『御伽術師』という、おとぎ話をモチーフにした能力者が存在する世界が舞台のお話です。
本作の主人公は、花咲かじいさんの末裔である桜庭灰慈。灰を花に変えることのできる能力を使い、火葬後に遺灰から花を咲かせて弔う『花葬り』を行います。この設定がもうワクワクですよね。
お人好し高校生の灰慈が、色々な人と関わり、向き合い、成長していく姿が描かれていて、どの話も最高でした!
登場人物がみんな好きなんですよね。水川さんもツヅラも黒古さんもみんな魅力的でした。私は白洲さん推しです!
花葬りのシーンがとても素敵です。
どんな花が咲くかはその人次第ですが、花の種類にもしっかり意味があって、願いや祈り、感謝や愛といった、故人が伝えたかったことが浮かび上がってきます。花言葉とかもつい調べちゃいますね……。
あと記憶が流れ込んでくるシーンで毎回泣きます。
死を扱っているため、重くて悲しいエピソードももちろん出てきますが、それ以上に、とても前向きになれるお話です。
皆さんも第一部を読んで、私と一緒に第二部を待ち望みましょう!
なべて人に訪れる平等とは、死である。
荼毘に付された肉体は灰となる。
その灰を一握、やさしく掬い取って天に撒く桃髪の少年がある。
――ご存知、御伽噺界のレジェンド、花咲か爺。その人の末裔である灰慈少年こそが本作の主人公である。
いやもう大好きですよ、たまりませんよ。最初から最後まで泣きっぱなしでした。ティッシュなしに読めないなんて聞いてませんよ、タグに入れなきゃ「ティッシュ必須」って。
灰慈少年は、火葬の後、亡くなった方の灰を掬い取り、散骨ならぬ散灰をすることで中空に花を咲かせます。彼の散らす灰は、故人の思いの籠った各人異なる花を咲かせると言う、元祖を超えた不思議なのです。
故人の心に感応しながら彼は花を咲かせ続けます。
優しさと強さを育てながら。
そんな彼の周囲を固める人々もまたあたたかく優しい。
生きる事は大変だけれど、死ぬことも辛いけれど、でも、やっぱり人生って、人っていいな。
そんな風に思わせてくれる、胸と涙腺にしみわたる物語でした。
読ませていただけて幸せでした。
本当にありがとうございます。
若い男女の心の揺らぎを丁寧に描いているのが根幹だがバックグランドとして人の終末と正面から向き合ってリアリティをもって進行していくのが凄い。
更に御伽話と融合した特異なファンタジーとして成立させているセンスに驚き。
読者に一気読みさせるパワーも圧巻。
本編では花咲か爺さんからのエッセンスが主人公に与えられて中心となっているが、脇役となっているキャラクターの御伽話にスポットを当てた続きをどうしても期待したくなる。凡庸な自分にはどんな御伽話にスポットを当ててもこのクオリティでの続編は想像もつかないが乙島紅ならきっと奇想天外なファンタジーを書いて再び驚かせてくれるでしょう。