街の、人々の、息吹が感じられる本格的ハイファンタジー

自由を尊重する街、曰く付きの者が集う街、フォートレスト。
そこで何でも屋的に住人達の依頼や相談を引き受けるジョゼと、少し不思議な少女セロの周りで起こる出来事を綴りつつ、過去を紡ぐ叙事詩やフォートレストを挟む国々の陰謀などがゆっくりと複雑に絡んでいく壮大な物語が本作です。
(第八章読了時では、これから物語が壮大な山場へと向かっていこうとする印象です)


異世界ファンタジーの人気路線からはきっと確実に離れている物語なのだと思います。
しかし、ハイファンタジーの重厚で幻想的な雰囲気が物語の土台となりつつも、ラノベ的な愛嬌のあるキャラクターが笑いを添えたり、ミステリーテイストの事件が絡んできたりと、圧倒的世界観にも読者が抵抗なく入り込めるような入口が随所に散りばめられており、その独自の世界に心地よく浸れるようになっています。

あくまでも私の推測になりますが、作者様は多民族が共存する文化をよくご存知なのではないかと思います。
(ともすれば、ご自身がその中にいらしたのかも)
フォートレストの街が、そこに集う人が、まったくの架空でありながらも、その息遣いや奏でる音、臭いまでもが伝わってくるように感じられるのは、そのような背景もあるのかもしれないなどと感じました。

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