映画を見ているかのような

個人的に、読みながらふと思い出したのが、J・J・エイブラムス監督の『ミッションインポッシブル3』という作品。あの映画を見たときも、

「いやあ、諜報とアクションと、本業を隠した恋愛とを、すべて一つの作品の中でまとめるって、なんて難しいことを平気でやってるんだ」

って思いましたが、この『摩天楼の翳』では、そこに『異能』という、それ以上の要素が加わっています。

諜報とアクションであれば、当然、登場人物たちはその世界にどっぷりのほうが書きやすい(と思う)。そこに身近な要素が入ってくると、どうしても話が脱線したり、破綻したりしがちですが、『摩天楼の翳』ではそれがない。読みやすく、するすると読み進んでいくうちに、個々にしっかりと書き込まれた登場人物たちに共感を抱きやすく、さらに場を盛り上げる戦闘、格闘アクションが要所要所で差し込まれ、つい先へ先へと読み進んでしまう。エンターテインメントとしての面白さがしっかりとあります。

しかも、ROUND3まで読ませていただいたあたりで、どうやら初稿は2000年より前っぽいもんなあ。『MI3』、確か2006年の映画なんだもんなあ、よくこんな難しい内容を平然と、しかもエンタメとして面白く書きだせるなあ、と感心しきりで読ませていただいています。

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