巧み且つ魅力的な素晴らしいラブコメ

非常に読みやすいけれど、一方ではたいへんに巧みで且つ魅力的な作品でした。

まず、キャラクターの構図と物語の構成が見事。
主人公の只野とまひる、みやこ、編集長はもちろんのこと、ネット上の「桃色カウンセラー」、まひるの勤務先の店長、大物女性作家、まひるの両親など、主要キャラクターを取り巻く人々が絶妙に配置されていて、彼らそれぞれが物語の中でしっかりと機能していくように物語が構成されています。
誰かひとりでも欠けたらお話は成立しません。

これだけ巧みに構成されていながら、キャラクターがただ物語を形作るための駒的になっていないのも素晴らしいです。
それは、一人ひとりのキャラクターが人肌の体温を持った魅力を備えていたからでしょう。
特に、やはり只野先生のキャラはたいへん面白く、不器用で偏屈で明らかなコミュ障でありながら、その分真っ直ぐで心根自体は優しいということが物語が進むごとに伝わってきます。
そして、いつの間にか彼にすごく好感を抱いていることに気づかされます。
それはおそらくまひると同じ心境の変化で、読み手がヒロインと感情を共有できる作品です。
それは恋愛小説においてとても大切なことだと思います。

これだけの分量なのにすいすい読み進められるのも嬉しいです。
超遅読な私でもすぐに読破することが出来ました。
たいへんに読みやすいけれど、安っぽいわけではなく、ストレスなく読めるような技術の高さがあると思います。

読めてよかったです。

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