第7話 現実へ
一頻り話し終えると、そのテツと呼ばれる男は満足そうにニヤニヤしていた。
自分たちも思わず目を丸くしていたことだろう。
「それからはな、Aは人を殺すのになーんもためらいなんて無くなったってよ」
分かったか? 兄ちゃん! そういって、はっはっは、と言いながらまたどこかへ消えて言った。
自分が覚えている思い出話はここまでだ。
*
「ねえ、先生さ、この薬の量どこで調べたの?」
「えーと、ネットです」
「あのね、君はもう『プロ』なんだよ? 全然量ちがうよ、これ投与したら患者さん間違いなく死ぬからね。君の行動一つで、人の命が変わるんだよ? 研修医だって立派な医者なんだから、いい加減学生の気持ちはもう捨ててね、わかった? 5分で調べて来て」
研修医はうつむきながら、はい、と小さく言って小走りに部屋を出て行った。
今、自分もプロとして仕事をしている。皮肉なことに、彼が命を奪う仕事なら、自分は命を救う仕事をしている。でもそんな真逆な仕事でさえ、プロという認識は共通するんじゃないかと思っている。
一つ一つの行動に責任を持ち、目的を達成するために準備をし、最後まできちんとやり遂げる。そんなプロの意識としてはひょっとしたら近いものを持っているのかもしれない。
プロ。
その響きを聞く度に、自分は思い出すのだ。きっとどこかにいただろう、そのプロの殺し屋のことを。
プロの殺し屋 木沢 真流 @k1sh
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