その2『都心決闘、AUFO対ドラウマケンタウロス』


--1 旧友との再会、東京へ


 縛馬島から小型挺で脱出した守、シンジ、十文字。

シンジが操縦し、船内に無造作に置かれた荷物、そして向かい合って座る守と十文字。フルスピードで飛ばす船の風を受けながら話す二人、風の音で聞こえづらいので怒鳴りぎみだ。


「で、この船どこ向かってんの?」


「東京だ。そこで仲間と合流する」


「他の生存者がいるかいないか、そこでわかるんだな?」


「そうだ。島はくまなく探されたはずだ。怪物に襲われるか、怪物になるかしていなければいるはずだ」


「怪物になる……ってことは、あの怪物はもともと人間だったのか!?」


「全てがそうではないはずだ。ただ、遺伝子的にはガディアスも人類なのだから、人ではある」


「な、なに!?お、おれは怪物って言われたから戦ったんだぞ!」


「しかし、戦わなければ生き残れなかった」


「くっ……」


「この先、君がフォトンベルトを使うかどうかは君の判断にまかせる。ただ1つ言えることは、ガディアスは人類の敵だということだ」


「ああ……そうだよな……あんたたちもわかって戦ってたんだし」


「わかってくれてありがたい」


「ああ、疲れたから寝るぜ」


「そうだな、私はそろそろシンジと運転を代わろう」


「そうか」


 守は倒れるように横になり、そのまま眠りについた。こんな轟音の船上でもすぐに寝られるほどの疲労だったようだ。

 気がつくと逆光の中、二人が守の前に荷物を抱え立っていた。船の激しい揺れもなくなっている。


「ついたか?」

 腕で体をおこし、背伸びをする守。


「ああ、仲間が近くにきているはずだ」


 港へ上陸すると、白いバンが止まっていた。あれがガディアス対策本部の仲間の車のようだ。

 バンの後ろのトビラを開き、中にはいると、なにやら機械が沢山おかれている。そして、中から誰かでてきた……その人物をみた瞬間、守の疲れも吹き飛ぶ。それはよく知る人物だったのだ。


「み、みどり!森野緑!!」


「まもる!?な、なんで!」


 お互いにびっくりだ。守と同じ年齢くらいの若い女。お互い大阪出身なのだが、なぜ東京に?それ以前になぜガディアス対策本部に。


「知り合いなのか、みどりちゃん?」

と、シンジ


「う、うん。高校の同級生」


 みどりは守の腰に巻かれたギアドライバーに気が付いた。


「え、な、なんで守がギアドライバーを」


「ああ、化け物の群れを突破するには使うしかなかったんだよ。みどりこそなんでこんなとこに」


「ち、ちょっとまってよ。ってことは、まもるがエーユーフォーになったってこと!?」


……


「エーユーフォー???」


守、十文字、シンジは声をあわせた。エーユーフォーとはなんぞやと。

すると、運転席から

「博士が研究してたユーフォーのガディアスだよ。フォトンベルトは装着者の遺伝子をユーフォーガディアスと融合するように進化させる。みどりはその融合進化した姿をエーユーフォーと呼んでる」


「ん、あいつは?」

 守が聞く


「自己紹介が遅れたな。おまえは、まもるっていうんだよな。俺は山田良樹よしきだ」

 あまり守に好印象をもってなさそうな対応だ。こいつも若い。

「おう、大地守だ。よろしくな」

 そんな態度をとられたので守もパッと挨拶するだけ。そして


「みどり、相変わらずヒーロー好きなようだな」

と、守


「うん、それに、本当に倒さないといけない相手もできたしね」


 高校のころ、守はなりゆきから大和川自然保存会という同好会に入っていた。その同好会で守と緑は出会った。大和川自然保存会というだけあって、大和川の自然を守るための同好会だった。


「大和川のことを考えていたみどりが、なんで怪物退治なんか?」


「これも地球の環境を守ることでしょ?」


「怪物が人を襲うからか」


「……ガディアスは地球の環境が乱れている地域に多く出現するのよ。東京みたいに人類の発展には仕方がない場所にはあまり出ない。けど、リゾート地やゴルフ場みたいに、無闇に自然が破壊された場所にはガディアスがあらわれる。そして、人を皆殺しにしたあとにどこかへ消えて行く」


「な、なに……」


「そして、ガディアスはいままで、全てが縛馬島からやってきているの」


「なに!」


「その調査を日本政府直々にいただいたんだけど……」


 緑が言葉につまると十文字が


「最悪のタイミングだった」


「最悪のタイミング……」


「ちょうど、やつらが本格的に動き出した日だったのだ」


守が

「ああ、俺たちが縛馬島に行ったタイミングも最悪のタイミングだったってことか。生存者は?めぐたちはどこにいるかわかるか?」


「いま問い合わせている、じきにわかる」


 すると、奥からトカゲが飛び出してきて緑にしがみついた。わりと大きめなトカゲで人の手二つ分くらいはある。

「あ、バレット、さみしかったの?」


 バレットと呼ばれるトカゲはみどりにしがみつき、守の方をみた。


「なんだよ」

と、守


「この子もフォトンベルトで進化するのよ。拳銃にね」


「と、トカゲが!?」




--2 言葉を話す怪人-エンプティ-


 良樹の携帯電話がなった。運転席で電話に出る。

「……え、なに!?……わかった!!」


電話を切る


「なにがあった!?」

十文字が聞いた


「東京に……ガディアスが出た!」


「と、東京にだと!」


 守たちは休むまもなく現場へ急行。民家のならぶ路地。警官や地元の有志が集い避難は済んでいるようだ。

 ただ、ガディアスは破壊活動の気配はなく、ゆっくりと歩いている。

 それは騎士の鎧を纏ったケンタウロス、背中から大きなコウモリのような翼、そして龍のような顔。

 ガディアスの前に武装したガディアス対策本部のメンバーたちが立ちふさがった。三人、シンジ、十文字、良樹が注射針のような物が先端についた銃を構える。バンの中から守が見守る。

「あれは、縛馬島の鬼たちを突破するときにつかってた対ガディアス因子弾か」

 その様子を見てガディアスが腰の剣を抜いた。

「お前たちも地球環境を乱す者か。ならば斬る」

 ガディアスが喋った。

「ガディアスが喋った!?」


 すると、良樹が気づいた。

「みてくれ!あのガディアス、胸にユーフォーディスクがついてるぞ!」


ガディアスの胸には灰色のユーフォーディスクが装着されていた。エーユーフォーの胸に付けるディスクの色違いだ。


 剣を抜いたガディアスはこちらへ突進してくる。

「撃て!」

 十文字の声とともに対ガディアス因子弾が発射される。だが、全て剣で横なぎに弾かれた。

「まずいぞ!避けろ!!」

三人は横跳びで突進してくるガディアスの攻撃をよけた。だが、ガディアスの剣はシンジの右足を捉えていた。

「ぐわあああっ」

 シンジの右足ふくらはぎから血が吹き出す。

 それをみて守はバンから飛び出した。倒れこむシンジの方に走りながらフォトンベルトに赤のユーフォーディスクをセット。

「フォトンエヴォルブ!!」

 エーユーフォーへと進化した守はスピードを緩めることなく突っ走り、そのままシンジを抱え、十文字と良樹が隠れる物陰へジャンプした。

「あとは俺がやる。ユーフォーディスク付きにはユーフォーディスク付きだ!」


「ああ、シンジは我々がバンまで連れて帰る!」


 守は剣を構える敵の前に出た。

「こっちには武器はないのかよー」

 敵に目線をやりながら腰を探っていたら、前に進化した時にはなかった、物が腰についていた。

「これは、銃か!」

 下半身が馬の分、背が高く、武器まで持った相手。銃ならば攻撃は届く。

「よし!勝てるはずだ!!」


 だが、トリガーを引いても弾丸は発射されない。

「ま、まさか、弾がないのか!」

 いくら引き金を引いても反応はない。相手は待ってはくれない。こちらへ走ってくる。こうなれば素手で戦うしかない。相手にパンチを叩き込むために高く飛ぶ守。だが、剣ではじき返された。

「ぐわっ!!」

 ふっとばされ地面に転がる。

「くっ!」

 膝をつき、なんとか起き上がる。

「お前、ガディアスでありながらなぜ、財閥以外の人間の味方をする」

と、ガディアス

「え、財閥!?ガディアスの裏に組織があるのか!」


「そうか、なにも知らぬか、ならば話すことはない、お前たちはここで全員始末しよう」


「ま、まて!財閥ってなんだ!?教えろ!」


 だが、ガディアスはそのまま剣を振り上げ走ってくる。


「くそっ!こっちが攻撃しようと飛んだら剣ではじかれる!!飛び道具、銃さえつかえれば!」


 バンの中で緑が対ガディアス因子弾のはいったケースを用意している。バンから飛び出し、民家の影に隠れる十文字へと合流。

「ここに5発あるわ!」


「わかった。私と山田でなんとかする」


 守は相手の剣をなんとか両手で受け止めていた。

「まさに、真剣白刃取り!」

しかし、そのまま振り回される。なんという怪力なのだろうか、ガディアスは両手で剣を持ち、剣にしがみつく守をそのままぶんぶんと振り回しているのだ。

 しがみついているからじわじわとめり込んでくる刃。そのまま電柱や民家の塀に叩きつけられる。そろそろ限界だ。

 しかし、その時、剣と共に守は投げ出された。ガディアスの手から剣がすっぽ抜けたのだ。そのまま壁に打ち付けられたが、剣は奪い取った。

 なぜガディアスは剣を離したのだろうか。ガディアスは前足の両膝をつき、倒れこみそうになっていた。

「まもるに気を取られてるうちに、俺が対ガディアス因子弾を撃ち込んだのさ!」

 そう言い、ガディアスの背後の塀の上に立っていたのは山田良樹。

「よしき!助かったぜ、あとはこのまま、パンチをぶち込む!」


 守は腕のUFOを回した。

「いくぞ、キャトルミューティレイトパンチだ!」



--3 弾丸のトカゲ、真のエーユーフォー



 エーユーフォーとなった守の右手から光線が出る。引き寄せられるガディアス。UFOのキャトルミューティレイションの要領だ。

 守の真ん前まで引き寄せられたガディアス。守はそのガディアスに向かい全力でパンチを放った。

 全力で放ったパンチ、だがその拳はガディアスに受け止められた。守の拳は大きなガディアスの手につつまれ、びくともしない。

「だ、だめだ!万力で挟まれたように動かせないぞ!!」

 ガディアスはそのまま守の傍らに落ちている自分の剣を取った。拳を取られた守はそのまま拳を持ち上げられ、ガディアスが立ち上がると背の高いガディアスはそのまま守を持ち上げた。地に足が着かない守は足をバタつかせたり胴体をひねってみたりして対抗する。

「すぐ楽にしてやる」


 ガディアスは剣を守の腹に突き刺した。銀色の剣先は胴体を貫通し、背中から大量の赤い血とともに突き出た。

 ピクリとも動かなくなった守。ガディアスは剣を引き抜き、丁寧に守を地面に寝かせ、胸の前で十字を切った。

 そして、後ろの良樹に目線を映した。

 良樹は銃を構える。だが、発射しても剣で弾かれることは分かっている。

 十文字も物陰からチャンスを伺うが、隙をみつけられない。

 バンの中ではシンジを手当てする緑。少し落ち着いたので、一息をつくと、気付いた。バレットがどこにもいない。

 対ガディアス因子弾が効いているのかガディアスの足取りは重い。ゆっくりと良樹に近づくガディアス。すると、良樹のもとに向かうガディアスの背後から声。

「ふう、やっと俺の出番か」


ガディアスが振り向くと、守が立ち上がっていた。

 ガディアスの影に隠れて見えなかったので良樹も驚いた。

「ま、まもる!大丈夫なのか!腹に剣刺されたんだぞ」


「いや、守は大丈夫じゃない。俺は大丈夫だけどな」

と、守。良樹にも十文字にもよくわからないことを言う。


「守の意識がなくなってくれたおかげで、俺がこの体を乗っとれた」

 そう言い、腰の銃を手に取る。

「ドラゴンか馬か人間か、よくわからないやつ、緑の大切な人を傷つけた。不愉快だ、潰してやる」


守は胸のユーフォーディスクをとり、銃の上部に取り付けた。

「神に祈るなら今の内だ、さあ、地獄で後悔しな!」

 銃からドッジボールサイズの炎の弾が撃ち出された。ガディアスは剣で弾く、その隙に十文字が対ガディアス因子弾を打ち込んだ。

「うおおおおおお!!」


 守は足のUFOを回した。

「キャトルミューティレイトキックだ!地獄で後悔するんだな」

 飛び上がり、左足から出したキャトルミューティレイト光線で浮遊し、右足から出した同じ光線でガディアスを捉えた。

 だが、ガディアスは浮き上がらない。

「あ、あれ?、ああ、キャトルミューティレイトパンチの後だとやっぱキツイか。命拾いしたな、ドラウマケンタウロス!」


 ガディアスは最後の力を振り絞るように全力で走り、遥か彼方へ消えていった。

「逃げたか」


 良樹と十文字のまつとこへ着地。良樹がかけよる。


「まもる!大丈夫だったのか!?」


「ああ、だが俺は守じゃない」


「え!?」


「お前たちがバレットって呼んでたトカゲさ。こっそり守について行った俺がフォトンベルトにより、守とともに進化し、守が瀕死の重傷を負ったとき、意識がなくなった守から体を奪い取った」


「な、なんだと!ガディアスが人間の体を乗っ取ったのか!」


「傷はトカゲの再生能力で治癒している。だが、守はまだ目覚めない、体はしばらくいただいておくぜ」


十文字が言う

「大地くんの体をつかい、何をする気だ?」


「俺はガディアスだからな。自然を破壊する人類を抹殺する」


「ならば」


 対ガディアス因子弾を装填した銃をかまえる十文字。


「おっと、そんなもん撃ち込んだら守がどうなってもしらないぜ?」


「くっ!」


「ふっ、ちなみに、いまのはジョークだぜ」


 守をのっとったバレット。それに動かされた守の体はギアドライバーのギアを左に回した。すると、エーユーフォーだった姿が人間の姿に戻った。だが、腰についた銃はそのまま。


「お前たちがバレットおれを飼ってたんだからわかるだろ?俺は緑のことが好きだ。だから、ガディアスに立ち向かう緑のことを守りたかったんだよ。で、こんな人間に任せておけないから、この人間がガディアスに殺されるのを待っていた」


「お、おまえ」

と、良樹


「良樹、お前になら気持ちはわかるんじゃないか?」


良樹はだまる。


「バンにもどる」


 そのままバンにもどっていく守。守ではなくバレットなのだが。それに良樹と十文字の二人もついていく。

 バンの中ではみどりと、みどりの手当てで体をおこせるようになったシンジが待っていた。

「守、大丈夫だった?」

と、みどり


「ああ」


「よかった。ところで、バレットみなかった?」


「バレットか、バレットは俺だ」


 守は腰につけた銃を手に取り言った。


「それは、バレットがガディアス化した姿!?どうして」


 良樹と十文字は守を乗っ取ったバレットをひっこめ、みどりにショックが少ないように説明した。


~つづく~

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