この作品は"真剣"だ

この『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』という作品は、同性愛に対して、不平等な世界に対して、人間に対して、ものすごく真剣です。

そして、まさに真剣の如く、読者の心をズタズタに切り刻んでいきます。
主人公の純が抱く、普通という言葉に対する疑問、男が好きだけど幸せな家庭を築きたいという矛盾に対する苛立ち、自分自身に対する嫌悪。

それら一つひとつが刃であり、私たちの"当たり前"を覆しながら、同性愛について深く考えさせるのです。

世界が孕んでいる偏見と、性的マイノリティの方々(本作ではゲイ)が隠している苦悩が、いっさい偽られることなく書かれています。

その真剣さと切れ味に終始圧倒され、ハッピーで笑える話が好きなはずの私が、断言します。

これは、人類全員が読むべき作品である、と。
男も女も、ホモも腐女子も、全員が。

面白いので読んでみて!と作品をすすめてきたことは何度もありましたが、ここまで『読むべきだ』と言わせる作品はあまり他にないです。

とまあ、偉そうに言いましたが、私の世間に対する影響力など微々たるものです……。
そのことがこんなにも悔しかった瞬間はありません。

そもそも、面白い、楽しいという感想は、この作品には似合わない気がします。
局所的に笑える表現は出てくるものの、全体的にはものすごくシリアス。

シリアスで、ハッピーエンドとは行かないまでも、読後感は最高。
それは、純をはじめとした、リアリティのあるキャラクターたちのおかげでもあります。

純を好きになったのが三浦さんでよかった。
純の親友が亮平でよかった。
純と対立するのが小野でよかった。

そして読み終わったあと、読者は思うのです。
この作品に出会えてよかった、と。

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