情動回路(こころ)なんて、要らなかった。

眠りから覚めたロボット・オズマと、義手の男・カミオカの、大切なものを取り戻すための二人旅。
『情動回路』と名付けられた、心に似た思考回路を持つオズマは、過去に自らが世界にもたらした災厄を悔いていた。
そんなオズマを、カミオカは人々の喧騒へと連れ出し——

どことなく懐かしい匂いのするSF作品です。「アンドロイド」ではなく「ロボット」という表記なのがとても良い。
ゲームのノベライズとのことですが、丁寧な物語運びで、原作を知らずともこの世界観に浸ることができました。

ロボットが心を持ったら、人間との違いは何だろう。
「回路」でしかないそれを作り物だと言い切ってしまうには、オズマの「心」が感じる苦しさはあまりに生々しく、胸が締め付けられました。

飄々としつつもやる時はやる、カミオカが何とも小憎くて素敵です。おっさんが魅力的な作品はぐっとくる。
コンパクトながらテーマが明確で、非常に読み応えのあるお話でした。

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