その3『みえない敵、AUFO対ゼブラディアン』

--1 必然は誰かに仕組まれた物、運命は自分が切り開いたもの


「ま、守は無事なの!?」


 守の体を乗っ取ったバレットに緑が問いかける。


「ああ、大丈夫だぜ。あと、俺は守の記憶は引き継いでいる」


「記憶を」


「ああ、だから守が緑の元カレだってことも知ってる」


 飲み物を飲んでいた良樹はむせ返した。


「お、どうした?よしきぃー?」


 守を乗っ取ったバレットが良樹のよこに座り、肩に腕をまわした。


「も、元カレ……か」


 バレットは小声で。

「でも気にすんなよ、元、だからなモト」


「わ、わかってるわ!」


 緑が。

「今はガディアスを討伐することにしか興味はないわ。私たちガディアス対策本部は、ガディアスを全滅させる」


 運転する大文字。そこに無線で連絡が入った。無線からノイズ混じりの声がする。

「こちら航空班、縛馬島の調査を続行したが生存者は見当たらない」


「そうか、そう大きな島ではない、見つからないということはやはり、もう既に大地くんの友人たちは……」


 そこに後ろからひよっこり顔を出す守。


「んー、やっぱあれだけのオーガに囲まれてたらだめだったか」


「だ、大地くん、いや、バレットか。聞いていたか」


「うん、だけどまあそのうち現実は受け入れられるさ」


 緑が

「ところで、バレット。この話、守にもきこえてるの?」


「いや、守の意識はないから今は聞こえてないだろうな。ただ、俺が守の記憶をうけついだように、守が目を覚ましたとき、守は乗っ取られていた間の記憶をもって目を覚ますだろうな」


「そう、まあ、いずれは知らなければならないことよね」


「あと、俺は守でいいぜ。ややこしいだろ?」


「まもるとは全然違うから私はその方が違和感あるわよ」


「いや、同じところはあるぜ」


「なによ」


「お前のことが好きだってことさ」


 二枚目風の表情で緑をみつめる守(バレット)。


「トカゲのくせに生意気よ。まあ、いいわ、守。本当のまもるが目覚めるまで、その体、守り抜きなさいよ。」


「がってんだ!」


 ところで、この車どこに向かっているのだろうか。守が十文字に聞くと。

「ガソリンスタンドだ。それと物資補給もある」

 どうやら対ガディアス因子弾やコンピュータ、またその電力、そしてバンの給油。これらはガディアス対策本部十文字班に与えられた予算から出さなければならないらしい。ちなみに討伐したガディアスの数で予算を上げてもらえる。

バンの荷台に設置された椅子と机。その他はコンピュータ。守は緑と良樹、シンジのいる荷台に行き、椅子についた。その横には空になったバレットのケージがある。それをみて。

「こんなちっちぇえ檻に入れられてたのか俺」

と、守。そして、聞きたかった本題を緑たちに投げかける。

「緑、ドラウマケンタウロスの奴が気になることを言ってた」


「ドラウマケンタウロス?あのガディアスのこと?」


「ああ、守、UMAが好きだろ。だからわかったんだが、ケンタウロスっていうのは人間と何かを足した生物らしい、馬とたせば、ただ単にケンタウロスって呼ばれる。で、ドラゴンと人間を足せば、ドラゴケンタウロスっていうんだ。その両方の特徴をもってるならドラウマケンタウロスだろ」


「なんでウマは日本語なのよ」


「あ、ホントだ。まあいいじゃないの」


「で、気になることって?」


 そう、そのドラウマケンタウロスが言ってたこと。それは。

「あいつ、『ガディアスなのになぜ財閥に逆らう』みたいなこと言ってた。ガディアスを操ってる組織があるみたいだ」


「ええ、それはまもるもよく知ってるところよ。私も最初は信じられなかったけど、敵は神国財閥」


「か、神国財閥!?」


「そうよ、ここでも話したことあるのに聞いてなかったのバレット」


「む、難しい話の時は寝てた……」


「そこはまもると同じね」


 神国財閥、それはバレットではなく、守のよく知る財閥。なぜなら財閥の御曹司、神国大和は守とは中学からの同級生。そして、緑、守ともに、高校時代は大和川自然保存会に入っていた仲だ。


「なんという身内戦争」


「私も最初は信じられなかった。けど、あれだけ大きな組織よ。なにかしでかすなら大きなことをしでかすはず。私たちみたいな別組織に属する者と対立することになるのは必然」


「必然か……一緒に映画まで作った仲なのに、戦わなきゃならないのかよ」


 その守の発言に良樹がひっかかった。

「映画?」


「ん、ああ。大和のやつが役者志望だったんだ。んで、みどりがこの通り、ヒーロー好きだろ。だから子供たちに自然の大切さを伝えるため、大和川を守るスーパーヒーローの映画を作ったのさ!」


「なぜそうなるんだ」


「かっこいいから!」

守と緑は同時に答えた。

 給油をすませると、バンは研究所のような場所へ到着。

「ここは?」

と、守

 良樹が答える

「ガディアス対策本部研究所だ。エーユーフォーが使えるようになったから、エーユーフォー用のユーフォーディスクを貰えるみたいだ」


「へえ、この赤いユーフォーディスク以外にも俺が使えるディスクがあるわけだ」


 腰に付けたディスクホルダーを見ながら言った。


--2 インビンシブルエネミー、メテオストライクジュピター


 待合室に入れられ、待っていると係員が箱を持ってやってきた。それを四人がついたテーブルにおいた。


「例のものです」


 係員は箱をあけた。それを四人は覗き込むようにみた。守が持っている赤いディスクと同じ形。青と黄色のユーフォーディスクだ。

 守は二つのユーフォーディスクを手に取った。

「赤と、青と黄色。どう使い分けたらいい?」


「赤はバランスタイプ。青はスピード。黄色はパワー。と、考えていただければいいです。トカゲのガディアスが進化した銃にセットすれば、赤の火球に対し、青はレーザーのような光線、黄色は重力波により、命中したものを八方向に引き裂きます」


「へえ、黄色ひとつありゃー、ことたりそうだな」


「いえ、黄色の弾は超低速のため、上手く命中させるのは難しいでしょう」


「なるほど、浪漫だな」


 係員によると、ディスクの名前はそれぞれ

赤はジェットディスク

青はリューセーディスク

黄はインセキディスク

と、言う名前みたいだ。


守が聞く

「ユーフォーディスクにはガディアスの遺伝子が閉じ込められていて、フォトンベルトの力で、装着者の遺伝子を閉じ込められたガディアスの遺伝子をもとに進化させる。それがフォトンエヴォルブだろ。ユーフォーディスクが増えたってことは、違うガディアスに進化するわけだ。守の……俺の体は大丈夫なのか?」


係員が

「ええ、大丈夫でしょう。違うユーフォーディスクと言っても同じガディアスの遺伝子をつかっています」


「同じ遺伝子?一つのガディアスは一つのユーフォーディスクにしか入らないはずだ」


「それが、様々な能力をもつユーフォーガディアスは、同じ体の中に別の遺伝子を持っていたのです。ですから、能力ごとに別々にユーフォーディスク化できました」


「へえ、すごいな」


 守はディスクホルダーに青と黄のディスクをしまった。

 すると、良樹が。

「博士は?今日はいないですか?」


「博士はここ3日間研究室にとじこもりっきりです。なんでも、対ガディアス用新兵器を開発中だとか」


「へえ、俺たちが倒しきるまでに完成できたらいいな」


 そんな話に電話の着メロが割り込む。スーパーヒーロー『ネッコー仮面』のオープニングテーマだ。


「私だ」

電話に出たのは十文字


「うむ、すぐにそちらに向かおう」


 電話によると、街中にガディアスが出現。警察や有志により避難活動は終わっているとのこと。ただ不可解なのは。そのガディアスの姿が見えないというのとだ。


「こないだのドラウマケンタウロスじゃないんだな」

と、守


 四人は現場に急行。


「またしゃべるガディアスなら、神国財閥の話を聞き出してやるぜ!」


 エヴォルブタスキを装着者し、赤いユーフォーディスクをセットしている守。それをみて緑が。


「新しいディスクは試さないの?見えない敵ならスピードタイプの青がいいと思うんだけど」


「あ、そうか!どこから攻撃が来るかわかんねーから、素早く回避するわけだ」


ユーフォーディスクを赤から青に変更。


「いや、まてよ、見えない敵なら攻撃のチャンスは少ないから一撃の大きいパワータイプかなー。いや、敵の出方がわからないなら、バランスタイプの赤!いややはりスピードで!」


胸に青を装着し、両手に赤と黄色のユーフォーディスクを手に取り悩む守。悩んでるうちに現場に到着。

 結局青のまま、現場に降り立った。

ユーフォーディスク受け取りと一緒に補給した対ガディアス因子弾を装填した銃を手に取った十文字と良樹も共に。


 目の前には横から殴られたような跡がある火をあげた自動車。ぐんにゃり曲がってちぎれたガードレール

「くそ!大和がこんなことをやらせてるっていうのかよ」


「おい、守、敵がどこにいるかわからない。エーユーフォーになっといた方がいいんじゃないか?」

と、良樹


「ああ、そうだな。フォトンエヴォルブ!」


 ギアドライバーのギアを右に回し、変身。エーユーフォーの姿になる。


「さあ、どっからでもこい!とっつかまえて神国財閥との関係を吐いてもらうぜ!」


 そのセリフの瞬間、風を切り大きなな影が守の前に立ちはだかった。

「なんだ!いきなり現れた!」

 黒と白のシマシマ模様で、まさにシマウマのような怪人。強烈なパンチを守の腹に叩き込み、風と砂埃を巻き上げ消えた。

「くっ、しかし、一瞬しかみえなかったが、あいつ、ユーフォーディスクをつけてなかった」

 攻撃を喰らいながらもそこは見ていた守。しかし、この早さでは対ガディアス因子弾は当たらない。

「おい、ユーフォーディスクがないってことは、縛馬島の蜘蛛怪人やドライバートカゲ、オーガと同じだ。

ってことは、あいつは自然発生したガディアスなんじゃあ?」


守の問いに大文字が銃を構え辺りを見渡したまま答える

「うむ、だが神国財閥との繋がりがないとは言い切れない」


「ああ……。ユーフォーディスク付きのガディアスとユーフォーディスクなしのガディアスか……」


 すると、辺りを見渡す大文字と良樹の間を超高速ですりぬけたガディアスが、守の前に止まった。そしてパンチ。

「ぐわあああ」

 火花を散らし吹っ飛ぶ守。

「この!ならばこいつで」

 銃を取り出し、赤のユーフォーディスクを銃の側面にセット。そして、ユーフォーディスクをネジ巻きのようにまわすと、小さな火の玉が連射された。ネジ巻きが巻き戻る要領でユーフォーディスクは巻いた方向とは逆にジジジと音を立てゆっくりと戻ってゆく。


「ジェットバレット連射モードだ!いくら高速でもよけ切れまい!」


 だが一発目が着弾する前に、また姿を消された。弾はむなしく地面へ着弾し、砂埃をあげた。ガディアスはその砂埃を巻き上げて消えて行った。


「くっそおおお!あたらねえ!」


 巻き戻っていくディスクをとめ、引き抜きホルダーへ戻した。しかし、良樹が気付いた。

「俺たちの間からきて、埃を巻き上げた方向に逃げて行ったわけだ。つまり、あの黒い車のあたりから来て、あの白い塀のあたりへ逃げた」


「ならばあのあたりにもっかい砂埃をたてて!」

 守は黄色のディスクを銃の上部にセット。上部へのセットは連射ではなく、ディスクのパワーを一気に放出するのだ。そして、パワータイプの黄色ディスク。

「インセキディスクだから、メテオストライク!巨大な弾を撃ち出すのだから、ジュピターストライクってとこか。撃ち砕くぜ!」

目の前の白い塀に狙いを定め、引き鉄を引いた。


巨大な隕石のような弾丸が発射され、塀を粉々に砕いた。

 そして、粉塵の中にさっきは縞模様だってシマウマ怪人が真っ白になった姿が浮き上がった。

「謎は全てとけた!奴が使ったトリックは体の色を変えて、背景と一体化していたってことだ!」


 もちろん、ただ色を変えただけでは色覚が優れる人間の目はごまかせない。保護色というものは動物相手だから通用する。このガディアス『ゼブラディアン』は、多少の凹凸ならば、体に投影できるのだ。


「うおおお!」

 ガディアスは大きく吠えた。


「言葉は話さないのか」

 守は銃をゼブラディアンに向ける、だが、また消えた。

「さっきの移動ルートから察するに、奴はほぼ一直線にしか動けない。そして、保護色を使っているということは、隠れれば体を動かすことはできない。つまり、またあの黒い車のあたりだ!」

 守は黄色のディスクで車を撃つと、すぐさま連射モードで赤のディスクをセット。爆発した車の炎により、ガディアスが浮かび上がった。今度は真っ黒だ。

 そのまますかさず連射モードで撃ちまくる。さすがに回避するまもなく、炎の弾丸の雨を浴びるガディアス。

 そして、青のディスクのスピードを生かし、守は一気にガディアスの目の前に飛び込んだ。

 そして、腕のUFOの飾りを回転させ、キャトルミューティレイト光線をガディアスに当てた。

「ぐおおおおおお!」


 ガディアスは守に引き寄せられる。



--3 リューセーエーユーフォーの必殺、キャトルミューティレイト百烈拳



 赤のディスクをセットしたエーユーフォーに比べ、青のエーユーフォーはパワーが弱い。そのかわり、スピードは大幅にアップしているのだ。守は弱くなったパワーを補うために、引き寄せたガディアスに両手でパンチのラッシュを浴びせた。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ︎︎︎︎︎︎︎︎︎」


 数十発のパンチラッシュを一気に浴び、ガディアスはふっとび、壁に激突し爆発した。


「愉快爽快大解体!シマウマ野郎撃破!」


 その後、バンの中、全員で椅子に座り小会議だ。

 今回のガディアスはユーフォーディスクがついてなく、言葉も喋らなかった。最初にでてきたドラウマケンタウロスとはどう違うのか?そんな話の中。良樹が。

「そうだ!あのガディアス、俺と大文字さんの間をすり抜けてきましたよね、なんであの時、俺たちを攻撃しないで、守を攻撃したんだろう」


「あ、そういやそうだ。俺が一番強そうだったからかな」

と、守

そして、大文字が

「それともうひとつ、今回のガディアスは、エーユーフォーの姿をみても、同じガディアスの仲間だとは思わなかった。前回のケンタウロスのようなガディアスは同じガディアスが人間を守ることを不思議そうに思っていた」


「うーん、それは俺の変身をみてたからじゃないか?」

と、守


 しかし、どの答えも合点がいかない。なぜ守だけを攻撃し、なぜガディアス同士なのにいきなり攻撃してきたのか。


〜つづく〜

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る