サクサク読める濃厚物語

ジェヴォーダンの獣。私は全然知りませんでしたが、なかなかに有名な実話だそうで。

家族のやり取りと、恐ろしい魔獣の対比と調和が楽しめます。
また、交錯するアンヌの心理描写も見物。
テンポ感も良く、文量も少な目なので、サクサク読み進められて、短時間で一気に物語に没入したい人にオススメ。
ラストは、暗闇の中へ獣が尾を引くような怪しい余韻を残して終わっていますが、個人的には、もっと先のこともガッツリ描いてほしいほどでした。

歴史、伝記、童話、ファンタジーの良さを併せ持つ展開と描写で、ジャンルを越えた読者に読んでほしいと思います。
たとえば「聖別」という語に当時の宗教感や教会の匂いを感じられたり、ちらほら出てくる人物の所作などからも作者の、時代への愛が感じられて快いです。

今もまだ、懺悔の遠吠えが、どこからか聴こえているような気がします。