やりたいこと全部やりながら、怖かったと思うんだ、本当は。
- ★★★ Excellent!!!
仮に、あと半年の命じゃなかったとして、
彼は、やりたいことをやり切れただろうか?
ごく軽い口調の余命宣告から始まる、
「死ぬまでにやりたいこと」を問い掛けるストーリー。
ちゃらんぽらんで自由、支離滅裂で正直、
へらへらしてるくせに芯があって、
自分本意っぽいけど本当はまわりの人たちを愛してる人。
そして、どんなに怖い思いをしても笑ってる、そんな人。
自分が半年の命だと知ったとき、彼が望んだのは、
彼自身の欲とは別のものだったように見えた。
誰かのため、とかいう空々しい目的じゃなくて、
彼はたぶん本能的に動いただけなんだろうけど。
あいつらを潰そう、と言い出した。
全部やろう、と全員を認めた。
みんなでやったから楽しかった。
楽しかったからこそ怖かったと思うんだ、本当は。
彼がいたからできたことは、
彼ひとりではやらなかったかもしれない。
彼は、ひとりでは笑わないんじゃないかという気がして。
いつも笑ってる人なのに。
正直な弱音も吐きながら、もっと正直な笑い方をして、
じたばた暴れて仲間に迷惑をかけて、
でもその迷惑すら楽しすぎて笑い合って、
「わたし」の心をアッサリさらっていった小笠原先輩。
テンポよく爽やかに読み切って、
不思議な楽しさのある作品だと思ったのに、
レビューまとめてるうちに喪失感で涙が出てきた。
染み込んで刺さってくる、こういう作品はすごく好きだ。