まず、ほとんどの人が通ったことのある学生という身分。共感できる場面が多いと思う。同学年のとある少女との出会いによって、少年が少しずつ成長していくボーイミーツガール。
なによりも、格ゲーシューティングゲー世代なのでVRで思いっきり戦えるというのがうらやまけしからん。リアルを持ち込めてゲームならではの機能もあるってのがいい。
様々な人にめぐり合い、少年少女が少しずつ歩み寄って成長していくのが面白い作品だと思う。そして段々とリアル方面でヒロインが止められなくなっていくところも。ヒロイン力(物理)はいいぞ、主に目潰しだがな!
ついでなので私のゲームキャラも首をへし折ってもらえませんかね?
ダメですかそうですか。
この殺し愛は微笑ましい!
VRゲームと暗殺拳と相性は抜群で、臨場感と興奮が画面越しから読者は殴り付け、虜になってしまいました。
今の時代は使われなくなった暗殺拳。
それを極めることに全てを費やしていた葵ちゃんですが、父の死によって道半ばとなります。
偶然と運命によって、暗殺者の葵ちゃんと出会ったのは、VRゲームサドンデスの王者。
二人の出会いが、二人のお付き合いが、二人の殺しあいが、二人を最強のゲーマーへと、導くのか。
無表情のゴースト・キャットが笑うのは、最後に相手に殺すとき。
ちなみ、私は葵ちゃんの可愛さにとっくに殺されてます。
せっかく一子相伝の暗殺拳、殺人拳を身に着けたのに、その技術が暗殺や殺人にしか使えない――そんな悩みを抱えていた全国の少年少女の。
そして、自分の子供に暗殺拳を伝えるか悩んでいた親達の。
これは希望だ。
プレイヤーの技術がダイレクトに反映されるVR格闘ゲーム。この中で、暗殺拳の使い手は初めから大きなアドバンテージを持つけれど、それが絶対的な強者となれるかと言えば、決してそうではない。
これが「ゲーム」だから、力や速さを補正する能力値の割り振りや、非現実の効果をもたらすスキルの存在、ゲーマーとしての経験の差、ただそれだけでもない。
暗殺拳の「初見殺し」という最大の強みを、「殺された人を見る」ことで、また「一度殺される」ことで、削ぎ落とすのだ。このバランス調整が熱い。ストンと落ちる。
故に、暗殺拳はチートであり、チートではない。だから戦闘は緊迫するし、成長を実感するし、物語に没入する。暗殺拳で殺されても死なない者がいるからこそ、全てのプレイヤーに成長の余地があり、未来の可能性がある。
暗殺拳はまだ輝けるし、暗殺された者を輝かせる力もあるのだと知った。
プラネットとという超リアルVR格闘ゲームがもたらしたのは、ゲームの枠を超えた理想の追求だ。
他人を殺してはいけない、暗殺拳の継承者であった葵も、ここではそんな至極当然な社会規範の枷から解き放たれ、大いに技を振るうことが出来る。
己の存在意義すら失いかけていた彼女にとってここは、まさに理想の空間で、救いとなる。
それは彼女だけではなく、この作品の様々な人物たちがそれぞれの理想を磨くべくプラネットに挑む姿が描かれ、それらもまた、それぞれに美しい。
戦い競い合うことの肉体的なリスクを排除し描かれる、理想的な理想の追求。
だからこそこのゲームは、熱い!
あまりに原始的(プリミティブ)で根源的――読み進める内に感じた本作の魅力は、何と言ってもこれに尽きるのではないか?
王道のボーイ・ミーツ・ガール、甘酸っぱい青春、VR格闘ゲーム……この作品の魅力はいくつもありますが、これらの根源、中心に位置するものは、どの人間の中にも目指す普遍的な感情、衝動です。
「できることをやりたい」
「自分の力を出し尽くしたい」
「出し切った以上の力を、新しく獲得したい」
問われたら答えたくなるように、スイッチがあったら押したくなるように、ごく自然な、当たり前の素朴な気持ち。
戦いは、楽しい! 平和な社会では野蛮ともそしられる、しかし否定し難い人間の本能が、ここでは肯定され、充足される。
それ以外にも、不安や葛藤、等身大の感情が様々に描かれ、読者の共感を誘いつつ、同時に、物語全体が強く「肯定」の姿勢を持っています。
「小説家の仕事は、人間の肯定だ」と言ったのは、保坂和志さんだったでしょうか。くすぶっていた状態を抜け出し、培ってきたもの、磨いてきたもの、抱え込んでいたものを全力で発揮し、競い合い、楽しむ! その様を力いっぱい肯定していく本作は、まさに人間に対する肯定に満ちている、素晴らしい小説だと思います。だからこそ、これほど多くの読者を惹きつけたし、これからもますます読まれるべき作品だと思います。
いわゆる暗い情熱を求める向きには少々物足りない部分もあるかもしれませんが、「楽しい」というシンプルで、そして誤魔化しの効かないものをここまで確かな筆致で描き出した本作は、やはりただものではない。
今6-5まで読了しましたが、続きも楽しみにお待ちしております!
これは小説ではない。週刊連載少年漫画だ。
ボーイミーツガールの王道、戦う楽しさという純粋なテーマ、VRという題材、魅力的な数々のキャラクター。素晴らしい点はたくさんあるが、あえてこの表現技法について取り上げてオススメしたい。
毎話読者を楽しませてくれる展開、次回へと興味を煽る強烈なヒキ、わかりやすさを意識した文章表現……。まるで目を閉じればそこにコマ割や吹き出し、見開きのページ構成が見えるようだ。
この作品は小説という文法に則りながらも、週刊連載の少年漫画のように読み進める事ができる。それは週刊連載という読者の興味を惹き続け、飽きさせないよう考えつくされ発展したメソッドがふんだんに使われているからだろう。
一冊という単位で面白さを競うルールではできない、Web連載という形だからこそ攻撃力を発揮する技法だ。他の作品にはない個性的な特徴を武器として扱う様は、まるでこの作品自体が作中のゲームプレイヤー達の一人のようである。
重ねて言うが、これは小説という枠に収まりきれる物ではない。新たな可能性を内包した、パラダイムシフトを引き起こしかねない挑戦的意欲作と言えるだろう。
登場人物達の、そしてこの作品自体の行く末を是非見届けて欲しい。
――この技を、思う存分に発揮したい。
武術を学んでいる人間なら、きっと誰しも思うだろう。
汗を流し、日々鍛錬を積んで磨き上げた技。その切れ味を試したいと思うはずだ。
しかし試合となるとルールに縛られ、また止めを刺す真似はできない。
どこかでブレーキをかけなければいけない。実にもどかしい。
しかしこの作品にはそんな欲求を満たしてくれるギミックがある。
VRゲーム――その手があったか!
仮想のゲーム世界の中でなら、思う存分に暴れられる。技を揮える。
生涯に渡って技を究め、そして使う機会に恵まれずに消えていった武術家の本懐が、そこでは果たすことができる!
実に羨ましい! 私もそのゲームがプレイしたい!
それはヒロインも同じ気持ちだったに違いない。
一子相伝で受け継いできた暗殺拳は現代で華咲かせる機会などなく、ただ人知れずに消えてゆく――はずだった。このゲームと出会うまでは。
ゲームの中では容赦など要らない。100%アクセルを踏み込んで戦える。何でもできる。
それこそ暗殺拳であろうが存分に用いることができる。
その興奮が、熱中が、アクションシーンの行間からにじみ出てくるようだ。
いや、しかし。
彼女が真に欲していたのは、手に入れたのは、もっと別のものであったのかも知れないが。
男の子なら、当然バトルが好きですよね。
そして、すごいバトルを見るのはもちろん、やっぱり自分もすごいバトルをしたいんですよね。かめはめ波や二重の極みを練習していた子供の頃の僕は、間違いなくそう思っていたわけです。
この小説に出てくるVRゲーム「プラネット」は、それを叶えうるツールです。男の子なら、それだけでワクワクしないわけがない。しかも、これほどに興奮を煽る文章でプレゼンされているなら、尚更です。
読み味としては、「ドラえもん」に近いものを感じました。少し不思議な秘密道具を使って、普段できない遊びをする。そういう、ドラえもんでしか感じたことのないような強い「ワクワク感」を覚えました。鋭一くんも、葵ちゃんも、本当に楽しそうに遊ぶ姿が印象的です。
また、キャラクターが本当に可愛い。挙動や言動はもちろんですが、重いものを背負っていたりもするのかもしれないのに、ゲームを遊んでいる時はそんなことをおくびにも出さず、ひたすら楽しそうな姿がカラッとしていて、爽やかさすら感じます。楽しそうな人を見ると、楽しくなりますよね。そういう感じです。
戦闘描写も丁寧で、一つ一つの動きが分かりやすく、かつそこに込められた戦略を描くので、ワンアクションごとにこの後どうなるのかという緊張感を醸します。だからこそ、興奮する。
今から読まれる人は、是非三話まではお読みください。三話で行われる戦闘は、ワクワク感、緊張感、そして興奮の全てが最高潮に達する、前半の山です。
格闘技が好きで、ゲームが好きで、楽しく遊んでいる人たちが好きな人は、間違いなく楽しめると思います。