第2話

私はとても良い子だった。あんまり良い子だったから教科書は貰ったそのあと一週間で読んでしまって、授業は退屈で仕方がなかった。そんな私が中学も高校もろくに行っていないのは当然で、いや、中学には行ったんだけど、バカばかりで憂鬱だった。高校は一年の一学期で辞めて大検。そこそこ有名な大学には入ったけど、それがなんだっていうんだろう。まあいいや、私は幽霊なのでレイと名乗っている。死んでからそろそろ4年が経つ。

初めての相手はどこかの社長だった。45だと言っていたと思う。学校終わりにふらふらしていたら声をかけられて、家に行ったら犯された。内臓を抉られているみたいに熱くて、その後、無性に叫びたくなったのを覚えている。14で大人に相手にされているのはそんなに嫌な気分ではなかったし、お小遣いもくれたから少しの間付き合っていた。付き合っていた、というのだろうか。玩具だよなあどう考えたって。そのロリコンの社長は、未成年淫行ではなくて脱税で捕まったのでその後のことは知らない。未成年淫行で捕まったのは16の時の相手、サラリーマンだった。私も警察に連れていかれて、迎えに来た母親が泣いていた。どうして泣いているんだろうと思っていたら電話越しに単身赴任中の父親の怒鳴り声が

して、母親は私にあなたのせいで、と言った。ああそうだ私がいるからみんな不幸。翌日家を飛び出してナンパされた相手は大学生で、シャブ中だった。シャブはやらなかったけれど草を覚えたのはこの時のこと。それから、18だと言い始めたのもこのころだ。彼はラリってる時に外に出て職質されて、現行犯。そして。その後私は恋をした。居酒屋の店員だった。彼は嘘をつかない人だったから、私は嘘をつく癖を直そうとして、彼はしっかり働く人だったから私もしっかり働こうとして、彼は、いなくなった。詐欺で捕まったのだった。信じられなくて何度も面会に行こうとしたけれど、あ、留置場に面会に行ったことがある人ならわかると思うんだけど、留置されている人は面会を「拒否」することが出来る。

私は、拒否された。その時から私は幽霊になった。お酒と煙草と自傷行為と向精神薬で留まる幽霊。私には、何もない。

幽霊になって4年後、「S」に出会った。自己紹介は、これでお終い。

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