眠りから覚めたロボット・オズマと、義手の男・カミオカの、大切なものを取り戻すための二人旅。
『情動回路』と名付けられた、心に似た思考回路を持つオズマは、過去に自らが世界にもたらした災厄を悔いていた。
そんなオズマを、カミオカは人々の喧騒へと連れ出し——
どことなく懐かしい匂いのするSF作品です。「アンドロイド」ではなく「ロボット」という表記なのがとても良い。
ゲームのノベライズとのことですが、丁寧な物語運びで、原作を知らずともこの世界観に浸ることができました。
ロボットが心を持ったら、人間との違いは何だろう。
「回路」でしかないそれを作り物だと言い切ってしまうには、オズマの「心」が感じる苦しさはあまりに生々しく、胸が締め付けられました。
飄々としつつもやる時はやる、カミオカが何とも小憎くて素敵です。おっさんが魅力的な作品はぐっとくる。
コンパクトながらテーマが明確で、非常に読み応えのあるお話でした。
重い罪の意識を背負った「オズマ」
彼を眠りから呼び起こし、荒廃してしまった世界をつれいく「カミオカ」
なぜ、オズマは罪の意識を持つようになったのか。
なぜ、世界は荒廃してしまったのか。
なぜ、カミオカはオズマを眠りから起こさせたのか。
一つ一つの謎が解けるにつれ、世界の残酷さと人の心の複雑さに胸を打たれました。
特筆すべきなのは、その登場人物の魅力さ。しっかりと過去を持ち、それゆえの現在の行動がある。そう思える人物としての深さを、オズマサイドの登場人物だけでなく、敵対する登場人物たちにも感じたこと。
人物たちが自分で考えて。現在と、自分が望む未来のために大地を踏みしめて歩くかのごとく日々を生きている姿は、荒涼として生き物の住めなくなった外の世界とは対照的で、命そのものしたたかさと躍動感を強く感じます。
荒廃した世界だけれど、人と人ではないもののもつ心の温かさ、そして希望のようなものを感じる物語です。
性別不明のアンドロイド《オズマ》と義手の男《カミオカ》が、荒廃した世界を旅するお話です。
アンドロイドでありながら《心》を持ち、素直で真面目で優しい性格をしたオズマ君はとってもかわいい!
しかしそんな性格ゆえに、オズマ君は自分の悲しい過去と向き合い苦悩することになります。
その姿にはとても胸を打たれました。
そしてそんなオズマ君を支えるのは、かっこいい義手のおっさんであるカミオカです。
2人の関係はまさに名コンビ! ともに戦い、ともに歩み、悲しい過去と向き合います。
そんな彼らの旅路の果てにあるもの、2人が出した《答え》――。
それはぜひ、実際に作品を読んで見届けてほしいです!
原作がゲームだけあって、色んな敵キャラが次々と現れて物語を彩ってくれるので、読者を飽きさせることなく読ませてくれますよ。
この作品を読めば、原作のゲーム版をやってみたくなること間違いなしです! 自分も今度プレイしてみようと思いまーす!
情動回路(と書いて《こころ》と読む)をもつ性別のない美貌のロボット・オズマの、思い出を取り戻すためのアクションSFです。
SFと言っても、アクションに重きが置かれていて、SFにあまり馴染みのない私でもつまずくことなくすらすら読み進められました。
バトルシーンは心が躍りました。
毎日はらはらしながら読んでいました。
オズマが可愛くて可愛くて切なくて、本当の本当にオズマが心配で!
もうほんとに、オズマはすごくいい子なんです。曲がったところのない、本当にただただいい子なんです。
オズマはとてもつらい過去を背負っています。人間のために作られた存在として、人間に尽くして頑張ってきたのに、求められて帰ってきたというのに、大変な事故を起こして? いや私の見方からすると巻き込まれて!! います。
そのことを今も引きずっています。
つらい。
オズマは何にも悪いことをしていないじゃないか。なのになんでこんなことを言わせるんだ。
オズマよ、幸せになってくれ。
オズマが大事な人間たちと平和に暮らせる世界になってくれ。
そんなことを思いながら拝読していたので、エピローグのカミオカとオズマのその後の話には涙がぶわわわわ。
よよよよよかったねオズマ……!!
ともに行動するおっさん科学者のカミオカもいい味を出しています。
彼も彼でとてもつらい過去を背負っているのですが、作中ではそんな重みを感じさせることなく、ずっといいキャラでいてくれて、とても安心感がありました。
カミオカだってつらかっただろうな。
エピローグで語るシーンには胸が詰まりました。
心って何なんでしょうね。
オズマは心があったからこんなにつらい思いをしたんじゃなかろうか。
でも、心があったからこそ得られたものもきっとたくさんあったんだろう。
スバルとの思い出も、オズマにとってはただの情報ではなく美しい記憶になるんだろうな。
そんなオズマに、カミオカをはじめとする人間たちが、手を伸ばしてくれる。
ロボットと人間の境目はどこにあるんだろう。
そんなもの、なくたっていいんじゃないのか。
世界はまだまだ優しくなれる。
そんなことを感じました。
この世界のロボットには明確かつ明瞭な心があります。
何度も作中で問題提起されているように、なぜこの世界のエンジニア達は彼らロボットに心を与えたのでしょう。
心を持つことで大きな災いも起こり、心を与えられたロボット側にしても、心を持つことで生まれる多大な苦しみをその身にうけることになります。
本作ではそういったロボットと心の問題を軸にしつつ、滅び行く世界であがき、力強く生きる人々の描写が展開されていきます。
結局、最後まで問題の答えが出ることはありませんでしたが、それはむしろ、この問いは安易にこうだと言えるような問題ではなく、心を持った個人、一人一人が自らで答えを出すべきと言う、作者からのメッセージのようにも感じました。
しかし最後まで読んで思うのです。
本作を読んでいる中で、私はロボットであるオズマを、どの程度ロボットとして認識して読んでいたかということを。
与えられた現実に悩み、迷うオズマは、まさしく人間となにも変わらぬ存在でした。それは、ビジュアルが読者の想像に委ねられた小説という媒体だからこそ、尚更引き立つ演出にすらなっていたのではないでしょうか。
そこにロボットと人の垣根はなく、ともに過酷な現実へと挑んだ二人の姿があるだけでした。フリーゲームが原作ということですが、小説という形でこの物語に触れられたことを、作者様に感謝したいと思います。
大人気フリーゲーム『終わり逝く星のクドリャフカ』のノベライズ版が、この作品だ!
かつてあったという最終戦争の後の世界――終り逝く星の片隅で目を覚ましたアンドロイドのオズマと、義手の夢見るオッサン・カミオカの二人が静かな旅に出る。
RPGのノベライズというとことで、冒頭からゲーム的な「ドッキドキーのワックワクー」が繰り広げられていく。出会う、会話する、アイテムを手に入れる、敵と遭遇する、戦う、ヒントをもらう、宿で寝る、移動する、などなど――ゲーム的な展開が分りやすく、読みやすい文章で語られる。
キャラクターも個性的で、男の子か女の子か分らない、なのに可愛らしいアンドロイドのオズマきゅんに、少し抜けたオッサンのカミオカ、未亡人のミヨさんが話しに色を添えてくれる。
物語自体はまだ序盤で大きな展開はこれから! 最新話まで追うのも楽勝なのでぜひたくさんの人に読んでもらいたいと思う。そして、この物語を読んでもっとこの世界を味わいたいと思ったら、フリーゲームにも挑戦してみよう!!
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