まるで、水面に浮かぶ蓮の上にいるかの如く

突然の失踪と共に語られる、それぞれの人間関係。
自分自身の成長や葛藤。周りとの距離感が見事に描かれていきます。
物語りの緩急のつけ方に、心理描写が見事にマッチして読むごとに引き込まれていきます。
子供から成長し、自分という物語を描いていく中での葛藤は、読んでいて感動を覚えました。

決して穏やかなままでない水面に浮かぶ蓮の葉に、自らの居場所としてしがみつく。距離を縮めるために近づく事が、相手の蓮を揺らしてしまう。自らの蓮を育てずに、相手の蓮によりかかることで良しとする。
様々な生き方は時間と共に、一つとして前と同じではない。
それぞれがあがきつつ、自分の蓮を育て、お互いの距離を探っていく。

他人と自分は同じじゃない。でも、お互いに何かを求め、探している。
そんな何かに気づかせてくれた気がします。

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