その5 『絶望は希望、エーユーフォー対ヘビースネーク』
ガディアスにはユーフォーディスクが付いたもの、ユーフォーディスクのついてないものがいる。二種類の違いは何なのか。そして、喋るガディアス、喋らないガディアス。
エーユーフォーがこれまで戦ったガディアスは
スパイダーガディアス(ディスク無し、喋らない)
ドラウマケンタウロス(ディスク有り、喋る)
ゼブラディアン(ディスク無し、喋らない)
ザリガディアス(ディスク有り、喋る)
そして、守が縛馬島で出会った頭がプラスドライバーになったトカゲ、大和が呼び出した巨大な鳥。しかし、この二体はただのガディアスとは違うようだった。
1-- ドラゴン族封印の壺
地域の組合主催のキャンプ。この山でもそれが行われていた。
キャンプ場につき、夕飯までのあいだ、フリータイムだ。子供たちが集まる。
その中でも特に仲が良かったのが彼ら、ゆうたとしょうすけだった。二人はこっそりとキャンプを抜け出し、探検に出ていた。ゆうたが言う。
「くぅー!たまんねえよなあ、このジャングルを探検できるなんて」
こどもたちにとったら山はジャングル探検ごっこに最適なのだ。とくに藤岡弘、ファンのゆうたは探検が大好きなのだ。
「いてっ!」
しょうすけが腕を抑える。
「どうしたんだ?みせてみろ!」
しょうすけの腕をまくり、ゆうたが確認する。どうやら、木の枝で切ってしまったようだ。しかし、ゆうた曰く。傷は男の勲章。探検をこなし、一人前の男に近づいた証なのだとか。
二人はずんずんと奥に進んでゆく、深い茂みを抜けると、そこはゴルフ場だった。どうやら探検しているうちに迷い込んでしまったようだ。
そういえば、このあたりに建造中のゴルフ場があると聞いたことがあった。二人の作業員がコースのチェックをしているようだった。茂みに隠れ、その様子を見る二人。
「みつからないように突破するぞ」
と、ゆうた。しょうすけが頷く。
すると、ゆうたたちとは対面の茂みから突然巨大な蛇が飛び出した。いや、蛇ではない。
大きな蛇の頭をもった怪人だ。蛇の胴体が長い首となり、鎧を着込んだ様な形の人間の胴体、そして蛇の尻尾。
「な、なんだよあれ!」
と、ゆうた
「や、やばそうだよ」
蛇怪人は作業員に襲いかかる。作業員の一人に噛み付くと、蛇怪人はまたどこかへ歩いて消えた。噛まれた作業員は苦しみ、喉元をおさえ、倒れた。駆け寄るもう一人の作業員。すると、倒れていた作業員の顔の皮がパリパリと剥がれて行き、蛇の顔となり、首の皮も剥がれ、蛇のように伸びた。
「う、うわああああ!!」
もう一人の作業員は驚き腰をぬかし、その場を動けない。その作業員は蛇怪人と化した作業員に噛まれ、同じ様に倒れて、怪人になった。
「やばい、探検は中止だ!みんなに知らせるぞ!!」
と、ゆうた
「で、でも道がわからないよ!」
「ふっ、こんなときのためにこのトランプを道に落としてきたのさ!探検の基本だぜ!」
ゆうたの落としたトランプを頼りに、二人はキャンプ場までもどった。しかしそこは、蛇怪人たちであふれかえっていた。
「そ、そ、そ、そん、な……」
しょうすけがうろたえていると、隣のゆうたは呆然としていた。
「ゆうた、どうした?」
しょうすけがきくと、ゆうたは、震える指を一体の蛇怪人に向けた。
「あ、あれ……姉ちゃんだ……」
ゆうたの姉の服を着た怪人。キャンプ場の入り口で佇んでいると、他の怪人に気付かれた。
「や、やばい、逃げよう」
「か、母さんも!父さんも……」
「ゆうた……」
「くそおおお!」
二人は逃げ出すしかなかった。走り疲れ、川沿いで休んでいた。
「け、携帯は?」
ゆうたはしょうすけに聞く。
「もってないよ!探検に携帯なんていらない、野生の勘を頼れって言ったのはゆうただろ」
「そ、そうだった。さ、さすが俺。ぬかりないぜ」
そう言ったあと、ゆうたはだまって川の流れをみつめていた。そして。
「しょうすけ……お前のかーちゃんやとーちゃんは?」
「わからなかった……でもきっと……」
「あ、ああ……」
2-- 緑の過去
守たちガディアス対策本部十文字班にも、具狗松山にガディアスが出たという知らせは来た。警察に通報が入ると、それが日本政府を介し、ガディアス対策本部に伝わるのだ。
対策本部の白いバンが、山路を登っていく。ガタガタ揺れる車内。
「相手はどんなガディアスなんだ?」
守が良樹に聞く。
「さあな、通報では蛇の化け物ってことしかわからなかったみたいだぜ。通報者と合流できればいいんだが」
「んー、まあこの俺にかかればどんな奴でもイチコロだ。一撃で殺すでイチコロな」
「お前が来る前は俺たちだけでやってたんだ。今までの成果が自分一人の力と思うな」
「おいおい、大船に乗った気持ちでいろって事だぜ」
「ああ、死なない程度に暴れて来い」
バンが止まる。しかし周りには何もないようにみえる。
「おい、シンジ、なんで止まった」
後ろから運転席に乗り出す守
「よく見ろ、囲まれてる」
運転席のシンジが指を指す方向を見ると木々に隠れた暗闇に赤く光る二つの点がある。
「目!?」
すると、次々と周りの茂みから人間の頭が蛇になった怪人があらわれた。首が長い蛇の胴体になり、その先に蛇の顔。そして、尻尾も蛇。しかし、胴体の人間の部分、どれも普通の人間のような服装だ。
「あれがガディアスなのか?」
十文字と良樹は対ガディアス銃を、取り出し、車から飛び出した。そして守も。
「シンジ、みどりのことは頼んだぜ」
赤のユーフォーディスクを装着し、守も車の外に出た。
良樹が対ガディアス因子弾を蛇怪人に打ち込むと、蛇怪人は悲鳴をあげ、蛇の部分だけが気化するように消え、首から上のない人間の死体になり、倒れた。
「な、なんだって……これ、人間なのか!?」
と、良樹
「オーガのようなものかもしれん。元々は人間だったガディアス」
十文字はいたって冷静に答えた。そして対ガディアス因子弾で次々と蛇怪人を倒していく十文字。死体の上に死体が倒れる。
「オーガって縛馬島に出た白髪の鬼か。やつと同じならこいつらもやっぱもとは人間なのかな」
と、守
「調査の必要がある」
もう蛇怪人は来ない。倒し切ったようだ。
「よし、キャンプ場を目指そう。シンジとみどりはここで待っててくれ。俺たちで行く」
守が外から運転席のシンジに向かい言った。
「あ、ああ。足を怪我した俺じゃあ文字通り足を引っ張る。ここでまつぜ、何かあったら通信をくれ」
「よし、行こう。十文字さん、良樹」
矢印の形の看板がキャンプ場までの道を示している。示された道を行く三人。
山道の途中の木に子供がもたれ、座り込んでいた。
「君、どうした!」
十文字が駆け寄る。その後ろに周りを警戒する良樹と守。その少年は、ゆうただった。しょうすけはどこに行ったのだろうか。
「た、たすけて!俺のお父さんとお母さんとねーちゃんが!蛇にされたんだ!」
「家族が……やっぱあれは」
と、守
土を踏む足跡が近づいてくる。
十文字はゆうたをかばうように前に出た。良樹は銃を構える。山肌にかくれ、見えなかった姿だったが、現れたのはやはり、蛇怪人だった。小柄な蛇怪人、子供だ。ゆうたと同じくらいか。
十文字の背中越しに怪人を見るゆうた。
「あの服、しょうすけだ!!」
怪人はこちらへ近づいてくる。
十文字はゆうたをかかえた。
「この少年はまかせろ。良樹、大地くん、怪人は頼んだ」
ゆうたをかかえたまま走り出す十文字。しょうすけの名を叫び続けるゆうたの声が小さくなっていく。十分に離れたところで、良樹は銃の引き金をひいた。対ガディカス因子弾がうちこまれ、蛇の部分だけ気化し、ただの死体となった。
「助ける方法はなかったのか?」
と、守
「ああ、首から上がなくなってるだろ。これじゃあ怪人になった時点で人間としては死んだようなもんだ」
「くそ!ガディカスめ、許せん!!」
守と良樹はさらに奥を目指す。すると、突如上から蛇怪人が襲いかかってきた。守はふっとばされ、山道からはずれ、木々の中へと飛ばされた。怪人はそのまま道を塞いでいる。しかしこの怪人。いままでのと違う。
鎧のようになった胴体に太く発達した両腕、手足の爪は鉤爪のように鋭い。ガディカス因子弾を打ち込みひるませ、守のもとへ駆け寄る良樹。
「大丈夫か守!」
「あ、ああ、かすり傷だ。だがあいつ、対因子弾を打ち込んでも、消滅しない」
「あいつが全ての元凶か!」
「良樹!お前は先に行け、噛まれたらお前を殺すことになってしまうだろうから」
相手が蛇なので噛まれたらヤバイことは本能的にわかる。
「あ、ああ、ここはエーユーフォーに任せるぜ」
「ああ、変身!」
緑とシンジのもとには、十文字が合流していた。ゆうたを抱きかかえた十文字が片手で車の扉をあけ、ゆうたを車内に座らせた。
「この子は、もしかして、生き残りですか!?」
と、シンジ
「そうだ、家族が……ガディアスにやられたらしい」
その言葉に一番目を引かせたのは緑だった。
「家族が……ガディアスに……」
「そう、お前と同じ……」
「そう、また……同じ様な思いをする子が……」
緑は思い出していた。大学生になって間もないある日、家族と出かけたその先で、ガディアスと出くわし、家族が皆殺しにされたこと。残ったのは自分と、留守番をしていた飼い犬のみだった。それから緑は家族を殺した怪人について調べ、ガディアス対策本部へと入隊した。緑がガディアスと出くわした瞬間から、UMAが好きな守と再開するのは必然的に決まっていたのかもしれない。
「お、俺のかーちゃんや、とーちゃんを!ねーちゃんを、もとに戻してくれるんだよな!」
十文字の腕から降ろされたゆうたが、十文字に聞いた。
「きみの家族は……」
口ごもってしまう十文字、なにも言えないシンジ。しかし緑は
「早いうちに……本当のこと言ってあげて。希望が絶望にかわったときが、一番辛いの」
それならいっそ、最初から絶望のほうがいいのだ。緑はそう言った。
3-- 燃え上がる不死鳥バーディアン
エーユーフォーにフォトンエヴォルブ(進化変身)した守は鎧の蛇怪人と戦っていた。崖っぷちに追い詰められた守。下は激流の川。隣の崖からは滝が流れている。
「ちっ、これ以上てこずれないな!」
一気に攻めようと接近した。しかし、硬い鎧はパンチを弾き、その重さから、逆にこっちの手首がいかれてしまいそうだ。
「ちっ、ヘビースネークめ!」
また怪人に勝手に名前を付ける守。その鋼鉄のような鎧を砕こうと全力をこめて放ったパンチ。だがそれは蛇怪人の両手で受け止められた。そして、長い首をのばし、守の腕に噛み付いた。
「し、しまった!俺も、あの怪人の仲間入りかよ」
怪人は守をつきはなし、地面に投げた。仰向けに倒れるエーユーフォー。
怪人に変化する気配はない。だが、体が異常に重く、息も苦しい。
「こ、これは……毒か。そ、そうかエーユーフォーはガディアス因子の力で進化したもの……ユーフォーガディアスの因子と……ヘビースネークの因子が、反発しあって、アレルギーみてーになってしまったわけだ」
あくまで仮説。力を振り絞り立ち上がろうとする守、体をひっくりかえし、両手両足を地につけたが、四つん這いのその状態から、蛇怪人の鉤爪が背中に食い込んできた。
「ぎゃおおおお」
蛇怪人はしてやったとばかりに雄叫びをあげた。四つん這いだった守は地面に這いつくばるかたちにおしつけられ、爪を背中にめり込ませた蛇怪人が、そのまま上に乗っている。
毒のせいで振り払うこともできない。いつもなら、黄色のディスクに取り替えてパワーで振り払ってやるところなのに。
そして、崖っぷちに追い詰められた絶望的なこの状況。
「そ、そうだ崖っぷち……崖っぷちは絶望、だけど、逆転の希望にできる!」
守は上にガディアスを乗せたまま必死に這い蹲り、崖を目指す。体を動かすごとに爪がくいこみ、痛みに耐え苦しさに耐えあふれ出る血を地面にこぼしながら。
そして、崖のヘリに手をかけた。
「掴み取ったぜ……希望っ!!」
腕の力で崖から飛び降りた。そのまま落下し激流の川に飛び込んだ。衝撃でヘビースネークの爪はエーユーフォーから離れた。そして、かすむ視界の中、確実にヘビースネークを捉える守。
「助かった、エーユーフォーの目は水中でも問題ない!」
流されながらも、足から出したキャトルミューティレーション光線がヘビースネークを捉えた。キャトルミューティレーションにより、守の方へ引き込まれるヘビースネーク。そして、水の流れを利用し、そのままキックを当てた。
「名付けて、キャトルミューティレイト水攻めキック!」
ヘビースネークは爆散、爆発により散った水が雨のように降り注ぎ、虹を作っていた。川辺に流れ着いた守にもそれは見えていた。
「希望の虹だな」
さっきの爆発をききつけ、仲間が来てくれるはず。守はそのまま川辺に横たわった。変身を解く気力すらない。そのまま空を見上げる。
「ああ……エーユーフォーの欠点は、まぶたが無いから目を閉じれないことかな……眠りたくてもまぶしいぜ……しかし、綺麗な空だな」
次第に毒が抜けていくのが感じられた。さすがエーユーフォー。すさまじい抵抗力だ。
そのまま空を見上げていると、足音がきこえてきた。味方か?いや、妙に重たい足音だ。鎧を着込んだような重たい足音。徐々に近づいてくる。
さすがに背中は痛むがトカゲガディアスの回復力で傷は塞がりつつある。血は止まってる。戦える。守は起き上がり、足音のする方向を見る。
歩いてくるのは、やはりガディアスだった。だがさっきの蛇怪人ではない。左胸にユーフォーディスクがつき、妙なベルトをしている。箱の横方向に割れ目が入りそこ箱の上半分が左側にスライドしたようになったバックル。
その姿は人に大きな鳥の羽、足は巨大な爪、前後に二本づつ計4本。もちろんその足が二本。顔は獲物を狙う猛禽類の様な鋭い目つきのマスク。
「ユーフォーディスク付きの……ガディアスか」
すると、ガディアスが。
「みつけたぞ、ギアドライバーを付けたガディアス。大和の邪魔をすると言うならば始末させてもらう」
喋った。喋るガディアスだ。
「お前も大和のペットか。哀れなものだな、操り人形のまま死んでゆくとは」
「貴様に大和の何がわかるという。俺たちは、大和を信じて、あいつが地球の自然を取り戻してくれることを信じて戦っている!」
翼に炎が灯り、鳥のガディアスは飛び上がった。空を飛んだ。守は胸の赤いディスクを銃へと付け替え、火の玉の弾丸で攻撃する。だが自在に空を飛ぶ敵は軽々と攻撃をかわす。
只でさえ、連戦で体がふらつき、狙いが定まらないというのに、空を飛ぶ敵を捉えることができるのか。
~つづく~
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