他人
「ただいま……」
あの後俺が方向音痴ということを知っていたクラスメイトが俺の知っているところまで送ってくれた。
「とりあえず……課題先やろ……」
家に入った途端に襲って来る吐き気を抑え、色んなプリントを乱雑に突っ込んであるファイルから課題のプリントを引っ張り出す。プリントを見てため息を吐きながら俺は課題をやり始めた。
「優月!あんた帰ってきたならなんないいや!」
課題を途中まで進めているといきなり母親が入ってきた。
「言ったって……」
母親が入ってきたことによってさらに増した吐き気を抑えるのに必死で軽く返事が荒くなった。
「聞こえんかったわ!ご飯自分でやりーよ!」
母親が少しイライラした様子でそう言い扉を大きな音をたて閉めた。
「やばっ……無理……」
母親の出ていった直後に吐き気が限界に達しトイレに駆け込み俺は吐いた。
「あー……飯……とか無理だわ……後で食おう……」
部屋に戻り部屋に常備してある栄養ドリンクを一気に飲み再び課題をやり始めた。
「終わった……寝たい……飯……風呂……は明日朝シャワー浴びればいいや……」
俺は1人でそう言いながら部屋を出ようとすると親が勢いよく階段から上がってきた。
「あんたいつまでもなにやっとんの!ご飯ゆーとるやろ!?」
「課題やってたんだって……」
「そんなもん知らんわ」
親がそう言うと俺を軽く蹴り下に降りて行った。
「……もう飯も食いたくねぇな……」
イライラした気持ちを抑えながら俺も下に降りた。
「……寝よ……」
ご飯を流し込むように飲み込んで一刻も早く親から逃げるように自室に駆け込み布団に寝転がった。
体力の限界もあり吐き気を忘れて意識を手放すことが出来た。
ドスッ!
腹に重たい衝撃と音を聞きながら俺は痛みで目覚めた。
「……なに……」
そう言いながら焦点のはっきりしない目で腹を見ると親の足が乗っていた。
「風呂入れ言うとるやろ!?」
少なくとも寝ていた人間に言われても困ると思いながらも布団から出てイライラに任せて舌打ちをすると親が髪を掴み蹴りを入れてきた。
「……なに……」
蹴られることも何もかも慣れてしまったから特になにも思わない。ただうざいとしか思えなかった。
「あんたは親をなんだと思っとんの!」
親がそう言って来たが俺はそれには答えず風呂に向かった。
「親をなんだと思ってるなんて……他人としか思ってねぇよ」
俺は風呂場で腫れた所を冷やしながらそう呟いた。
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