【物語は】
10連休という、ゴールデンウイーク明けから始まっていく。学校や仕事のある人ならば、お休みは終わって欲しくないと思う人が多いものだが、主人公の一人である”陽稲”にとっては違ったようである。彼女にはどうしても、仲良くなりたい相手がいたからである。容姿は正反対と言っても過言ではない。
この物語は、群像劇である。
主要となる二人に加え、他のクラスメイトなどからも日常が語られていくようだ。果たして、主人公の一人である陽稲は、自分の目標通りもう一人の主人公である”可恋”と仲良くなれるのだろうか?
【舞台・世界観・物語の魅力】
本編に入ると、”学生特有”なのかもしくは”世界の狭い範囲”で起きることなのか、ある問題に遭遇している。
例えば頼まれものであっても、勝手に他人のもとを見るというのは、如何がなものだろうか。作中ある”もの”が原因で、主人公二人を含む三人の生徒が職員室に呼ばれることとなる。分別のつかない年齢ではないとは思うが、”学校”という場所においてありがちなことのようにも思えた。
学校という狭い世界の中で、同じものをクリアしていかないといけないとなると、起こりうるものなのだろうか。面倒なことが起き、それを招いた人物に怒らない(表面上)可恋は大人だなと感じる。
(注意*作中、学生生活においてありがちと思える出来事の一つ。他人のノートを勝手に見て、コピーするという事件が起きます。しかしながら、他人のものを無断で見たり、コピーをすることは犯罪です。必ず本人に許可を取りましょう。レビューにて、この行為を推奨するものではありません)
学校生活やこの年代にスポットを充てているというのが、しっかりと分かる作品である。中高生の女子特有という印象を強く受ける。例えば、仲の良い友人を巡る争いというのも女子特有なイメージを持つ。もちろん、人それぞれだとは思うのでイメージではあるが。
すなわちこの物語では、等身大の女子中学生の日常が描かれていると感じた。
【登場人物魅力】
はじめは、不安を感じていた主人公の一人、陽稲。ある事情により、仲良くなりたいと感じていた相手と、なかなか仲良くなるきっかけがつかめないでいた。しかし、それは学校に行くことのできない事情によるもの。勇気を出し、少し早く登校したゴールデンウイーク明け。思ったよりもすんなり仲良くなれそうな気配はあったものの、一難去ってまた一難。直ぐにピンチを迎えることなってしまう。
この物語を読んで思う事。
子供の頃というのは、怖いものなしだなと感じた。年を重ねると、周りから見える自分について考え、友人になりたいから積極的に行動するという事がなかなかできなくなる。もちろん子供にも引っ込み思案なタイプの子供はいるが。
日付が進むと、陽稲の姉の視点で彼女がどのような境遇で育ったのかが語られる。この部分を読む限りでは、一部の親戚を除き”陽稲”は、誰にでも愛されるコミュニケーション能力の高い人物であることが伺える。
作品を読んで思ったこと。
人とコミュニケーションを取るために必要なのは、自信なのではないだろうか。ある程度自分に自信がないと、人と交流することにためらいを感じてしまう。陽稲は元より、その容姿や性格のお陰で溺愛されていた。それでも、可恋に対して少し不安を感じている。つまり、意識してしまうほど彼女は特別だったのではないだろうか?
両サイドの心理が描かれている為、互いに何を思っているのかが分かりやすい。正反対に感じる二人だが互いに憧れを持っているという感じではなく、好感を持っているように感じた。こんな風になりたいではなく、互いの良さを受け入れている印象である。
【物語の見どころ】
等身大の中学生の日常が見どころなのではないだろうか。随所にその年代に見られる要素が詰まっている。可恋は考え方や仕草などが、大人だなと感じる部分が多い。しかし、それは母子家庭によるものなのかもしれない。
一人でいる寂しさを自分自身に納得させようとするならば、どうしても精神的に大人にならざるを得ない。
それに対し、陽稲は天真爛漫なお嬢様という印象である。周りに愛され、素直に育ったという雰囲気がある。一見正反対に感じる二人。
彼女たちは、この先どんな風に残りの学生生活を送っていくのだろうか?
この物語は、主人公となる人物は二人だが、他の人物の視点でのエピソードもある為、二人が周りから見てどんな存在なのかも明かされていく。視点が違えば、見えてくるものも違う。自分から見る自分。周りから見る自分。そこにどんな差があるのだろうか。そしてそれも見どころの一つなのではないだろうか?
あなたもお手に取られてみませんか?
彼女たちの、一日一日がとても丁寧に描かれている物語です。心理描写がとても丁寧で、日々こんなことを思っているのだなと、彼女たちの心理が手に取るようにわかる部分が魅力的です。
この先、二人はどんな経験をしていくのだろうか?
どんな風に心の距離を縮めていくのだろうか?
その目で是非、確かめてみてくださいね。お奨めです。
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タイトル、あらすじ、書き出し一行でレビューという変わった企画でのレビュー
書き出し一行はこちら(実際は二行に分かれているが)
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ゴールデンウィークが終わった。10連休という長い長いお休みだった。
(引用)
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タイトルから思う事。これはあえて”令和”にしていることに意味があると考えられる。そう、”昭和”でも”平成”でもなく”令和”。じゃあ.、それは何を表しているのかと言うと、”現代の”だと思われる。よく”今どき”などという言葉がTVなんかでも使われることがあるだろう。したがってこの物語は”現代の中学生”をモデルにしているというとが考えられる。じゃあ具体的にイメージでの違いは何か。携帯ツールに例えるなら”昭和・ポケベル”、”平成・ガラケー”、”令和・スマホ、5Gなど”。実際、スマホは平成でも使われているが。
他には、考え方、時代への順応性が考えられる。そんな現代の中学生の日常を舞台にした物語なのだろうという事が想像できるのだ。
あらすじから想像すること。容姿の対照的、もしくは性格も違う二人が出逢い、学生生活を共にしていくのだろうという事。いつ出会ったのか、仲良くなるきっかけはなんだったのか。あらすじだけでは分からないが、一日ずつ進むスタイルという事は、その時その時の気持ちの変化などが描かれている可能性が、非常に高い。つまりそれは、二人が成長していく様子が丁寧にゆっくりと描かれているということを示している。かなり期待の持てる作品である。
さて、書き出し一行に入ると、そこにはどちらの意味にも受けとれる一文から始まっているのだ。
ゴールデンウイークという長い連休が終わってしまったことへの憂いか。それとも、長すぎた連休により、友人に会えなかった寂しさからくるものか。恐らく、この先に主人公がどんな気持ちで連休を過ごしたのかが描かれているはずである。この時点では、まだ二人がどんな風に学生生活を送っているのかはわからない。しかし、中学というものを体験したことのある人には、いろんな想いを巡らすことができるはずだ。大人になってしまった今と、子供の時の感覚が違うように。さあ、あなたも学生の頃の気持ちに戻って、二人の学生生活を覗いてみませんか?そこには、あの頃に気づけなかったキラキラひた日々が待っていることでしょう。
**P10のみではこちら
【これまでどんな内容だったのかを予想】
この物語は、読む前と大分イメージが違っていた。てっきり外側からがメインだと思っていたのだが、モノローグが全体を占め、自分の立場、人間関係などに重点の置かれた作品である。学校という場所はとても特殊空間。特に義務教育課程では、イヤだからやめたいということは出来ない。つまり、その中でうまく人間関係を築いてやり過ごさなければならない。この物語には、等身大の彼女たちの心理が描かれている。P10 では、あるクラスメイトが不思議な依頼をされる。それは、このクラスに別の風を吹かせる為の序曲に過ぎない。しかしそれは、大きな分岐点でもある。以上のことから、そうなった経緯や、主人公たちの出会い、クラスメイトの人間関係などについて書かれているのではないかと、想像する。
【P10について】
p10が分岐点になる説を裏付ける。ここでは、上記で少し触れた、不思議な依頼の発端、経緯、その理由に繋がる様な内容が描かれている。この作品を読むと、中学当時のことを思い出す。自分は昔から単独行動ではあったが、三年という日々をやり過ごすためにどうすればいいのか。確かに、計算して生きていた気がする。グループを作り、自分を演じなければならない。大して好きでなくても、話題の為には見なければいけなかったり。心の自由を奪われるという事を学ぶのは、この時期なのかもしれないと。改めて感じた。かなり深い物語です。中学生は反抗期のイメージが強いけれど、学校でこれだけ抑圧されていたら、ストレスも溜まるだろうなとも感じる。この物語は、中学生の親世代にも勧めたい。
【この物語の先の展開を妄想】
主人公の片割れは、みんなから憧れを持たれる存在。彼女には、野望があった。彼女はクラスメイトに一目置かれる存在ではあるものの、一人の力ではどうにもならないことが分かっている聡明な人物である。今回スポットが当てられている生徒の協力得て、その野望が達成されるのかは見どころの一つ。
この物語は、いろんな視点から描かれている。それぞれが何を想い、どんな駆け引きをしていくのかも、面白いところだと思う。まだ、中学生であるから、大人のような汚い考えには至らないだろう。等身大の彼女たちが、一つ一つ問題を解決し、成長していく物語なのだと思う。
日々成長していく彼女たちの日常を、あなたも覗いてみませんか?きっとあの頃の思い出が脳裏によみがえるでしょう。あの頃は良かった、あの頃は辛かった。どちらにしても、自分を振り返る良い機会です。そして、彼女たちと同じ年代の子を理解してあげられるチャンスでもある。是非、お手に取られてみてくださいね。