戦う宇宙人エーユーフォー

永遠の闇纏いし堕天使 田代セフィロス

その1 『最悪のタイミング、AUFO対スパイダーガディアス』



--1 最悪の運命-ドライバーギア-


 うま……いや、ユーマ。UMAと呼ばれる生物。それは未確認生命体のことだ。その未確認生命体をみつけだそうという大学生のサークル『UMA探索隊』は、近頃謎の生物が確認されていると言われる島、縛馬島(しばるばじま)へ来ていた。

 船着き場のまわりは民家が立ち並んでいるがその奥はまだらにあつまる木の群生。昼間なのに奥は見えない森だ。

 男二人に女二人の四人の探索隊員。そのもとへ島民と思われる老婦人が近寄ってきた。


「お前さんらも森の妖怪を狙ってきたのかい?」


「え、あ、はい」

 探索隊の青年が答えた。


「悪いことは言わん、帰ったほうがええ」


「え、なんで?」


「以前調査に来た者共も、森に入ったきり帰ってこんのじゃよ」


「……は、はい。ご忠告ありがとうございます」


 四人とも老婦人に一礼をしながらも心のなかでは「だから来たんだよ」と思っていた。


 ちなみに目的はもうひとつあるのだ。そちらは大学生らしく、青春そのもの。そう、恋である。


 メンバーの中の大地守と天野めぐみは交際中なのだが、問題なのは残り二人。天海魚太と山田美樹。


 大地守。だいちまもる。宇宙人を信じる男。大学に入るなりミステリー研究サークルに入る。そこでめぐみと知り合い付き合い始めた。めぐみはUMAに興味をもっており、守はそれに付き合う形でUMA探索隊に入った。

 天海魚太。あまみうおたと読む。こいつは美樹が好きだったので美樹と同じUMA探索隊に入った。それを知ってるめぐみと守は、この恋を後押しするためにこの調査を計画したのだ。


 この島唯一の旅館『はな』。離島で宿泊代は安く大阪出身の探索隊らは余裕で男子部屋と女子部屋の二部屋を借りた。男子部屋では窓際に小さなテーブルを挟み、向かい合いジュースを飲む守と魚太。窓のむこうは森。空は明るいのに地面は暗いという異様な風景をみて、開いた窓からの風をうけながら語り合う二人。


「……で、美樹とのことなんだが」

会話の最中に唐突に守が話題を変えた。


「あ、ああ!この旅の最大の目的だった!」

 魚太にとってはUMAよりも美樹なのだ。


「最大の目的はUMAだろうが!この島に現れると言われる殺人モンスター!」


「そんなんいないだろおよ。この森の雰囲気がそんな都市伝説ならぬ島伝説を生んだんだろうよ」


 美樹を追って入隊しただけの魚太はUMAにはさほど興味はない。


「お前なあ、UMA探索に協力するってから、俺とめぐもお前に協力してやろうってことになったんだぜ?」


「もちろん協力はするよ!ワハハハハ」


 こいつ、絶対ほんきじゃない。だが魚太は守にとって大学に入って初めての友達。こんなやつだとはわかっている、適当なことを言うが友達思いの熱い奴だ。UMAは信じていないが協力する気だけはあるのだろう。


「で、計画なんだがな。UMAを探すのは二班にわかれようと思ってるんだ」

と、守


「ふむふむ」


「本当に殺人モンスターが出たときのために班に男は必要だろ?すると必然的に男女カップリングになる」


「おお!」


「俺とめぐは付き合ってるから同じ班。これも必然的。すると余った二人が組むのも必然!

つまり、手分けをして探すというのは、お前と美樹を自然な形で二人きりにできるということだ」


「策士だな」


「物事は理論的にな」


 そして、いざ探索の時!目の前には暗闇の森。守とめぐみ、魚太と美樹にわかれ、それぞれ男子がトランシーバーをもった。


「殺人モンスターがでたらこれで連絡!あと、他にも暗い森の中だから気を付けろよ」

と、守


 二組とも森の奥を進んでいた。守はめぐみにヘルメットを手渡そうとするが髪がみだれると言い突き返され、ヘルメットはトランシーバー入れとなって守が持っている。

 夜ではないが薄暗いので懐中電灯をつけている。不気味な空気が体にまとわりつく、一歩進むたびに枯れ葉のふまれるおとが響き、それもまた不気味さに拍車をかける。


「めぐ、ころぶなよ」


「大丈夫よー、大切にしてくれるのは嬉しいけど子供扱いしないでよ」


「ははは、でも心配なんだよー」


「もー、守ったらあ。でもあたしも守をまもるからね!」


めぐみの手元にキラっと光が反射した。守がプレゼントした指輪だ。大学生のくせに生意気にも女に指輪なぞ贈っているのだ。贈られためぐみもすごく喜び、常につけている。いま一番大切なものらしい。


「えへへへへ」


「あはははは」


 不気味さが手伝い逆に二人はお互いの距離を縮めていた。いつしかぴったり、寄り添い、歩いていた。すると、ガサッと草むらで何かが動く音がした。


「な、なんだ!?漫画なら熊があらわれるパターンだが」


 二人は足を止め、守はめぐみの肩を引き寄せていた。そして恐る恐る懐中電灯の光を音のする方向へ向けた。恐る恐るだが、震えはなく、一気に向けた。動作的には恐る恐るという表現は間違いだが心の中では、殺人モンスターだったらどうしよう、俺はめぐを守りきれるのかとびくびくだったのだ。

 しかし、音のする方向には誰もいなかった。目の前には薄暗い草村に覆われた地面と木々がみえるだけだった。

「なんだよ、小動物かなにかかな。」




--2 宇宙人と殺人モンスター




 ホッとして懐中電灯の光を足下にもどすと目の前にズドンと重量感のあるものが落下したおとがした。金属の塊のようだ。

 そこにいたのは人より一回りは大きいだろう怪物だった、だが手足は鉄棒のように細い。間違いない殺人モンスターだ。その姿は巨大なネジ回し、プラスドライバーから腕がはえ、その先は手ではなく巨大な歯車。ドライバーの後ろは胴体になり胴体からは足と尻尾がはえた、トカゲのような怪物。だが二足歩行!薄暗い茂みに大きな陰がたたずむ。そして両腕の巨大歯車を、高く上げた。


「きゃぁぁぁぁーっ」


 悲鳴をあげるめぐみ、守はめぐみの手を引き走る。逃げなくては!めぐみだけは守るために。

 追われる覚悟満々で走り続けたが振り返ってもドライバートカゲはいなかった。思いの外足が遅いのか?たしかに、体から伸びる四肢は貧弱な鉄パイプのようだったが。一度足を止める。そしてトランシーバーを手に取り。


「魚太!UMAだ!でも呑気に観察なんかしてられなさそうな雰囲気だ、森から出るぞ!」


 しかし、返事はない。ザーっというノイズ音だけがスピーカーから流れてくる。


「こんなときに通じないか……、めぐ、俺たちだけでも脱出だ!そのあと俺が二人をたすけに行く」


「う、うん、二人とも無事だといいけど」


 すると、突然上からさっきのドライバートカゲが飛んできた。ドシンと音をたて着地。ふまれたら潰されるところだった。


「くっ!」

 守はめぐみをかばうように前に出る。ドライバートカゲのくちばしになっているネジを回す部分が激しく回転しだした。金属が擦れるおとと空気が振動する音が鳴り響く。 守はめぐみの耳元に口をもっていき、手をそえ

「お前は思いっきりはしれ!」


守はヘルメットをめぐみに手渡した。


「ま、守は!?」


「いいからいけ!また会おう、先に森でてろ!」


 ドライバートカゲがゆっくりと、いっぽづつ近づいてくる。体が重いから素早く動けないのか?

 この先にいかせてはならない。せめてめぐみが安全な場所まで逃げ切るまでは時間をかせぐ。そしてどうにかして自分も逃げ切る。それが守の考え。

 めぐみは守に渡されたヘルメットをかかえ森の中をはしっていた。しかし方角がわからない。おそらくこちらだろうと草木をかきわけ森の出口を探す。自分も『守をまもる』と言ったのだから、早く助けを呼ばなくてはならない。

 草木を掻き分けると、人影をみつけた。

「た、助けてください!怪物がでて、知人が襲われてるんです!」

 だがそれはよく見ると人ではなかった。長い白髪に鋭い爪、そして牙。細く色白な体だった。

「な、なに、これ……」


 一方、守は、じりじりとドライバートカゲに距離を詰められていた。

「くそっ、やるしかない!」

 落ちていた小石を拾い思い切りドライバートカゲに向けて投げた。小石は命中し大きな金属に当たる音をたて地面に落ちた。

 ドライバートカゲはびくともしていない。それどころか、その攻撃に反応しくちばしの回転が早くなったような気がする。

 ドライバートカゲは一気に守に飛びかかった。もうだめだ、そう思ったその時、すでにドライバートカゲのくちばしは守の腹を貫通し背中まで突き抜けていた。

 ささった瞬間、回転を止めて、突き刺さった守のことを、頭を振り地面へ落とし叩きつけた。ピクリとも動かなくなった守を捨て、トカゲは森の奥へとゆっくり歩いていった。守るには微かに聞こえていた、遠ざかるドライバートカゲの重い足音が、だが次第にそれは聞こえなくなり、意識は消えていった。


 めぐみは走り疲れ、木の影に隠れ呼吸をととのえていた。さっきの白髪の怪人、他にもたくさんいた。まわりでは白髪怪人たちがめぐみを探している。

 口のまわりが血だらけのやつもいた。人を食べたのだろうか。見つかれば自分もやられる。


「守……たすけて」


 木の影で身を震わせていると前から枯れ葉を踏む足音がした。薄暗いからよく見えないが、ゆっくりこちらへくることはわかる。

逃げようにもまわりは白髪怪人だらけ。


その足音は目の前まできた。ようやくみえるようになったその姿はぜんしんが蟹の甲羅の鎧につつまれた怪人。両手は蟹のハサミになっている。


「あ、ああ……もうだめ……」


 蟹の怪人はそのままハサミでめぐみをバラバラにし、血を撒き散らしながらその体を貪った。

 蟹の怪人がめぐみのほそい四肢を食っていると草むらの影からウェットスーツをきた男が二人現れた。首からはシュノーケルと海中グラスを下げている。

 そのうちの若い男が

「隊長、このガディアス、出来立てですね。まだ救えるかもしれません」

それに答えるのは荷物が入ったカバンを持った三十代半ばの体格のいい男

「うむ、ギアドライバーを使うぞ」

男は荷物の中から箱型の何かをとりだした。はこの右上には穴があき、そこから金属の歯車が半分顔を出している。

 それを若い方に渡すと若い男は蟹型モンスターのもとへ向かった。

「さて、救えることをいのるぜ」

 蟹は手にもっていためぐみの右腕のとれた上半身を投げ捨て、若い男に向かい走った。

 すると、若い男は自分も走り、その勢いのまま向かってくる蟹怪人にドロップキックをかました。

 みぞおちに直撃しうずくまる怪人、その怪人の下っ腹に先程のギアドライバーと呼ばれた箱型の物をくっつけた。

「よし!」


「うおおおおおお」

蟹怪人は叫びをあげ、その姿をだんだんとかえていく。蟹のような鎧は皮膚にかわり、ハサミも手になり、その姿は人間へと変わった。そして、その人間こそが、大地守だった。

 守はそのまま意識を失い倒れた。

「よし、救えた!これで二人目ですよ!」

大声でさっきの隊長に報告する若い男。

「まわりにはオーガがいる、大声は出すな」


「あ、ほんとだ、隠れましょう!」


「ああ、この女性には悪いが亡骸は回収できんか」


 若い男は守をかつぎ、隊長とともに走った。

 しばらく走った二人は洞穴をみつけ、天井に逆さにぶらさがるコウモリをも気にせず火を炊き休んでいた

 暗闇のなか焚き火に照らされる二人と倒れた守。三人で火を囲うように座っていて、モンスターになったせいで服を着てない守には毛布が被さっていた。


「しっかし、隊長、毛布に非常食って、帰れないこと前提じゃないですか」


「ああ、因子に囚われた人々は全て助けなければならない。我々の目的は救助だが、無事に帰れる保証はない」


 現にいま、オーガと呼ばれる白髪の怪人に囲まれている。


「脱出するには、これを使うしかないかもしれん」


そう言い、隊長は荷物の中から帯状の物を取り出した。


「あー!フォトンベルト!それにユーフォーディスク!」


 すると

「うっ、うう……」


 守が目をさまし、ゆっくりと体を上げた。

「あ、よう!」

と、若いのは右手で挨拶


「な、なんなんだおまえら!それに、ここは!!人食いモンスターは!?めぐは!?」

 あたりまえだが、錯乱する守。

「我々は地球環境保護協会ガディアス討伐隊、第一部隊隊長、十文字四郎」


「十文字……ヒーローみたいな名前だ」


「それは一文字だ。そして、こっちの若いのが漏田真司だ」


「どうも、シンジって呼んでよ」


「そ、そうか。俺は大地守、もしかして、あんたたちが助けてくれたのか」


「そう、俺が助けたんだよ」


 すると守は取り乱したようにシンジの肩につかみかかった。

「俺と同じくらいの年の女をみなかったか!髪が背中にかかるくらいまであって!背はちょうどあそこの出っ張りくらいで!」


「落ち着け!」


「先に逃げたんだ!ドライバーの形した怪人に襲われてて!」


「おい、落ち着けって!」


 シンジは守を払いのけた。それと同時に二人は悟った。蟹怪人、つまり守自信にバラバラにされ食われていたのが、守が探している女だと。


「いま俺たちは怪人に囲まれてるんだ!騒いだらコウモリの動きでやつらにばれる!探してる人がいるなら落ち着くんだ!」


「そ、そうか……あ、なんで俺、裸なんだよ!」

 守は騒いで地面に落ちた毛布を拾い上げ大事な部分を隠した。そして一息付き座った。

「俺は大地守……それは言ったか。天王寺大学の学生でUMAサークルってのの活動でここにきた。……仲間があと三人いるんだ」

それに対し隊長の十文字が答える

「他の生存者に関しては別部隊が捜索している。我らはこの姿をみてもらえばわかるよう、海から来た森林部捜索隊。他にもヘリにより農村部へ救助活動に出ている部隊もある」


「なら、森をもっと探してくれ」


「我々の担当区域は探し尽くした。あとは他の隊員と合流するしか生存者を確かめる術はない」


「じ、じゃあ早く!」


「それにはオーガと呼ばれる怪人の群を突破しなくてはならない」


「な、なに!?ドライバートカゲみたいなのがわんさかいるのか」


「そのドライバーの怪人はみていないが、オーガならば他のガディアス……他の怪人ほどではない。プロの格闘家や軍人ならば運が良ければ倒せる」


「な、なに……十分強そうに聞こえるぞ」


「ああ、人間よりは強い。だがガディアスならば勝てる」


そう言い、十文字はギアドライバーを取り出した。


「大地守くん、このベルトを装着するんだ」


ギアドライバーがバックルとなり、ベルトが延びている。


「た、隊長!まさかやるんですか!成功例なんてないんですよね!?」


「突破するにはこれしかない」


 守は無言でギアドライバーを受け取った。そして毛布を上手く下半身にまきつけ、その上からギアドライバーを装着。


「次にこのタスキをまいてくれ」


 さっきのフォトンベルトと呼ばれる帯。

 駅伝のタスキのように巻かせて、ちょうど左胸になにかを装着できそう。


「な、なんだよこれ」


「これは、ガディアス因子に耐性がある人間にしか扱えない。ガディアス因子を呼び起こす装着。」


「ガディアス?」


「あの怪人のことだ。君にはガディアス因子に対抗する力がある。だから、このガディアス因子の力を使えるはずだ」


十文字は守に円盤のような物を手渡した。真ん中は赤のクリアパーツ、まわりは白い枠でかこまれ、返しのような装飾がある。


「これを胸に装着するのだ。そうすれば、フォトンベルトにより、ガディアス因子の導く姿へと進化する」


「進化……フォトンベルト……そうか、フォトンベルトって言えば宇宙人を信じる者にとっては当たり前の言葉。進化のエネルギーを秘めた光。俺がそのガディアスの力を借りて、逆にやつらをこの世界から抹殺してやるんだな」


 洞穴の入り口に立った。

「軽はずみだった。こんなことになるとも知らずに興味本意だけでこんなツアーくんで、めぐとも離れ離れになってしまって。でもな、魚太、美樹、めぐ!必ず助ける、それが、俺の……」


守は円盤を胸の装置にセット


「進化!」


 守の体は白い光につつまれ、UFOのキャトルミューティレイションのように円錐型になった光の中から、宇宙人のような姿の戦士があらわれた。




--3 エーユーフォー対スパイダーガディアス




 鋼鉄のような仮面に宇宙人のようにおおきな目。そして、屈強な体にも仮面と同じようにアーマーが装着されている。

「これが、ガディアスの力か。すごいぜ、視力も良くなって耳もよく聞こえる!」


「大地くん、我々の船はここをまっすぐ行った岸にとめてある。一点突破でいこう」


「わかった。俺についてきてくれ!うおおおおお」


 守は猛スピードで走る。そのあとをおう十文字とシンジ。

「まさか、本当に成功するとはな」

と、十文字

「隊長……、もし暴走してたら俺たち死んでましたよ」


「それはないと思っていた。ガディアスから人間に戻れた人間は少ない、それをなしとげた彼ならユーフォーディスクに閉じ込めたガディアス因子に体を犯されることはないだろう」


「まあ、そうですよね……俺がやったギアドライバーで助けるのも賭けでしたし」


 二人は守を追いかける。守は草むらを抜け、大量のオーガがいる場所まで来た。

「こ、こんなにいっぱいいる。ほんとに弱いんだろうな……いや、やるしかないよな」


 中には人を食ったあとなのだろうか口の回りを赤く染めたオーガもいる。その恐ろしい形相に飛び出すのを躊躇っているとすぐに十文字とシンジが追い付いてきた。

「あれー守ー。突破するんじゃなかったのー?」

 煽るシンジ


「う、うるせえ、敵のフォーメーションを確認してたんだよ!」


「んなこたいいからいってこーい!」


 シンジは守の背中をポンと押し、オーガの群れのなかに守を押し出した。

 オーガたちは一斉に守の方を向いた。


「ふっ、蛇に睨まれた蛙状態だぜ」


 鬼に睨まれた宇宙人はやけになり、鬼の一匹に突進する。


「おらああああ!全力パンチ!」


 自分が思ったよりも早く動いたその腕はオーガの顔面に直撃、その牙を砕き体ごと吹き飛ばした。


「お、おおお!いけるぞおおおお!」


 いきなり威勢のよくなった守。


「来やがれ鬼ども!滅びるのはお前らだ」


 殴り、蹴り、オーガをふっとばす。残り一体。


「よし!本当に弱かったぞ」


 飛び蹴りを放ちふっとばした。気を失ったオーガたちは爆発した。


「ば、爆発!?」


 爆発であたりは焼け野原のようになった。そして十文字が

「ガディアスのエネルギーは死ぬ間際になるとその命を守るために最大限の力をだそうとする。しかし、その力にガディアスの元となった生命体が支えきれなくなり爆発する」

と、説明。


「なるほど、つまり結果的に自分の力が自分を殺してしまう」


「そう、人類と同じだ……」


「……人間が自然を破壊してるってこと?」


「そうだ。いま、人類は母なる大地を汚しているだろう」


「ああ、そう言う人、けっこういるけど……俺は違うと思ってる」


「なに……」


「まあ、今は船に戻ることを考えましょう」


「あ、ああ……この先を目指してくれ」


 守を先頭に一同は走る。燃える焼け野原を背に薄暗い森のなかを走る。すると、一同の眼前に異様な光景が。

 木から木に巨大な蜘蛛の巣が張り巡らされている。明らかに普通の蜘蛛ではない。間違いなくガディアスだ。


「こんな蜘蛛の巣、振り払う!」


 守が蜘蛛の巣に手をかけると、その蜘蛛の糸は異様な粘りで守の手にからみついた。


「な、なんじゃこりゃー!」


 すると、上から守に飛び乗る影。腕が六本あり、大きな複眼に蜘蛛の顎。尻尾のような部分が蜘蛛の体の糸を出す部分、体の一番うしろ側の形になっている。


 口から糸を吐き出し、守の腕と足を地面に縛り付けた。うつ伏せに地面にはりつけられ身動きがとれない。そして背中の上には鋭い虫の顎を全開まで開いた蜘蛛の怪人。

 そのとき、怪人の背中に極太の針が突き刺さった。

「ぎゃああああああ」

悲鳴をあげころがりまわる蜘蛛怪人。それはシンジが放ったものだった。十文字の荷物の中にあった銃のよな武器。それから発射されたのだ。


「これは対ガディアス用の兵器。ガディアス因子の働きを鈍くする効果がある。だが、弾は少ない、ここで一気に決めるんだ!」


「お、おう!助かったぜ!」


 地面にはりつけられていたが、地面は土なので力ずくで引き離した。


「大地くん、腕のユーフォーの飾りの円盤を回すんだ!そうすればキャトルミューティレーションの要領で標的を引き寄せる光をだせる!その引き寄せた勢いをつかい、殴り抜くんだ!」

 十文字が叫んだ。


「よし!わかった!必殺のお見舞いだ!」


 対ガディアス因子銃により苦しみ悶える蜘蛛怪人に拳をむけ、腕についたユーフォーの形の飾りを回転させた。


「その名も!キャトルミューティレイトパンチ!」


 光が放射状に広がり、その中にとらえた怪人だけを引き寄せる。落ち葉や木々も少しだけ引っ張られるが怪人だけが勢いよく守るの方向へ吸い寄せられた。その怪人に向かい


「とりゃあああああぁっ!」


全力で振りかぶったパンチを怪人に見舞わせると、怪人は爆発し、爆煙だけが吸い寄せられた方向へ抜けていき、爆煙が晴れると、そこには守の後ろ姿があった。

 駆け寄るシンジと十文字。

「よくやってくれた。キャトルミューティレイト光線を出したあとはチャージが必要だ。変身を解除したほうがいい」

と、十文字


「え、進化したのにもとにもどれるのか。このフォトンベルトからディスクを抜けばいいんだな?」


「ああ、あとギアドライバーのギアーを左へ回すと人の姿へ戻る」

 胸のユーフォーディスクを外し、ギアを左へ回すと、守は元の姿に戻った。

「目的地はすぐそこだ、脱出するぞ!」

 今度はシンジが対ガディアス因子銃を構えて先導する。


「ああ……無事でいてくれよ、めぐ。魚太、美樹」


 愛する人をその手にかけたとも知らずに脱出する守。めぐみが喰われた場所にはまわりの血のりの中、1つの汚れもない指輪だけが転がっていた。あの守が贈った指輪だけが。


~つづく~

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