その8 『東京防衛戦!エーユーフォーVSドラウマケンタウロス』

1-- 緊急事態発生



 朝が来た。守たちはいつもの車に集まる。さすがに海里が加わると狭くなるので海里は自前のバイクに乗ってきた。


 昨日の大和からの電話をうけ、東京へ急行する車の中、ほかの班から連絡が入った。



「こちら築島班!十文字、きこえるか」



「ああ、私だ」



「東京に巨大な蜂のガディアス出現!刺された人間も次々と小さな蜂のガディアスへと変化している!」



 どうやら、先日の蛇のガディアスのときと同じようだ。しかし今回は街中だ。犠牲者がいくらでるかわからない。


 現場は東京タワーのみえる大都会。タワーのそばには神国財閥の立派なビルがある。


 逃げ惑う人々を後ろから針で突き刺す蜂のむれ。刺された人は次々と蜂ガディアスへとかわっていく。しかし、本体は一番大きな蜂ガディアス、さしずめ、女王蜂というとこか。


 猛スピードの十文字班の車が横滑りしながら停車した。そこから飛び降りる守、良樹、十文字。その後からバイクで海里が来た。



「蛇のときと同じなら、小さな蜂は対ガディアス因子弾で倒せるはず。俺と十文字さんは子蜂どもをやる!」


と、良樹



「わかった!ってか、なんでおめーがしきってんだよ」


 守るがつっこむ。すると、十文字のもとへ通信が入った。



「新たなガディアス出現!現在、神国財閥ビル周辺に多数のガディアスが出現しています!」



「なんだって!?」



 海里はバイクにまたがった。


「ならば手分けしよう、俺は財閥ビルの北側の敵を倒す」


 と、ヘルメットを装着しながら海里。


「ああ、わかった。俺は女王蜂を落とす」



 各自散った。女王蜂はでかいので目立つ、そこへと走って向かう守。大きな公園の上空、女王蜂を捉えた。


「よし、変身!」



 変身しようとフォトンベルトを巻いたとき、公園の中に新たな敵の姿をみつけた。それは、かつて戦ったことのある相手。


 龍のような顔に人間の胴体、鱗のような鎧、下半身は巨大な馬。右胸にユーフォーディスクをつけている。そいつこそ。


「ドラウマケンタウロス!」


 剣と盾をもったドラウマケンタウロスは守に気づいた。



「お前は、あの時のユーフォーのガディアスか」



「戦う宇宙人エーユーフォーだ」



「エーユーフォーか。我が名はドラゴホース覚えておくがいい」



「ド、ドラウマケンタウロスじゃなかったのか」



 ドラウマケンタウロスは守が勝手に付けた名前だ。



「フォトンエヴォルブ!」



 守はエーユーフォーに変身。



「言っとくが、前のようにはいかないぜ!」



 黄色のディスクを銃に取り付け、隕石の様な弾丸を放つ。しかしドラウマケンタウロスは盾で防いだ。


「なるほど、銃を使えるようになったか」



「銃は剣よりも強し、いい言葉だぜ」



「そうとは限らん」



 ドラウマケンタウロスは走ってこちらへ突っ込んでくる。守も銃で撃つがシールドで弾かれる。



「あのシールドをなんとかしないとな」



 ドラウマケンタウロスは飛び上がり、剣を振り上げた。



「この一撃!かわせるか」



「大振りなんだよ!」



 守はドラウマケンタウロスの下に潜りこんだ。



「馬の足の長さが命取りだ!ここまでシールドはもってこれまい!」



 潜った股下から銃を連射、激しい爆発をあげた。爆煙の中からゆっくりと、エーユーフォーが姿をみせた。



「因縁の相手だったが、今となっては大した敵には感じなかったな。さて、お次は女王様の番だぜ」



 すると、守のもとにあの翼のガディアスの姿のかけるが舞い降りた。



空翔そらかける、邪魔をする気か」



「大地、お前が言っていたことが正しかった。俺がガディアス討伐をさせられていたのは、ユーフォーディスクを破壊しようとするガディアスをとめるためだったみたいだぜ」



「な、なに!?」



「人々を助けるために、化け物を倒してると思っていたら、人々を苦しめる化け物を作り出す機械をまもらされていた。とんだ間抜けだぜ」



「そーいうことか、たしかに飛んでるマヌケだったな」



「言ってくれる」



「そんな飛べるお前に倒してほしい敵がいる」



「ああ、わかってるさ。あの蜂は俺が始末する」



 かけるは飛び上がり、女王蜂のもとへと一直線に飛んで行った。



「俺は、大和のもとへ行く」



 守は目の前にそびえ立つ神国財閥ビルへと歩を進めた。




2-- ガディアスを超える怪物、ギアモンスター現る



 蜂の怪人へと変えられた人たちを対ガディアス因子弾で倒してゆく良樹と十文字。



「き、きりがないな」



 民家の陰にかくれながら十文字が言った。



「守が女王蜂を倒してくれるまで、俺たちがバテるわけにはいきませんよ」



 気合の入っている良樹。おそらく、この戦いで神国財閥との決着はつく。しかし、神国財閥を倒したら、ガディアス対策本部はどうなるのだろうか。良樹はそんなことを考えていた。



「十文字さん、俺たち、ガディアスに勝ったあとも一緒にいれるんでしょうか?」



「……そうか、森野くんのことか」



「は、はい」



 緑と離れ離れになるのではないかと不安だった。



「俺、緑に、ラブレター書いてるんです。机の引き出しにしまってて。この戦いが終わったら、緑に渡すつもりです。だから、十文字さんもこんなとこでくたばらないで下さいよ」



「ああ、縁起でもない。必ず勝とう」



 物陰から飛び出し、空中の蜂たちを撃ち落とす。落ちてきた死体はガディアス因子が抜け、ただの人間の死体へとかわっている。羽が生えていた背中の皮がびりびりにやぶれ、蜂の顎のような形になっていた頬の横側の部分は穴があき、口へと貫通している。


 たくさんの死体がつみあがる。若者から老人まで、逃げ遅れた人はたくさんいたようだ。



「ガディアス、絶対に許さないからな!」



 蜂と戦っていると、上空に巨大な鉄のわっかのようなものが浮いているのをみつけた。


 なんなのだろうか。それは徐々に近づいてくる。大きい、直径三メートルはあろうかという巨大なリングが良樹と十文字の前にゆっくりと着地した。



「こ、これは!?新たなガディアスか」



と、十文字


 リングだが、ワッカの途中に、歯車が挟まっている。歯車の横から出た長い鉄がリングを作っているような姿のモンスター。


良樹が、気づいた


「あ、あのギアー、ギアドライバーのギアと同じなんじゃあ!」



「あ、ああ同質のものの様だ、あのギアーはガディアス因子を送りこんだり、逆に吸い出したりする物。なぜガディアス自身があのギアーを!!?」



 巨大リングはこちらへ転がってくる。対ガディアス因子弾で対抗しようとするが、鉄の体はその弾丸を全て弾き飛ばす。轢き潰されるすんぜんで横跳びでかわし、瞬時に巨大リングの方向に銃を向け直す二人。しかし、位置的には蜂の群れと巨大リングに挟み撃ちにされたような位置。



「良樹、走れ!あのスポーツショップの中に隠れるぞ!」



「わ、わかりました!」



 目の前に見えるスポーツ用品店へとダッシュする二人。巨大リングが入ってこれなさそうな所は近くにはその店しかない。それを巨大リングが転がり、追いかけてくる。しかし間に合わない。息を切らせながら全力で走るがすぐそこまで迫るリング。


 もうだめだ、諦めかけた時、上から女王蜂が吹っ飛ばされてきて、リングを押しつぶした。



「ハァ、ハア……な、なんだ?」



 手を膝につき、荒くなった呼吸をととのえながら上をみる良樹と十文字。


 そこには、真っ赤なフェニックス、そう、変身した空翔そらかけるがいた。



 かけるは良樹たちのもとへと降り立った。


「俺は大地守の友人だ。お前たちは下がれ、こいつらは俺がなんとかしてやる」



 体から炎のオーラを出し、炎をまとったかける。その炎を矢のような形に変え、撃ち落とされた女王蜂と巨大リングに向かい放った。


 しかし、巨大リングは女王蜂を、跳ね除け、起き上がった。


 女王蜂は矢が直撃し、苦しみもだえる。熱さと痛さの二重の苦痛なのだ。



「くっ、なんだこいつは!」



 巨大リングはかけるに向かい、一直線で転がっていく。


 女王蜂も体制を立て直し、かけるへと針を向けた。



「くっ、このままでは助けに来ながらそのままやられてしまうな」



 だが、良樹が撃った弾丸が女王蜂の目を直撃、女王蜂はふらついた。


「た、助かったぞ!」



 そのまま巨大リングをうけとめ、空中へ遠くへ放り投げた。



「さあ、蜂怪人、次はお前の番だ!レヴァテインイグニッション!」



 鳥の爪の様だった指が腕までスライドし、中から人間の手と同じ形の手が出た。そして、右腕にスライドした爪から炎が吹き出し、剣の形になった。



「敵を切り裂く紅蓮の炎!ソードオブレヴァテイン!」



 空を飛びソードオブレヴァテインと呼ばれる炎の剣で、空中の女王蜂を一刀両断。上半身と下半身に裂かれた体は、空中で爆発。二つの汚ねえ花火が打ち上がった。



「次はリング野郎だ」



 地上を転がるリングを空からとらえた。だが、リングの様子がおかしい。リングの丁度中心に光の玉ができていて、リングの周りのアスファルトが液状化し、沸騰したようにボコボコと泡をたてている。



「な、なんだあれは!」



 良樹と十文字は対因子弾を打ち込み続けるが、途中で蒸発したように消える。そして、リングは体の側面を翔に向けた。丁度、翔からみたら円に見えるような向きだ。



--3 リングギアモンスター対バーディアンレヴァテイン



 リングの中心の光の玉はどんどん大きくなる。


「切り刻む!」



 かけるがリングへと向かい急降下を始める、しかし、なにか嫌な予感がする。すると、リングからかけるへむかい、巨大な光線が発射された。当たる寸前で回避した。



「な、なんだあれは!」



 光の玉はなくなっている。



「あいつ、エネルギーをチャージして一気に打ち出したんだ!きっと」


と、良樹



「なるほど、ならば次はチャージさせん」


 翔は左腕についた鳥の爪から炎の矢を発射した。しかし、鉄の体をもつ巨大リング怪人にはまったく効いていない、着弾したら火の粉となって消えてしまう。巨大リングはまたエネルギーをチャージしはじめた。



「ま、また熱を持ちだしたぞ」


と、良樹



「ああ、しかし、この状態では奴も上手く動けないようだ。方向転換がやっとだ」



 ゆっくりと体の側面をかけるへと向ける巨大リング。



「お前たちは今のうちに逃げるんだ!」


 上空に飛んだかけるが良樹と十文字に向かい言った。



「わ、わかった。このままじゃあ足手まといだ!」



 良樹と十文字はスポーツ用品店のほうへと走り出した。すると、巨大リングが先ほどの光線を地面へ向け放ち、その反動で飛び上がり良樹と十文字の前に立ちふさがった。リングの横回転でふっとばされ倒れる二人。



「や、やばい……」



 そう思った直後、巨大リングは回転し直進、倒れている良樹の腹を弾き潰した。



「ぐはぁっ!」



 口から血を吐き、その場で動かなくなる良樹。



「良樹!!」



 十文字がかけより、良樹を抱える。腹の部分は巨大リングに完全に押しつぶされ、ぺしゃんこになってしまっている。



「じ……十文字さん……」



 良樹を抱える十文字を巨大リングから守るように両者の間に降り立つかける


「あんたはその男をかかえて安全な場所へいけ!」


 そう言い、炎の矢を巨大リングへと撃つ。


 十文字は良樹をかかえ、スポーツ用品店の中へと逃げ込んだ。中には誰もいない。全員、蜂にされてしまったのだろう。


 休憩室をみつけ、良樹を寝かせる十文字。すると良樹が


「……十文字さん……こ、これを……」



 良樹はポケットから鍵を取り出した。



「これは?」



「守に……渡してください……中の物は燃やしてくれって……いって……」



 それだけ言うと、良樹の手は床へと落ち、その傍らに鍵が転がった。



「よ、良樹!良樹!!」



 その声はもう良樹には届いてはいなかった。十文字の叫びだけが、小さな休憩室に、響き渡った。



 そして外では、巨大リングとかけるが対峙している。



~つづく~

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