“10まで数えられたら賢者"の世界を、漢字を書ける男が救う

異世界無双小説とは接待である。
読者を気持ちよくさせるためのお話だということだ。
努力はしたくないけど特別扱いされたい。悪いやつをかっこよく倒して可愛い女の子から感謝されたい。
そんな都合のいい要求をかなえるための都合のいい世界、それが異世界だ。
最近の異世界はその辺をわかってないものが多い。
やたらハードモードで苦労する羽目になったり、かと思えば主人公が専門的な知識を使いだしたり、主人公の能力やその世界のルールが複雑で覚えるのが大変だったり、いい加減にしろといいたい。
まずはドラえもんを読んで出直してこい。
ドラえもんはのび太が何の努力をしなくても無双できるようにお膳立てを整えてくれる。名作「のび太の宇宙開拓史」は異星でのび太が無双する話である。なぜならその星の重力は地球の10分の1で住民が全員虚弱だからだ。とてもわかりやすい理由だ。
私たちはそんな風に気軽に気持ちよく読める話が読みたいのだ。
この『偏差値10の俺がい世界で知恵の勇者になれたワケ』という小説に出てくる異世界は、住人が全員バカである。だから主人公はみんなから尊敬される。わかりやすい。
しかもその上、主人公もかなりのバカである。
だから読者より頭のいいキャラは一人も出てこない。
読んでいると「その展開になるのは予想してた」「俺だったらもっと上手くやれたな」などと思うだろう。難しくて内容が理解できなかったということも無いし、主人公が老害みたいなキャラから説教されることもないだろう。
きっとこのジャンルはこれから流行るだろう。
「生きてるだけで褒めて欲しい」時代の新しい小説、これはその第一作目になるに違いない。

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