共感はしない お安い「わかるよ」は君の棘からヒカリを奪う

 詩歌の良し悪しはよくわからない。
 古今東西、どんな文化圏の作品であれ、
 解釈や感想を求められても、うまく言える自信がない。

 でも、美しいかどうかはさておき、
 刺さってくる作品というものは確かに存在する。
 短いぶんだけ鋭利な何かが、ぐっさり刺さってくる。

 痛いなあ、と。
 その痛みが好きだなあ、と。
 ゆうしゃのぼうけんを読み進めた。

たからばこ あけられないのがたくさんで さいごのカギはみつからないまま

 詩歌を分析や指摘や批評の俎上に載せるって、
 一体どうやっているんだろう?
 いちばんを選んだり表彰したり、よくわからない世界だ。


十七の鉛のブレザー 本音なら筆箱の中、詠み人知らず

 進学校の高校時代、私もたまに短歌を書いていた。
 小説を書く時間が取れず、31字に感情を詰め込んでいた。
 読み返してみると、自分でも意外な言葉がけっこうあった。

勉強も大事、遊びも大事とか、あたしはママのやじろべえじゃない
絶対値でくくれば等しいベクトルもホントは違う方向指してる
ネバーランド忘れたおとなは空を飛ぶために翼がほしいと嘆く
世の中には愛よりむしろぶつかるとマイナスになるiが多いね
「甘えてもいいよ」? 格好つけンなよ 棘も持たない温室育ちが
骨折の傘はコンビニに置き捨てて泣いているのは空だけじゃない

 短歌の勉強をしたわけでもなく、ただ何となく。
 ちょっと手が付けられないくらい牙を剥いていた当時の自分を
 書き付けておいてよかったと、今は思っている。


 折句や冠沓などの遊びを詰め込むことはできても、
 美麗な装飾を施す余地のない短歌は、
 詠み人の剥き出しの感性に、じかに触れられる。

 この手で触れれば壊したり汚したりしそうで、
 あるいは海の生き物のように火傷をさせてしまいそうで、
 怖くなりながら、ひっそり、ゆうしゃの旅に付いていきました。

あきらめてひらきなおって闇よりも怖い朝日を浴びてみようか

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