いますぐ私も《覚醒》したい……っ!

――この技を、思う存分に発揮したい。

武術を学んでいる人間なら、きっと誰しも思うだろう。
汗を流し、日々鍛錬を積んで磨き上げた技。その切れ味を試したいと思うはずだ。
しかし試合となるとルールに縛られ、また止めを刺す真似はできない。
どこかでブレーキをかけなければいけない。実にもどかしい。

しかしこの作品にはそんな欲求を満たしてくれるギミックがある。
VRゲーム――その手があったか!

仮想のゲーム世界の中でなら、思う存分に暴れられる。技を揮える。
生涯に渡って技を究め、そして使う機会に恵まれずに消えていった武術家の本懐が、そこでは果たすことができる!
実に羨ましい! 私もそのゲームがプレイしたい!

それはヒロインも同じ気持ちだったに違いない。
一子相伝で受け継いできた暗殺拳は現代で華咲かせる機会などなく、ただ人知れずに消えてゆく――はずだった。このゲームと出会うまでは。
ゲームの中では容赦など要らない。100%アクセルを踏み込んで戦える。何でもできる。
それこそ暗殺拳であろうが存分に用いることができる。
その興奮が、熱中が、アクションシーンの行間からにじみ出てくるようだ。

いや、しかし。
彼女が真に欲していたのは、手に入れたのは、もっと別のものであったのかも知れないが。

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