ジェヴォーダンの獣。私は全然知りませんでしたが、なかなかに有名な実話だそうで。
家族のやり取りと、恐ろしい魔獣の対比と調和が楽しめます。
また、交錯するアンヌの心理描写も見物。
テンポ感も良く、文量も少な目なので、サクサク読み進められて、短時間で一気に物語に没入したい人にオススメ。
ラストは、暗闇の中へ獣が尾を引くような怪しい余韻を残して終わっていますが、個人的には、もっと先のこともガッツリ描いてほしいほどでした。
歴史、伝記、童話、ファンタジーの良さを併せ持つ展開と描写で、ジャンルを越えた読者に読んでほしいと思います。
たとえば「聖別」という語に当時の宗教感や教会の匂いを感じられたり、ちらほら出てくる人物の所作などからも作者の、時代への愛が感じられて快いです。
今もまだ、懺悔の遠吠えが、どこからか聴こえているような気がします。
conte de fées noir(コンテ・デ・フェス ノワール)
この物語を読み終えた僕は、そう思った。
conte de fées noir。その意味は、「暗黒童話」或いは「黒いおとぎ話」というべきか。
一見して、家族再生の物語。と、思いきや……と、簡単に終わらせないから面白い。
「ジェヴォーダンの獣」はブルボン朝フランスで実際に起きた事件。現在に至るまで、小説や映画などで取り上げられてきた。この物語は、今までに作られた「ジェヴォーダンの獣」を、全く違った解釈で描いている。多分、このような解釈は初めてでないだろうか?故に、「新約」でだと評した。
conte de fées noir。
皆様、暗黒童話はいかがですか?
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