青臭い嘘をつき通すこと。そのリアリティに嘘はない。

悶々とする「僕」の思考は、
臆病で後ろめたくてずるい。
けれど、歪んでいると表現するには、
あまりにもみずみずしい。

青春、という気恥ずかしい時間が
なまなましく描かれている。
ぐしゃっと握ったらアッサリ壊してしまいそうで、
思わず息を殺して読んだ。

男子校に通う演劇部兼文芸部の「僕」と、
演劇つながりで知り合った女子校の野村さん、
そして「僕」の親友である演劇部部長の小林。
気が合う仲良し同士の、水面下での三角関係。

「僕」の誰にも言えない習慣、野村さんの嘘、小林の嘘。
よくある話だよねなんて、少年の繊細さの前では決して言えない。
自分の心の一々を敏感にセンシングする「僕」の筆致は、
きっと「僕」にしかできない。すごく好きだ。

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