その4 『決別の変身。エーユーフォー対ザリガディアス』
ガディアスは二種類いる。ユーフォーディスクのついたガディアスとユーフォーディスクのついていないガディアス。
ユーフォーディスクのついていないガディアスとは二度戦った。縛馬島のオーガたちとスパイダーガディアス、そして、海の近くの町でゼブラディアン。
ユーフォーディスクのあるガディアスとは一度だけ戦った。東京に現れたドラウマケンタウロス。
それと、守をガディアス化させたドライバーの頭をもったトカゲモンスター、やつはどちらとも違う異質な感じがする。
--1 昔の恋と永遠の友情
神国財閥がガディアスの研究をしている。これはガディアス対策本部が掴んだ情報だ。そして、東京に現れたガディアスはユーフォーディスクをつけていた。ユーフォーディスクは対策本部も使っているが、神国財閥も使っていたということか。
守はガディアス対策本部の経費を借りて宿をとっていた。部屋の中で一人で考えていた。本当の守のことを。
緑の事が好きだったバレットは、守のからだをのっとったのだが、守が緑にとって大切な友人だということで、守のからだを守ると決めた。
守の記憶を受け継いでいるが、違う人格。守もガディアスと戦うと決めていたが、本当に守のことを戦いに巻き込んでいいのだろうか。なにせ相手は神国財閥。財閥の御曹司、神国大和は守や緑の高校の同級生なのだ。
翌日、バンに戻ったメンバーたち。
リーダー、大柄な男、大文字。戦闘隊員だがケガで戦えないシンジ。あとは、データ整理も戦闘もこなす良樹と、サポート役の緑。そして、我らが戦う宇宙人エーユーフォー大地守(の体を乗っ取ったバレット)
大文字は車の中で寝泊まりしている。そこにみんなが集まってくる形だ。
コンピュータに囲まれた運転席側。バンの荷物搬入口のあたりに椅子があり、その椅子に付き、朝の小会議。
その会議の中、守が。
「なあ、緑。俺たち、大和と会ってみないか?」
「うん、私もそれ考えてたんだ」
「やっぱり?じゃあ昨日メール送っといて正解だったぜ」
「ええー!!メール!?」
シンジ以外の全員がこいつアホかと驚いた。シンジはアホなので驚かない。
「ケータイは縛場島でトカゲ野郎に壊されちまったみたいだが、昨日のホテルにあるパソコンからメール送ったんだ。俺だっていう証拠みせるため、写真までつけてな!」
シンジが
「おお!守グッジョブ!」
「グッジョブじゃねーよ!なに勝手なことやってんだよ」
良樹がツッコむ。
「え、でも次の日曜日にピクニックに行くから一緒に来いよって言われたぜ。良奈も一緒だ」
「今度の……日曜か」
緑はスマートフォンの手帳に予定を書き込んだ。そして。
「たしかに、バレットがやったことは後先考えないことだったけど、日曜なら私も予定あいてるし、早いうちにあっといた方がいいわ。
それに、ちょっと楽しみだしね。まもるはいないけど、久しぶりに大和川自然保存会のメンバーで会えるのが」
高校を卒業し早3年。みんな21歳。もう就職活動や卒研が始まり、会える機会は少なくなるだろう。久しぶりの再会、ガディアス対策本部の活動とは別に、単純に楽しみなのだ。
しかし、ピクニックとはこれいかに。しかも、わざわざ山の公園に現地集ときた。
日曜日。守と緑は広大に広がる原っぱへきていた。ところどころ木々があり、そのうち、大木のすぐそばで大和が手を降っていた。隣には良奈もいる。遠くからみても、いつも通り美男美女カップルだ。
「まもる!ずいぶん久しぶりだな」
「大和、元気そうだな。良奈も」
中学から高校までずっと一緒だった守と大和。バレットはその記憶も受け継いでいる、会話の辻褄は合わせられる。
山の散歩道を四人で歩きながら話す。
「まもる、まだみどりちゃんとは続いてたのか?」
「は?なんで?」
「いや、昔と変わらず仲良さそうに二人で来たからさ」
「ああ、別々に来たけどたまたまはちあった。今は大切な親友だから、仲良しなのは当たり前さ」
「そうか」
緑は良奈と久々の会話を楽しんでいるようだった。
四人の歩く道の先には大きな木がみえてきた。そこで大和が。
「なあ、まもる。俺たちずっと一緒だっただろ。中学の頃から」
「ん、そうだな」
「高校になって。俺は財閥を継ぐために、役者になるという夢をあきらめなければならなかった」
「ああ、俺には夢なんてなかったが」
「でも、みどりちゃんと出会って大和川自然保存会に入って、映画を作ることになった。そこで俺はまた、芝居をすることができた」
「ああ、ほとんど良奈が話すすめてた」
「けど、映画を撮ろうって提案してくれたのはお前だった」
「ああ、懐かしいな。俺たちの映画、ザリガニマン。人類を滅ぼすガイラ・イッシュから人類を守るヒーロー」
四人は大きな木の前について、先頭の大和が足をとめると、三人とも止まった。
「どうしたの?大和くん」
と、緑
「俺には大きな夢があるんだ。それにまもるとみどりちゃんにも協力してほしい」
「夢?次は何になりたいんだ?」
守が言った。
「いや、次はなにたいんじゃない。実現させたいんだ。理想郷を」
「理想郷?」
「そう、俺たちは大和川の自然の大切さを考えてきた。しかし、自然が汚染されているのは大和川だけじゃあない。俺たちは、地球すべてを守らなきゃならないんじゃないか?」
「そうだな、続けてくれ」
「ああ、まもる。お前、宇宙人やUMAは本当にいるって信じるって言ったよな」
「言った。でもほんとうにそんなのいたら驚くな」
「俺は、そのUMAを、自然を守る管理者にしようと思ってる」
「どういうことだ」
「人間の文明のうち、著しく自然を破壊するものを破壊しつくす」
「大和……それに協力はできない。それは、俺たちがザリガニマンで伝えたかったこととは真逆のことだぞ!そうだろ?良奈」
しかし、良奈はうつむいたまま答えてくれなかった。そして
「まもる。それは違う、俺は人類を滅ぼすんじゃない。革新をもたらそうということさ」
「そんなの革新かよ、お前の理想のおしつけだぜ。俺は認めない」
「ちがう、俺の理想は人類の理想なんだ。それを実現するのが、こいつだ」
大きな木の陰から、ザリガニのような怪人があらわれた。
「ザリガニマン!?」
「そう、俺の夢の結晶だ」
--2 エーユーフォー対ザリガニマン
ザリガニ怪人の左胸にはザリガニのハサミのような形のユーフォーディスクがついている。
「ユーフォーディスク付きのガディアスか」
と、守
「な、なに、守なぜ、おまえがユーフォーディスクを知ってる!?」
「俺は人間を守る」
守はカバンからフォトンベルトを取り出し、赤のユーフォーディスクを取り付け、体に巻いた。
「ま、守!?それは!!!」
「大和、俺はガディアスは全て倒す。ガディアスは人類の敵みたいだからな」
服を捲り、ギアドライバーの、ギアを回した。
「フォトンエヴォルブ!」
守はエーユーフォーになった。ザリガニガディアスが。こちらを見た。
「大和さま、こちらのガディアス、ご友人のようですが、どういたしましょう」
「くっ、まもる!」
「倒してしまっても構わないのですね?」
「ああ、だが殺すな」
「御意」
ザリガニが守へ向かってくる。緑は良奈を避難させる。
「まさか、ザリガニマンと戦うことになるなんてな!だが、今回はお前の夢、粉々に砕いてやるよ」
突進してくるザリガニガディアスに守も突っ込む。
「相手がザリガニマンなら手の内も知ってるってもんさ」
守は銃の側面に青のディスクをせっとした。
「リューセーバレット!くらえ」
相手に向かい走りながら銃を撃つ。高速のレーザービームのような青い弾丸がガディアスを撃ち抜いた。倒れたガディアスに飛び蹴りを喰らわそうと飛び上がる守。
「ジェットユーフォーキック!」
しかし、守の蹴りは鋭いハサミをもつ両腕に挟まれた。
「なに!」
守は地面に落とされ、ハサミで右足を挟まれたままで倒された。そこに大和が来る。
「まもる、お前は勘違いしてる。俺は、自然を守りたいんだ。だから、自然を破壊するものは作り直す」
「くっ、すでに出来上がったものを……消すなんて間違ってるだろ!大和、お前ならわかるはずだ!」
「消すなどと言っていない、作り直すと言ったんだ!俺たち人類の、地球のために!理想郷のために!」
「この大馬鹿野郎!てめーのその考えを叩き直してやる!」
守が再び銃を取ろうとすると、ザリガニガディアスの挟む力が強まった。
「ぐっぐわあああ」
めきめきと音を立て、エーユーフォーの装甲のような外装にヒビが入ってゆく。
「大和様、足は引きちぎってもよろしいのですか?」
「くっ……かまわん、殺してもいい」
守ではなく、守の体を乗っ取ったバレットなのだが、大和のその言葉はショックが大きかった。
「お前……本気なんだな」
「ああ、お前も危険因子と判断した。あとは任せたぞザリガニマン」
大和は戦闘から逃れた緑たちの走って行ったほうへと歩いて行った。
「そうか……大和、ザリガニマンは俺たちみんなの夢だったのにな」
守は胸のディスクを赤から黄色へと変えた。すると、赤いボディカラーは黄色にかわった。
「引き離す!!!」
ザリガニのハサミを両手でこじ開けようとするが、黄色のディスクのパワーでも開かない。
「あなたもわかっているでしょう、この私、ザリガニマンのハサミの力」
「お前なんぞがザリガニマンであるものか!このザリガディアスが。ザリガニマンは俺と大和と、緑と良奈と!大和川自然保存会のみんなの!夢の結晶なんだよ!」
「そう、私こそが大和様の夢の結晶」
「違う、エーユーフォーがそれを成す」
守は挟まれた足とは逆の膝のユーフォーの飾りを回した。キャトルミューティレイション光線が、ザリガディアスの隠れていた大木を捉えた。そして、青のディスクのついた銃で木を撃った。
レーザービームの弾丸で折られた木がキャトルミューティレイション光線により引き寄せられる。
「さあ、このままじゃあ激突だぜ」
「ふっ、仕方ない……」
ザリガディアスは両手を離し、引き寄せられ飛んできた大木を両手で受け止めた。その隙に守はガディアスから離れ、胸のディスクを赤にもどし、黄色のディスクは銃へとセット。
「これだけ距離があれば!くらえ、ジュピターストライク!!」
黄色のディスクの力により、巨大な隕石のような弾丸が撃ちだされた。
だが、ガディアスは受け止めていた大木を振り、弾丸を打ち返した。大きな爆発をあげ、木は粉々に吹っ飛んだ。
「だめだったか」
野原に舞った粉塵が、対峙する二人を包み込んでいた。
--3 夢や理想は共有できない
緑は良奈を安全な場所まで避難させていた。そして
「良奈ちゃん、このこと、知ってたの?」
「……うん、やめるように説得したんだけど。大和なら、怪人なんか使う前にやめてくれると思ったんだけど……だめだった」
「そう。でも、良奈ちゃん、言ってたもんね。大和くんの夢を支えるって。だから、信じてたんだ」
「うん。今でも信じてる」
大和川自然保存会のみんなで一つの夢をみて『ザリガニマン』を作った。しかし今、大和がザリガニマンと呼ぶものは守はザリガニマンとは認めていない。
それどころか、守は大和のザリガニマンを打ち砕こうとしている。
土と木の粉塵の中睨み合うエーユーフォーとザリガディアス。どうするか。またあのハサミに捕まったら今度は抜け出せないかもしれない。今のザリガディアスは大和から『守を殺してもいい』と命じられている。腕や脚など簡単に握りつぶしてくるだろう。
守は銃のディスクを青へと変えた。リューセーディスクだ。
「単純に考えて、ハサミがこわきゃ、銃で遠距離から攻める!弾のスピードが早い青のディスクなら!」
しかし、ザリガディアスは硬い両腕のハサミで弾を受け止めて走り込んでくる。
「私の甲羅の硬さはあなたもしっているでしょう」
「ああ、でも砕かなきゃ大和を救えない必ず砕く!」
「大和様を救うだと!?」
ザリガディアスは、エーユーフォーの右腕をハサミで掴んだ。激痛で銃を落としてしまった。
「そ、そうだ。大和を救う。今の大和は夢を見失ってる!誰かに変なこと吹き込まれたに違いないさ!俺はそれが誰だかつきとめる!!お前もザリガニマンならわかるだろ!」
「大和様が誰かに……!?」
「操られてるんだよ!」
「何を根拠にそのようなことを」
「俺が大和の親友だからだ!」
挟まれていないほうの手を伸ばし、ザリガディアスのユーフォーディスクに手をかけた。
「な、何をするのだ!?」
と、ザリガディアス
守は足を大きく上げて腕のUFOの飾りをまわした。
「よっしゃあ成功!」
さっきの引き付けるキャトルミューティレイト光線ではなく、UFOを逆回転させた引き離す光線。この力を使いディスクを引き抜いた。
「ぐはぁっ!」
無理矢理引き抜いたため胸から血を流すガディアス。力が緩まったハサミから腕を引き抜き、銃を拾い、青のディスクから黄色のディスクへ変更。
「くらえ!」
血を流す傷口へ巨大な弾丸が放たれ、大爆発を起こした。
その爆発は逃走する大和にも見えていた。
「守か?ザリガニマンか……?」
間近で爆発を受けた守も吹っ飛ばされていた。原っぱに倒れたまま、残った力でギアドライバーのギアーを逆回転させ、人間の姿に戻った。
ふらふらのまま立ち上がり、辺りを確認。ガディアスは粉々に砕け散ったようだ。戦利品のザリガニユーフォーディスクを握りしめ、守は大和を追った。
緑と良奈も爆発を確認していた。
「あの爆発なんなの……?」
と、良奈
「きっと守が勝ったのね。あれは黄色のディスクの弾丸の爆発」
「そんな、ザリガニマンが死んじゃったってこと!?」
「違う。あれはザリガニマンじゃない。良奈ちゃんもわかってるでしょ?」
良奈は緑のその言葉何も言えなくなる。すると、後ろから。
「あれはザリガニマンさ!」
大和だ。大和は良奈の手をとり、引き寄せた。そして。
「みどりちゃん、まさか君までまもると同じことを言うんじゃないだろうな……」
「ガディアスは、人類の敵。だから滅ぼす。神国財閥がガディアスを操っているなら私たちは神国財閥を潰す。それだけよ」
「なに!?」
「まもるにも言ってないけど、今の私には自然の回復よりもガディアスの殲滅のほうが大切。今の私にはザリガニマンよりもエーユーフォーの方が大切なの」
「エーユーフォー……まさか、まもるのあの姿のことか」
「そう、でも。まもるにも、良奈ちゃんにも大和くんにも、ザリガニマンは捨ててほしくなかった……」
すると、そこに守が駆けつけた。
「大和!良奈を離せ!!」
「守。勝ったのはお前だったのか」
すると、地面が突然揺れ始めた。
「地震か!?」
違う。大和の後ろの地面が盛り上がり、そこから巨大な鳥が飛び出した。
機械で出来ているかのような外見の鳥。ユーフォーディスクが二個ついている。両胸に一つづつだ。
「まもる、みどりちゃん、俺の理想いつか必ず理解させてみせるぞ」
大和が良奈の手を引き、良奈とともに鳥の脚にある取手に掴まった。
飛び立とうとする鳥を逃すまいと守が走る。
「良奈!お前は俺と来い!今の大和は危険だ!!」
守が手を伸ばしたが鳥は大和たちをのせ上空へ羽ばたいていった。
「良奈……やっぱり大和を選ぶんだな」
伸ばした手をそっと下ろし、緑の方を向く。
「緑、俺たちの夢は……もう一つになれないのか」
「バレット。帰るよ」
緑はさっさと引き返す。
「お、おい緑!!」
守も緑を追いかける形でこの草原を後にした。
~つづく~
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