プロの殺し屋
木沢 真流
第1話 ふと思い出すのは、
「えー、このようにして、内服薬を調整して、患者さんも良くなったらいいな、と考えています」
「は? 今君何て言った?」
「えー、何がですか?」
「だから、良くなったらいいな、じゃダメなんだよ。あなたは研修医だからって、もう医師免許持ってる以上は『プロ』なんだよ? 治ったらいいな、じゃなくて治さなくちゃダメでしょうが。もう一回治療方法勉強してみて。このままじゃ患者さん死ぬよ」
「へー、すみません」
そう言うと研修医は何度かぺこぺこしながら、また患者さんの元へ帰って行った。
何を偉そうに。
そう時々自分を客観的に見つめる時がある。今の彼らに若い時の自分はとても見せられない。それはそれはひどいこと、沢山やらかした。少なくとも今の若手の何倍も社会には迷惑をかけてきたと思う。そんな自分も今じゃこうやって、研修医を指導する立場になっている、面白いものだ。
ただ、この「プロ」という響きを聞くたびに、どうしても思い出す事がある。その昔、一度だけ出会った事がある、その道の「プロ」の事だ。
いやいや、医師ではなくて、その……なかなか大きい声では言いにくいのだが、その道のプロ、といっても少し普通とは訳が違う。私が言いたいのはおそらく一生で一度きり。もう二度と会う事は無いだろう、プロの「殺し屋」の話である。
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