拝読して真っ先に目に浮かぶのは、真っ青な美しい海と、その海を貫くようにしてそびえる大きな橋の光景。橋は、単に島と島をつなぐだけのものではなく、人の生活を、命を、そして思い出をもつなぐ。そのことを、可愛らしい主人公が、可愛らしく教えてくれます。
離島暮らしを経験したことのない私にははっとさせられる、悲しい出来事も語られます。おばあちゃんが大好きだった主人公は、完成した橋を見て、野放しには喜べなかったでしょう。それでも、おばあちゃんを想い、新しい出会いを喜ぶために、今日も橋を渡ります。
温かくて、切なくて、考えさせられ、そしてやっぱり可愛い物語。主人公が見つめる海と橋を、私も見に行きたくなりました。
海の上を渡る巨大な橋。
その建造には多くの難題があるだろうことは想像に難くありません。
この手のインフラには必ず自然保護の話も持ち上がります。
このお話のように、もしあの時橋があれば。
そんな想いは自然との天秤にかけられるのでしょうか。
奄美にも加計呂麻島という本島から離れた島があり、そこに住む高校生たちは、今も船で通学しています。
橋があれば、もっと便利になるだろうけれど、様々な難問があり今も橋建設は実現できず。
不便さゆえの豊かな自然。
島に住む人にとって、この二つの相反する存在は、どのように映るのでしょうか。
そんなことを感じながら、心がじんわりとしました。