1人殺せば犯罪者、100人殺せば大英雄、利害が変われば悪の枢軸

よくある異世界転生ものなんですが、その中でもいろいろなパターンを組み合わせたり、取捨選択したりしながら設定を構築しているのが伝わるので、マンネリせずに読めました。

本編に登場する人物の出自が、別作品のサイドストーリーに書かれているので、そちらを読まないと判らない箇所もあるのですが、それはまたご愛嬌。知らなくても本編は楽しめます。

長く続く二大国の戦争を終結させるために召喚された先生と生徒が、各国の英雄として祭り上げられ、対決しなければならない悲壮感の演出がとてもうまく、刃を交えるたびにもどかしい気持ちになりました。
戦争シーンも(作者が歴史に詳しいだけあって)実際の合戦を参考にしているので無理なく戦略が展開しており、下調べと取材力も頭一つ抜けていると言えるでしょう。
ファンタジーだからと言って、調べ物なしで頭の中だけで書いているものはつまらないですからね。

異世界召喚されたコウが、なぜ時の旅人と呼ばれていたのか、その真実が明かされる終盤などは見事な真相解明でした。

どんな救国の英雄も、立場が変われば悪の首魁であり宿敵である。
ヒーロー&ヴィランというタイトルからにじみ出る板挟みの苦悩と、最後にコウが出した結論は、涙なしには読めませんでした。

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