ただいま、さよなら、おかえりなさい

 連載開始当初から、リアルタイムに更新を見守ってきたこの作品が、とうとう終わってしまった。
 実は第二部や番外編の開始も期待していたのだけれど、すべてはすぱっとここで、潔く「さよなら」してしまうらしい。だから、一読者にすぎない私は「いってらっしゃい」空の向こうまで、と。見送ることしかできないのだろう。綺麗な青空を見上げて、太陽のまぶしさに目を細めながら。涙なんて、光が目に染みただけさと言い訳して。
 でも、同時に安心もしている。エア・ウォーカーは、徹頭徹尾、真鍋マグの物語だったから。もし、この作品の第二部が始まって、別の主人公が現れた時、その彼彼女を素直に応援できるか、勝手に……そう、「空が落ちてくるんじゃないか」みたいな、的はずれな不安を抱いていた。でも、これは、空を歩くものたちの物語だったのだ。
 軽快な文章は、小説と言うよりノベルゲーのような、詩のようなもので、でも、行間の向こうに読者がそれぞれの空を見出すところも含めて、一言一句がすべてこの作品だったのだと思う。

 一文字一文字に、対空警邏の彼らが生きていた。

 もう彼らに会えなくなると思うと寂しいし、おまけの時間で見た穏やかな姿に、本編のあれを思い出して胸も痛む。悪く言えば尻切れトンボのような終わりかもしれない。飛獣は最後まで謎めいた理不尽な怪物だったし、人類はこれから緩やかに滅亡していくしかないのとしか思えない。英雄、柊アリアは、ご覧のとおりだ。
 それでも、希望があると告げたのがさよなら東京のラストだった。

 エア・ウォーカーというタイトルを見た時、最初に思い描いたのはダンシング・オン・エア(空中舞踏)。英語の慣用句で、意味は「絞首刑」だ。首を吊られ、もがく足の動き。
 そこまで凄惨でないにしても、どことはなしに、昇天せるものを予感させるタイトルだった。実際、その印象は違えてなかっただろう。
 けれど、昇天の他にもう一つ、この作品タイトルには〝清冽〟の印象もあった。そして、それもまた、違えてはいない。

 さよなら、エア・ウォーカー。

 そして、おかえりなさい。

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