読者に元気を与えてくれるSF(サイエンス・フューチャー)な物語

ツイッターで偶然見かけて読んだのですが、とても面白かった。
まず『月』という、誰もが一度は学びきっと忘れないであろう科学や宇宙学をテーマにしたことで読者に大きな親しみと歓迎感を与えてくれている。

そんな重力の小さい世界でメジャーなスポーツが行われたら? そんなのワクワクするしかない。既存のルールに身近な科学が加わるだけで、作品の魅力と可能性、それがあらすじだけで脳内に一気に広がった。

少年時代の経験や成長から始まる冒頭も、王道ながら物語にすぐに感情移入させてくれた。そんな描写に少し照れ臭さを感じたのは、読者である自分がどこかあの頃を思い出したからだろうか?

読者層、ターゲットとしては万人受けするかは未知数(これはどの作品にも言えること)だが、一字一句からエネルギーを感じる。活字でここまで読者に生命力を与えてくれるのは、作者がきっとこの物語を本気で楽しんでいるからだろう。それが読者とシンクロしたからこそ、ここまで楽しめたのだと思う。

第一部完ということで、これからも続きがあるのであれば、一読者としてこの物語と登場人物たちの成長を追いかけたい。僕自身は学生時代にスポーツに打ち込んだことがないが、それでも夢中になれたということは、こんな時代や憧れも抱いてみたかったと思わせてくれたのだろう。この物語に出会えて本当によかった。


※ ここからはあくまで一個人の意見。真に受けないでほしい。

宇宙や科学をテーマにするのは本当に難しい。読者によっては矛盾点や不明点を指摘されるかもしれない。なので密な描写にこだわらなければいけない部分もあるだろう。

しかし、どうかその理論や科学の説明によって、読者を難しく悩ます作品にはなってほしくないと思った。この作品は直球かつシンプルに突き進んでほしい(読者を楽しませる、納得させる説明や表現も必要だが・・・)。

これからの楽しみという意味で★は二つ。いつかこの物語が最高の結末を迎えたとき、ムーンサルトをしながらラストシュート★を決めたい。

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