魂を好きになる、ということ

LGBTに正面から向き合い、人を好きになるとはどういうことかという普遍的なテーマを描く、とても深い作品です。

主人公のひとりには、周囲にひた隠しにしてきた秘密があります。一見、読み手の私には無関係のように思えるその事情は、しかし、決して特殊ではありません。私は偶然その事情を抱えずに生まれ育ち、彼は偶然その事情を抱えることになった、というだけの違いなのです。

誰しもが抱える可能性のある事情でありながら、この社会はまだ、当事者を受け入れる寛容さを持ち合わせていない。現実の問題を、二人の主人公の生きざまが、頭脳明晰な彼らの親友が、見事に炙りだしていきます。

冒頭に示される悲劇的結末へと突き進むストーリーの中、唯一の救いは、互いを想い合う二人の主人公のピュアな心です。それ自体が彼らを悲しいラストへと導いてしまうのは、なんともやるせないところですが…。
男だからでもなく、女だからでもなく、ただ、個人として相手を愛しく想う。究極に進化した恋の形であろうと思います。

一生忘れられない物語です。

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