三十一文字の小宇宙がはらむ熱量

読んだ小説や漫画の感想を、短歌になさることもある卯月さんの短歌集。拙作も短歌にしていただいたこともあって、恥ずかしながらその後で初めて卯月さんの短歌に触れた。そして、泣きそうになった。

三十一文字という極めて限定された表現の形式が、これほど新しく見えたのは久しぶりだ。

「ゆうしゃのぼうけん」章に描かれる機能不全の家族の中で苦しむ子供の感情も、痛みや情熱、風景や香りまでもが時折驚くほどの力を持って迫ってくる。この形でしか表現できないことがある。この形で読んで初めて響くものがあるのだ。

「書架」章にはカクヨムの作品を含む多くの作品の感想が短歌という形で並んでおり、良質のブックガイドにもなっている。

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