エピローグ

 舞踏会が終わり、ドレスが消えて、いつもの景色に戻った町に少女の声がこだまする。

「マッチー! マッチー! マッチはいかがですかーっ? 幸運を呼ぶシンデレラ印のマッチですよー!」

「マッチ一つ!」

「私にも一つ!」

「俺は三つ!」

「スマイル一つ!」

「まいどありー!!」

 マッチ売りの少女は最高の営業スマイルを町の人々に振りまいた。


 少女の新商品は瞬く間に大人気になり、飛ぶように売れていく。

 名前を使う許可はあっさりともらえた。

 もともとこの想区ではシンデレラとマッチ売りの少女は幼なじみの友達なのだ。

 この調子でこの商売を、冬が来る前に軌道に乗せてやる。

 マッチ売りの少女は胸中で静かにガッツポーズを取った。


 これがこの想区での彼女の本来の運命。

 それなのにロキから他の想区での自分の運命を聞かされて、そのショックでカオステラーになってしまった。



 通りの向こうにエクスたちがたたずんでいる。

「どこか別の想区では、あの子は本当に……」

「……行きましょう、次の想区へ」

 エクスのつぶやきをさえぎってレイナが歩き出す。

 慌ててレイナを追いかけながら、エクスは少しだけマッチ売りの少女を振り返った。



 ――もしどこか別の想区で悲しい運命を背負ったもう一人のあの子に出会ったら、僕は何て声をかければいいんだろう。

 もしもこの想区に居る、たくましく生きているあの子の話を聞かせたとしても、マッチをすって見る夢が一つ増えるだけなのだろうか――

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グリムノーツ『女の子は誰でもシンデレラ』 ヤミヲミルメ @yamiwomirume

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