様々なメッセージのこもった深い物語

週間ノベルス様のレビューから、本作を知りました。
LGBTを扱っただけではなく、様々なメッセージが詰め込まれている深い作品です。

LGBTとわかると、アパート等の契約も断られることもあるのだとか。少しずつ世の中にも理解が広まってはいるものの、考えられないような差別が未だあることをメディア等で知り、驚きました。
芸術関連の本を読んでいて感じましたが、本作でも語られていたように、芸術家の中には、多少多く見受けられるのかも知れません。だからこそ、表現したい、訴えたい想いが、独特の感性と共に届けられるのでしょう。

複雑な事情を一人で抱える坂田くん、何があってもその人らしさを認めようとする、人としての器が大きい斉木くん、二人の良き理解者であり、恐ろしく頭の回る水谷くん。
まだ高校生という、大人になりかけてはいても未熟な彼らが、精一杯考えて、自立しようとする姿には胸を打たれ、誰もが応援したくなります。

LGBTを通して、男女を超えた愛だけではなく、作者様は「命」を描いていると思いました。
命の重さ、人それぞれの幸せとは……? 読み進むごとに考えさせられます。

こう書くと重い話かと受け取られそうですが、取っ掛かりやすく読みやすい文体で、時に艶かしくもあり、「キツい表現」だという箇所にも、読み手への配慮が感じられます。個人的には音楽シーンでもわくわくとしながら、一気にスルスルと読めてしまいました。

LGBTに理解がある方もない方にも、多くの人に知ってもらいたい物語です。
是非、ご一読を!

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