優しいロボットと優しい人間の優しい物語

 情動回路(と書いて《こころ》と読む)をもつ性別のない美貌のロボット・オズマの、思い出を取り戻すためのアクションSFです。
 SFと言っても、アクションに重きが置かれていて、SFにあまり馴染みのない私でもつまずくことなくすらすら読み進められました。
 バトルシーンは心が躍りました。

 毎日はらはらしながら読んでいました。
 オズマが可愛くて可愛くて切なくて、本当の本当にオズマが心配で!
 もうほんとに、オズマはすごくいい子なんです。曲がったところのない、本当にただただいい子なんです。
 オズマはとてもつらい過去を背負っています。人間のために作られた存在として、人間に尽くして頑張ってきたのに、求められて帰ってきたというのに、大変な事故を起こして? いや私の見方からすると巻き込まれて!! います。
 そのことを今も引きずっています。
 つらい。
 オズマは何にも悪いことをしていないじゃないか。なのになんでこんなことを言わせるんだ。
 オズマよ、幸せになってくれ。
 オズマが大事な人間たちと平和に暮らせる世界になってくれ。
 そんなことを思いながら拝読していたので、エピローグのカミオカとオズマのその後の話には涙がぶわわわわ。
 よよよよよかったねオズマ……!!

 ともに行動するおっさん科学者のカミオカもいい味を出しています。
 彼も彼でとてもつらい過去を背負っているのですが、作中ではそんな重みを感じさせることなく、ずっといいキャラでいてくれて、とても安心感がありました。
 カミオカだってつらかっただろうな。
 エピローグで語るシーンには胸が詰まりました。

 心って何なんでしょうね。
 オズマは心があったからこんなにつらい思いをしたんじゃなかろうか。
 でも、心があったからこそ得られたものもきっとたくさんあったんだろう。
 スバルとの思い出も、オズマにとってはただの情報ではなく美しい記憶になるんだろうな。
 そんなオズマに、カミオカをはじめとする人間たちが、手を伸ばしてくれる。
 ロボットと人間の境目はどこにあるんだろう。
 そんなもの、なくたっていいんじゃないのか。
 世界はまだまだ優しくなれる。
 そんなことを感じました。

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