90年代的終末思想リバイバル

80年代から90年代に流行った終末思想を2010年代の、平成も終わりかけの今になってまで言い続けている古臭さが漂う作品だと言えるかもしれない。だけれども、そこがまた魅力だ。
ノストラダムスの大予言、鶴見済の完全自殺マニュアル、各章やエピソードのタイトルに散りばめられた、終末思想を描いた作品のパロディ要素。
私も思春期の頃にはよく、世界の終わりを願ったものだと思い出した。2012年に終末が訪れるなどというマヤ文明の予言の載ったムーを読んで、早くこんな世界が滅びればいいのにと思った。そして、今でも世界の崩壊を願っている。ただ、そんな願いは叶わない。それは、作者も私もだ。だからお互いに「終わらない世界」をテーマにカクヨムで書いている。
どれだけ広大な被害をもたらす大災害が起きようと、ハルマゲドンを夢見るカルトがのさばっても、戦争が起きようと、北からのミサイルが上空を飛び交おうと、この世界は終わらなかった。
90年代に「終わらない世界」を本気で終わらせようとした宗教家たちは、つい先日死刑に処せられた。異世界や非日常を夢見た者たちは敗北を迎えた。
そんな平成の末期に、この作品を読んでみると色々な事を考えさせられる。「平坦な戦場で僕らが生きるということは…」という一説を思い返した。

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