変だって構わないんだ――俺たちには技術がある!!

 独立行政法人 国立高等専門学校。
 通称『高専』。

 工場における作業者と経営陣の中間――所謂『現場リーダー』を任せられる高度な技術者の育成をモットーとする教育機関である。

 五年制。
 一般的には、中学校卒業から進学する者が大多数だが、中には工業高校や普通科高校から四年次編入という者も居る。
 高校+短大(+専攻科に行けば2年)というイメージがしっくりくる。

 が、作中にもあるように、高専のモットーは技術力!!

 『やりたいことが見つからないから、とりあえず普通科行って大学かな』みたいな奴らなぞ放っておけといわんばかり、一年次から徹底的な工業技術・知識を叩き込まれる。
 製図・プログラミング・電気電子回路・制御理論・ドイツ語・etc。
 そうして五年間、技術演習と赤点(60点)と補習と追試に鍛えられた学生たちは、スーツよりつなぎの似合う技術者として、一部上場企業から地方の有力企業へと出荷されていくのだ。

 そんな場所に、嬉々として飛び込む生徒たちが居る。

 とにかく早く手に職を付けたい!!
 安定した就職先!!
 授業力が安い!!
 バイク+車通学!!
 親父・兄貴が高専生だから!!
 休みが長い!!
 ロボコンに出たい!!
 プロコンに出たい!!
 校則が緩い!!
 寮生活に憧れる!!
 
 彼らが高専にやってくる理由は様々だが、一つ言えることがある。
 それは――

 『この作品の登場人物たちのように、わけのわからん行動力に満ち溢れている』

 ということである。

 あぁ、高専生万歳!!

 とまぁ、まったく内容と関係ない話をしてしまうのは、これ書いてる人間も高専生だから。
 そうそう、こういう『高専生が居たらとりあえず応援しとけ』みたいな気風も高専特有のものです。

 頑張れ、藍月 要先生!! 頑張れ!!

 ――本題に入りましょうか。

 さて、上にかいたようなよう分からん行動力に満ち溢れた高専生たちが、ひょんなことから異世界に漂流教室ならぬ漂流クラブしちゃったからさぁ大変。
 知識レベルにはまぁ高専ごとの差はあれど――持ち前の高専魂で異世界に立ち向かっていく、もとい異世界で遊びつくすのが本作品の持ち味です。

 まぁ、そうするでしょうな。

 高専生は漏れなくオタク(の素質がある)。そりゃ魔法の使える異世界に飛ばされればうっはうっはだろうし、魔法道具を見つけりゃ、それの使い方から原理の解析までやっちゃうでしょう。

 しかしながらそれだけではない。
 高専生だから分かる――というか、世間(世の大半の学生)のはみ出し者だからわかる、葛藤が後半のテーマとなってきます。

 大学進学率がどうこういわれる昨今に、大手を振って高専の門をくぐってしまった僕たち。その高い技術力の反面、いまひとつ世間の知名度が低く、「高専? あぁ、専門学校?」とか「商船? あぁ、船乗りさんね?」とか、肩身の狭い思いを強いられます。
 同窓会なんかいけばね、そりゃもう――。

 そんな僕たちの自尊心を工程してくれるのは、『五年間で学んだ技術』!!
 大学生がなんぼのもんじゃい!! お前らはんだ付けもできんくせにえらそうな顔をするな――なんて言葉がしっくりくるだろうか。
 こちとら座学なんざ相手にせずに、実験・ロボコン・卒研で、さんざ現物を動かしてきたんじゃ、と、世間からはみ出す勇気を与えてくれるわけです。

 そして、そんな私たちだからこそ、救うことができる異世界のヒロインが居る。
 この作品のラストは、なるほどよく高専生というものが描かれています。

 と言うわけで、高専OBのみなさんも、現役高専生も、高専目指してる中学生諸君も、目指してない中学生諸君も。

 この『俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する』を読もう!!

 そして高専へ行こう!!

 この世をすべて高専生で覆いつくすのだ!!

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