――舞台は広島。時は、2016年から1945年夏へ少年少女がタイムスリップする物語――
ある日、桃弥の家に大崎時正と名乗る男子が現れ、物語は大きく動き始める。
時正は1945年の広島に住んでいたと語り、時正の話を信じた桃弥と音々は時正と共に平和記念公園へ出掛ける。そこで三人は雷に打たれ、1945年8月2日にタイムスリップしてしまう。
――刻一刻と迫る原爆投下の前に、とった彼らの行動とは一体?
戦時中の内容はとてもシリアス。事実として、もしかして、あったかも知れない内容に涙します。
信用と信頼。愛情と友情。繋がり深まっていく絆。理不尽な戦時中の世界観。失われた記憶と、思い出した記憶が交じり合う時に、奇跡は起こるのでしょうか?
祖父。母。世代を超えて垣間見た謎の少年少女との関係は、時を超えて記憶の淵へと浮かんでは消えていく……。
絆という深いメッセージが作中を通し、友人や家族を繋げ語るシーンは、胸が苦しくなる程に心に染みます。悲しみの中でも、少なからずの救いが描かれていたのは流石の一言です。特に蛍が良い演出をしています。本編と、サイドストーリーに出てくる蛍の意味。納得と切なさが胸を過ります。
タイムスリップというファンタジー要素を取り入れた、大切な人との絆を描いた作品。タイトル回収がジンワリと胸に刺さり、物語の結末は甘く切なく、そして清々しさに華を添えて作品をより感動的に盛り上げます。
この現代にもどこかの世界で繰り返されている戦争。戦争の被害者の悲しみや悲痛な訴えが聞こえるようでした……。
引き込まれるように本編+SSまで一気に読破し、SS12話で堪えていた涙腺が決壊して大号泣しておりました。
広島のお話ですが、ただ悲惨で残酷なお話しではなく、血も心も通った個々の人生を描いていて、それは資料として知る広島よりももっとクリアにもっとリアルに感じ取れるものでした。
本編では恐らく未完で、時正sideのSSを補完することでこの作品は完成するのだろうと思います。
時正くんの想いが切なくて優しくてそして温かくて、思い出すだけでこうしてレビューをしたためている時もまた涙がつたいます。
美しくも切ない素晴らしいラストでした。
こんな素敵な作品を書いて公開してくださった作者様に心から感謝を申し上げます。
ありがとうございました。
アメリカ大統領が平和記念公園に訪れた年。
現代に生きるごく普通の学生、桃弥と音々。
二人は原爆投下数日前の広島にタイムスリップしてしまう。
その先を知っている二人は何とか被害を最小限に抑えようとするが……。
扱っているテーマはとてもシリアスですが、様々な人の情けや頑張りが主題のようです。
原爆投下の凄惨さ、平和の尊さをこれでもか、と強調する作品ではありません。
ゆえに、不思議な爽やかさえ感じます。
そしてタイトルにあるモノクロームの夏という意味。
これを知ったときにタイトルの重さに気づくはずです。
読めば当たり前の日常の有り難さを感じられますので、ぜひご一読を。
過去の人が現代へ、未来の高校生が過去へタイムスリップする物語は数あれど、この物語の最大の特長は、皆、優しく、素直だという点に尽きると思いました。
タイムスリップものでは、多かれ少なかれ、過去から来た人が現代の生きたかに絶望したり、過去へ行った人が当時の役人、軍人に憤る展開がありますが、本作の時正、音々、桃弥に怒りという感情は皆無です。
素直で正直で、ただ一杯のカレー、ただ1個のおにぎりに感謝できる、こんなものがと粗末にしない佳き人たちです。
そんな彼らが真剣に挑むのは、避難させる事。
原爆投下を止めたいのではなく、皆を避難させたいと行動するのです。
これは、奇跡や魔法のような解決方法を求めるのではなく、自分と、また時代と向き合っているのだと強く印象づけられました。
戦争は悲劇です。
だから作中から感じられる戦争の雰囲気は、ただただ悲しい。
変えたい未来があるのではなく、守りたい未来があると感じたのは、そこでした。
桃弥や音々の素直さ、真剣さ、それを守るために時正や他の登場人物は行動したのだと思います。
優しい時代ではなかったけれど、優しさは確かにあったし、今も残っている。決して誰かが未来を改変し、あの悲しい戦争を阻止したから優しさが戻ってきたのではない、と強く感じます。
作中ではアメリカ大統領が来日した年を現代の舞台にしています。
奇しくも今、2019年11月は、ローマ教皇が来日し、広島、長崎を訪れました。
今だからこそ、読めてよかったと思う物語です。
1945年、広島に原爆が投下された瞬間、1人の少年が現代へとタイムスリップした。
2016年、広島に住む高校生・音々と桃弥の前に現れたのは、2人の祖父達と深い関わりのある時正という少年だった。
更に今度は、音々と桃弥が、時正と共に原爆投下のあの広島にタイムスリップしてしまい……。
時正は、なぜタイムスリップしてきたのか!
音々と桃弥は、なぜ何度もタイムスリップを繰り返すのか!
そこには、犠牲者だけでは終わらせられない、家族や仲間達とのあたたかいドラマがあった。
当たり前にある現在の平和で美しい国は、私達の祖先や過去の人間達が創りあげてきた尊いもの………。
戦争を知らない私達が二度と愚かな選択をしないように、作者様の熱いメッセージが心に伝わってくるとても素晴らしい作品です!
広島に住む高校生の「桃弥」と「音々」は幼馴染同士だったのですが、アメリカ大統領が広島を訪問した日、不思議な少年「時正」と出会います。
どことなく古めかしい格好をしていた彼は一九四五年八月からタイムスリップしてきたのです。
そして桃弥たちと時正の間に縁があることがわかり始めた直後に、今度は三人が終戦間近の広島にタイムスリップしてしまい……。
明るい物語ではありませんが、その底辺には「平和への願い」「家族愛」「命と向き合う大切さ」などいくつものテーマが描かれており、同時に「桃弥」と「音々」の青春物語でもあります。
戦時中でも懸命に生きようとする人々、原爆に人生を狂わされながらも家族を思いやる姿が繊細な心理描写を交えて読みやすく描かれていて、スムーズに最後まで読むことができました。
日本の夏を感じさせる切ない物語でした。