概要
「好き」がこんなに辛いだなんて
高校生の佐倉には、好きな女の子である野村さんがいる。佐倉は自分の激しい恋心を知りながら、野村さんにその思いを伝え切れないでいた。暴走する感情の辿り着く先は、どこだろうか。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!「青臭さ」の「臭み」がしっかり残った、若い感性がリアルに綴る青春小説
久しぶりに一人称小説を読んだ気がする。もちろんそれは単に「一人称で書かれた小説」という意味では無い。視点人物と一体化して、視点人物の感じることを視点人物の感じるままに、鮮明に違和感なく書けている小説を読んだということ。
内気な少年の片思いを綴った青春恋愛小説。エンターテイメント的に読者を引き込む要素は薄いのに、その生々しさに圧倒されて気がつけば全部読み終えてしまう。作者プロフィールを確認して納得。高校生だった。往々にして大人が書く「青臭さ」にはその言葉に含まれているはずの「臭み」がなくなってしまうものだけれど、この作品にはそれがしっかり残っている。灰汁抜きを済ませていない苦み走る状態で…続きを読む - ★★★ Excellent!!!青臭い嘘をつき通すこと。そのリアリティに嘘はない。
悶々とする「僕」の思考は、
臆病で後ろめたくてずるい。
けれど、歪んでいると表現するには、
あまりにもみずみずしい。
青春、という気恥ずかしい時間が
なまなましく描かれている。
ぐしゃっと握ったらアッサリ壊してしまいそうで、
思わず息を殺して読んだ。
男子校に通う演劇部兼文芸部の「僕」と、
演劇つながりで知り合った女子校の野村さん、
そして「僕」の親友である演劇部部長の小林。
気が合う仲良し同士の、水面下での三角関係。
「僕」の誰にも言えない習慣、野村さんの嘘、小林の嘘。
よくある話だよねなんて、少年の繊細さの前では決して言えない。
自分の心の一々を敏感にセンシングする「僕」の筆致は、…続きを読む