して単なる後追いにはなっていません。
言語や脳に関する解釈には人工知能も絡められ、伊藤計劃氏の著作とは異なった趣があります。
そしてそのいずれもが伏線として機能し、見事な着地点へと読者を導きます。

オチは素晴らしいの一言。
テーマや雰囲気もドンピシャで、ひたすら読むのが楽しかったです。

その他のおすすめレビュー

島野とってさんの他のおすすめレビュー63