その9 『三人決死の戦い、シャークナイトVSマグネギアー』

 戦いの中、良樹は倒れた。一つの鍵を守に渡してくれと十文字へと託して。


1-- リングギアモンスター対バーディアンレヴァテイン、その決着


 炎の剣を握った翼の生えたガディアスとなったかけると、巨大リングの怪物。

 かけるは翼を使い、一気に巨大リングへと近づき、剣で斬った。だが、剣はその鋼鉄のような体にとめられる。リングは横回転し、かけるをなぎ払った。

「くっ!」

 吹っ飛ばされた体を足の大きな爪を地面に食い込ませ、止める。そのまま体制を立て直し、炎の矢を巨大リングへと撃つ。だがやはり、きかない。

「何処かに弱点はないのか!」


 鋭い眼で相手の体をよく観察するかける。ギアから伸びた鉄の棒がリングになったような形。ギアはつねに回転している。


「予測にすぎんが……あのギアはおそらく奴の心臓のようなもの、あのギアを狙うしかない!」


 そのころ、海里は神国財閥ビルの丁度北側、守とは真逆の方向にいた。


 こちらがわにも蜂たちが飛んでいる。しかし、他のガディアス対策本部が対抗している。


「ふっ、加勢といくか。フォトンエヴォルブ!」


 海里はシャークナイトへと変身。すると、他のガディアス対策本部の隊員たちが。


「おおー、あれはシャークナイト!」


「やったー!シャークナイトがきてくれた!押し返すぞー!おー!」


 シャークナイトの噂はガディアス対策本部に広く行き渡っていた。襲いくる蜂怪人たちを次々と倒していき、やがて蜂たちの姿は見なくなった。

 片付いたか、そう思った矢先、ゴトゴトと車輪が走る音が聞こえてきた。金属とアスファルトが擦れる音のようなものも混ざった音が。音の方向をみると、鉄の直方体の棒のようなものがこちらへと近づいてくる。直方体の長い棒が縦向きに進行し、上面と底面になった長方形の面の中心から、長方形の棒を貫くようにギアーがあり、それが体を貫通している。そのギアーを回転させることにより、車輪にし進行しているのだ。そして、もう一体同じ棒があらわれ、次はギアーのついてないただの鉄の塊の直方体の短い棒が三つとんできて、磁石でくっつくように短い棒、ギアー付き棒、短い棒、ギアー付き棒、短い棒と交互に横にドッキングしている。


「な、なんだあいつは、磁石!?」


 磁石の怪物は海里へむかい、そのギアーの車輪を転がし向かってくる。


「どうやら敵のようだな。それにしてもこのギアー、これはギアドライバーのギアーと同質のものだ。一体なんなんだ」


 このまま体当たりしてくる気のようだ。そうはさせまいと、海里は二の腕のうろこ状の装甲を手裏剣のように投げる。磁石の怪物に直撃しウロコの手裏剣は爆発。だが、磁石の怪物は止まらない。


「くっ!鋼鉄のような体には俺のうろこ爆弾が効かないのか」


 体当たりしてきた磁石怪物をジャンプで回避し、そのまま上に飛び乗った。すると、磁石怪物はそれぞれの棒が分裂し、磁力で宙を舞い海里を囲んだ。


「な、なんだと!」


 しかし、こんな時にも冷静に分析する海里はあることに気づいた。


「地面から離れたのにギアーはまだ動いている!」


 磁石怪物はギアー付きの長い磁石と短い磁石をドッキングさせたのを二組つくり、それで海里を挟み込む。両腕を伸ばし圧迫されるのを防ぐ海里。ものすごい力だ。怪物はその力をどんどん強くしてゆく。それにつれギアーの回転も上がる。


「なるほど、ギアーが奴の力の源!」


 ギアーを攻撃すればいい。しかし、こう挟まれていては身動きがとれない。そこに残ったもう一本の短い棒が引き寄せられてくる。短い棒はギアー付きの棒へと引き寄せられた。

 このまま海里に向かって飛ばし、激突させればかなりのダメージをあたえられたはずだが、なぜか。答えは簡単だ。

 海里は自分の二の腕についたうろこ手裏剣を爆発させ、その爆発の力で挟んでくる磁石から離れた。


「よし、あとは!」


狙いを定める。そして、磁石は海里のもとへと飛んでくる。


「今だ!」


 海里が投げた二つのうろこ手裏剣が磁石怪物のギアー二つに挟まった。


「爆砕!」


 そのまま爆発し、ギアーは粉々に吹き飛んだ。すると磁石怪物はただの棒と化し、それぞれバラバラに地面に落ちたあと爆発した。


「倒したか。しかし、なんだったんだこいつは」


 海里は気づいていないが、爆発のあとには、方位磁石が残されていた。


 一方、かけるはリング怪物のギアーを狙い、火の矢を飛ばす。だが、回転するリングだ、ギアーの部分だけを狙うのは難しい。


「チャンスがあるとしたら!」


 かけるはチャンスを伺っていた。そして、リングはまたあの光線の発射体制をとった。徐々に熱を帯びてくる巨大リング。かけるが狙っていたのはこの時だった。


「今なら動きが鈍っている!!」


 炎の剣を巨大リングのギアーへ向け投げた。ギアーに直撃した炎の剣。ギアーを砕き、巨大リングは爆発。炎の剣は火の粉となり、消えた。


「お、おわったか……」


 かけるは力を使い果たし、元の人間の姿へと戻った。爆発したあとには指輪がのこされていた……



2-- バトルインフリーフォール!青春に置き去りにしたその手を掴め


 守は神国財閥のビルへと突入していた。受付嬢はいない。蜂の怪人に変えられたのだろうか。エレベーターを止める。扉が開くと、そこにはサソリのようなガディアスが乗っていた。胸には灰色のユーフォーディスク。


「くっ!こんなとこに!」

 守がユーフォーディスクを構えると、ガディアスが喋る。


「大地守様でございますね。どうぞお乗り下さい。神国大和様のもとへご案内いたします」


「な、なに!エレベーターガールかよ」


 エレベーターに乗り込む。密室でガディアスと二人きり。異様な空気だ。念のために身構える。しかしそのままチーンっとなるエレベーター停止音。


「こちらの奥の部屋でございます」


 エレベーターの扉が開くと、そこは一直線の廊下だった。赤い長襦袢が敷かれたその廊下を、守は扉へ向かい歩く。そして、扉を開いたその先には社長室のようなテーブルと、椅子に腰掛ける大和。その隣には良奈が立つ。


「大和、良奈!」


「やっときたか。守、この日のために全ての予定をキャンセルしたんだぞ」


「大和、これはどういうことだ!自分が何をしているのかわかってるのかよ!」


「わかっているさ。まずはこの東京を壊滅させ、人類に管理者たるガディアスの力を思い知らせる」


 守は目線を良奈へ向ける。

「くっ!良奈はそれでいいのかよ!」


「……守」


「こっちに来いよ、大和を信じるお前の気持ちはわかるけど、これで自然が元にもどるだなんて思えない!」


 大和は立ち上がる。そして。

「良奈、お前は俺にずっとついていくと言ってくれたはずだ!俺を信じていれば必ず美しき理想郷を実現させられる!」


 すると、守の背後で大きな爆発音がした。長い廊下の向こう側のビルの壁がぶち抜かれ、そこから巨大な鳥のガディアスが顔をのぞかせている。


 そして、大和と守の間、部屋の真ん中の天井からシャッターがゆっくりと降りてくる。


「守、お別れだな。最後にお前と話が出来てよかったよ。未練を断ち切ることができそうだ。この部屋のこちら側は大きなエレベーターになっていてね。地下シェルターへとつながっている」


「くそ!良奈!こっちに来い!緑と海里が待ってる!」


「守!」


 良奈は決めた。次の瞬間、守がのばしたその手に向かって走っていた。

降りてくるシャッター、その向こうの守、守へ向かい走る良奈の背中。大和は追えなかった、地下へと行かなければならない理由があった。

「良奈ああああっ!お前は俺の!」


 大和の叫びも良奈には届かなかった。守は良奈の手をとり、閉まるシャッターをギリギリかいくぐらせた。そして。


「良奈……やっと目覚めた。あの時掴めなかったお前の手を掴んで」


「守……」


 守の腰から、銃が消えて、肩にトカゲが乗っていた。


「こ……この子は?」

と、良奈


「俺の相棒、バレットってんだ。さあ、ここを突破するぜ!」


 守はフォトンタスキにユーフォーディスクをセット、色は赤。そしてギアドライバーのギアに指をかけ。


「エーユーフォー、変身!」


 ギアを回した。光につつまれ、エーユーフォーの姿へと変わる。バレットも銃、ジェットマグナムに変身した。


「行くぞ良奈!」


 所謂、お姫様抱っこというやつで良奈をかかえ、ぶち抜かれた壁の穴から外へと飛び降りる。そうとうエレベーターでのぼってきたようでかなり高い。

 落下する守と良奈に並ぶように横を降下する大きな鳥のガディアス。


「鳥さんよ、俺たちを襲いに来たようだけど、俺はそれを待ってたんだよ」


 守は腕に良奈をしがみつかせ、片腕でかかえた。左手で抱え、右手に銃。


「今の俺は100%の大地守だ!つまり、この銃も100%トカゲガディアスバレットなんだ!俺の体を操るのにパワーを使っていた今までとは、威力が違うぜ!!!!」


 銃には既に黄色のディスクが取り付けられている。変身する時にバレットがディスクを咥えていたのだ。


 守は銃身で足のユーフォーの飾りを回し、キャトルミューティレイト光線を発射、鳥のガディアスへと照射し、ガディアスを引き付ける。引きつけたガディアスを蹴り、上昇。


「よし、成功だ!!」


 もう地面スレスレだが、下方向の鳥のガディアスへと放った隕石のような弾丸の爆発を利用し、さらに体を浮かせ、引き離すキャトルミューティレイト光線を地面へ照射し、ゆっくりと着地。


「どうだバレット。お前にこんな頭脳はあるまい」


 銃をくるくるっと回し、腰のフォルダーへとしまう。そして優しく良奈を下ろした。



3-- 全ての因縁に片を付ける戦い。エーユーフォー対ドライバーギアー


 ビルの麓へと着地した二人、そこは既にガディアスたちに囲まれていた。サソリ型のガディアスが数体。背中にビル、前にはガディアスの集団。


「スコーピオントルーパー!」

と、良奈


「スコーピオントルーパーってのか?あいつら」


「うん、普通のガディアスは個別にカスタマイズされて戦闘力を強化されてるけど、スコーピオントルーパーは戦闘力は捨てて量産性を重視したガディアスよ」


「なるほど、縛馬島のオーガたちみたいなもんかな!」


 よく見るとスコーピオントルーパーの中に異様な怪物が混ざっている。工具のプラスドライバーのような頭から細い鉄パイプのような腕が伸び、球体の関節を挟みもう一本の鉄パイプ。そしてその先の手の部分は大きなギアーだ。ドライバーの尻から鉄パイプのような胴体ものび、それが正方形の腰へつながり、腰からは腕と同じ様な構造の足。しかし足の先は鉄板のようなもの。全体の様子はさながらトカゲだ。

 守はこのモンスターに見覚えがあった。そう、縛馬島で出会った最初のモンスター。


「ドライバートカゲ!こいつは……俺をこんな体にした張本人!」


 ドライバートカゲをみて良奈が。


「そんな!ギアモンスターまで投入されてるなんて」


「え?ギアモンスター??あのドライバートカゲはガディアスじゃないのか?」


「ギアモンスター。生命の進化の情報を吸収するギアーが人間が扱う道具に寄生することにより生まれた怪物よ。ギアドライバーによりある程度の調教はできるけど、凶暴性はガディアスを軽く超えていて、実戦投入するなんて、逆に自然破壊につながるわ」


「ああ、俺は縛馬島でこいつと出会った。あのオーガたちやこいつも大和の手先だったってわけか」


「オーガは違うわ。ギアモンスターはオーガ駆逐のために投入されたの。まさか、その作戦の日に守たちがいただなんて」


 だから第一話のタイトルが『最悪のタイミング』だったのだ。


「全てはこいつから始まった。こいつを倒して、良奈。緑と合流だ!そして大和のやつをどうにかする!!大和川自然保存会第二のスタートにする!」


「うん!」


「そしてそれをかなえるのが、俺たち大和川自然保存会の青春の結晶!」


 守はディスクホルダーからザリガニのディスクを取り出した。ザリガディアスから奪ったユーフォーディスクだ。円盤ではなくザリガニのハサミの形をしたディスク。バレットが使えなかったディスク!


「俺なら使えるだろ。大和、これがお前なりのザリガニマンなら、俺と合わさって真のザリガニマンだぜ!」


~つづく~

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