彼による人物覚え書き


この書類の内容は

あくまでも俺個人が物語の登場人物を

おぼえておくために書いた物です。


ですので

読まれる方は物語を最初から読んだ上で

御確認ごかくにんにお使い下さい。


これを最初に読むと物語を見る動作が


『ミステリー小説で犯人の名前を先に知り、

合っているかを読んで細かく確認する作業』


と同じになってしまいますので。


・・忠告は確かにいたしましたよ。



○    ○    ○    ○    ○



マナミ(真奈美)さん


館の一室で目を覚ました、

この物語の主人公の少女。


記憶が無く、

この館にどうやって来たのかも

覚えていなかった。


両親の元へ戻るため

異形の徘徊はいかいする館からの脱出を目指す。


気が強く、頑固がんこで頭が固い。


警戒心は強いが、

異形にさえも同情心を持つ

お人好しな面も。


外見年齢は16~18。



『真相について』


館に連れてこられた当日、

彼女は最愛の孫と買い物の約束をしていた。


待ち合わせをしていた場所は、

昔から事故が多発する場所・・鏡の住処すみか


最初は孫の方が目を付けられていたが、

咄嗟とっさに自分の命を捨て、

かばった彼女の心を鏡が気に入り・・

そのまま館に魂を連れさらわれる。


記憶を全て消され鏡の手駒にされかけたが、

彼女の魂の奥底に残っていた


『大切な者への愛情』


までは消せず、自我を取り戻した。


鏡から記憶を取り戻した彼女は、

『永遠に生き続ける事』より

『大切な者達の手でほうむられる事』を選ぶ。


脱出したのちにその願いは叶い、

意識を取り戻した彼女は愛する者達への言葉を残し

息を引き取る。


穏やかに亡くなった彼女は、

守った孫や息子夫婦の手で大切にほうむられ、

愛する両親や夫の元へと旅立った。



彼女の眠りは、

残された愛する者達が守っていくだろう。



○    ○    ○    ○    ○



小人(こびと)


個体の呼び方ではなく、

人間の形が残っているモノを指す。


主に鏡の雑用や、

連れて来られた者を、

他の異形の場所へと誘導ゆうどうする事を目的として

造られた。


血に汚れ、

引き裂かれた衣服を身に着けているが、

靴下だけは白く新品な物を着用している。


無表情でくすくすと笑い、

普段はゆらゆら揺れるように動いていて、

その動きは遅い。


だが、

獲物えものに襲い掛かる時の動作は俊敏しゅんびんで、

力も成人男性より強く、

真正面から戦うのは不可能。


しかし、

体の造りや耐久力たいきゅうりょくは人間と同じなので、

人体の急所を狙えば勝機はある。


上記の理由から、

破壊されたモノも多数いるが、

減っても鏡がすぐに調達して増やすため

他の異形達は小人を消耗品としか見ていない。



元は鏡のゲームに巻き込まれ、

命を落とした普通の人間だった。


しかし、自我をすでに失い、

命令を実行するだけの人形に成り下がっている。


極稀ごくまれに、自我を取り戻す者もいるらしい。



○    ○    ○    ○    ○



毒りんご


小人に次いで、数の多い異形。


見た目は、

真っ白な大ぶりの林檎りんごに、

紫色の女性の唇がついている。


眠る時以外は、

常にヒステリックに怒鳴り散らし、

金切かなきり声を上げ続ける性質を持つ。


上記の理由により、

主に見張りや偵察ていさつ、罠として使用されている。


特に、

耳のいい狩人との相性が良く、

毒りんごが対象者を見つけて騒ぎ、

狩人が素早くとどめを刺すという、

連携れんけいをとる事が多い。


毒りんご自体はうるさいだけで、

一見いっけん無害にも見え、

おろかな対象者にあなどられる事もあるようだ。


しかし、

話を聞き返したり反論したりすると、

段々声が大きくなり、

最終的には超音波で相手の鼓膜こまくや脳を

破壊するという能力がある。


それに、

鉄でさえ千切ちぎれるほど噛む力が強く、

他のりんごとは意識がつながっていて、

連携れんけいをとる知能もゆうしている。


そのため

集団で対象者を喰い殺す事や、

食べ物に化け舌を千切ちぎるなどの作戦で、

狙った者を確実に仕留しとめる方法をとる。


自身の判断が間違っていた事を知った時には、

すでに命を落としているだろう。


しかし、

耐久力たいきゅうりょくは普通のリンゴと同じなので、

集団でなければ撃破げきはは可能。



元は、

鏡が白雪姫役を探している時に、

連れて来られた被害者の若い女性達。


彼女達の必死な叫びをうるさく感じて、

鏡は非常に腹を立てる。


そして、

女性達の大切にしている容姿をうばい、

みにく相貌そうぼう金切かなきり声だけを上げる

毒りんごへと変えてしまった。


毒りんご達には、本能的に

『美しい容姿がうばわれた苦痛』

が残されている。


そのため女性の対象者を見ると、

残虐ざんぎゃく化する性質を持つ。



○    ○    ○    ○    ○



狩人


女王に次ぐ高い能力を有する、

強力な異形。


頭部は狼に似た獣型で、

白い生花せいかのバラを飾り


胴体どうたいは、

ボロボロの赤黒いドレスを身にまとった

女性型


両足は猫科の獣の物という、

人間の名残が残っていない姿をしている。


胴体どうたいに両腕は無いが、

胸の中心からどす黒い男性型の腕と、

背中の中心に全体が真っ赤で爪が黒い

女性型の巨大な腕が生えている。


その外見とは反し、

穏やかで丁寧ていねいな口調と、

王子のように甘い男性の声をしているが。


これには催眠効果さいみんこうかがあり、

聞いた者は警戒心が薄れ、

その言葉にしたがってしまうという

厄介やっかいな能力になっている。


素早すばやく戦闘能力も高いので、

1度見つかれば逃げる事はほぼ不可能だが、

館内で手に入る

『銀の指輪』

を使用して動きを止める事は出来るようだ。



元は鏡の気紛きまぐれで狙われた、

音楽家の若い恋人同士。


恋人同士だった男性と女性の体を

いびつに混ぜ合わせ、

意図いと的に2つの本能が残された。


1つは、

うしなった恋人への恋情れんじょう


本能的に

「大切な恋人をうしなった。」

事を覚えているため

狩人は目に映った人間を

うしなった恋人」

と思い込む習性がある。


それは

男女関係無く起こるのだが、

もう1つの


「恋人をうばう者への憎しみ」


という本能にきざまれたもっとも強い感情が、

それを厄介やっかいな物にしている。


男性型の部分は、

女性には好意的で守ろうとするのだが、

女性型の腕に残された微量びりょうな意思が

「大切な恋人をうばう敵」

と認識、反応し、

相手の女性をあやめてしまう。


反対に、

女性型の腕は男性には好意的だが、

男性型の部分がやはり敵意を持つため

結局は殺してしまう。


なので、

狩人は見る者全てを恋人として何処どこまでも追うが、

つねに怒りの表情で相手を威嚇いかくし続けるのだ。


狩人用のアイテム

『銀の指輪』は、

婚約時に男性が女性におくった遺品いひん



○    ○    ○    ○    ○



女王


鏡によって造りだされた中で、

最も古く強力な異形。


茶色い濃淡のうたんの染みが付いている

ボロボロのローブを身にまとい、

それを引きりながらゆっくりと館を

徘徊はいかいしている。


頭部は男性の老人で、

肌はにごった灰色で紫色のはん点がある。


右手は女性型で

爪は全部折れ曲ってはいるが

全て真紅にられ、


左手はふっくらした子供の形で、

コールタールのような不気味な人形を持つ。


表情は笑顔だが、

黒い涙を流しながら、

つねに何かをなげいていて、

号泣ごうきゅうに近づくほど満面の笑顔になる。


綺麗きれいな少女の声をしているので、

声だけを聞いた人間が子供と勘違かんちがいをし、

つかまる事もあるらしい。



正体は、

この場にまった

「殺された者達の恐怖心」


恐怖心から造られたので、

恐怖をいだいた者の居場所を把握はあくできる。


気の弱いふりをして手をつながせ、

手をつかんだ相手の恐怖心を増大させ、

取り込んだり発狂させたりできる

能力を持つ。


つねに笑顔なのは、

見下みくだしている目を隠すため


生き物は全て恐怖心を持つので、

女王につかまったら逃れる事は出来ないだろう。



・・恐怖さえもコントロールできる、

強靭きょうじんな精神を持っていれば話は別だが。



手に持つ不気味な人形の正体は、

取り込まれてしまった被害者達。



○    ○    ○    ○    ○




今回の事件の黒幕で、

元凶。


子供の容姿ようしと言動で相手を油断させ、

わなに誘い込んでは連れてきた人間を

殺していた。


この行動を

「ゲーム」としょうし、

鏡自身はこの館で行う殺戮さつりく

遊びとしかとらえていない。


その能力はやはり高く、

普通の人間では太刀打たちうちできないだろう。


戦闘時は、

漆黒しっこくの鏡で出来た巨躯きょくの人型へと姿を変え、


素早い動きで怪力を持つ手足を振るい、

攻撃してくる。


元々の知能も高い上、

長くこの場所にいた事で老獪ろうかいになり、

戦闘中に会話で動揺どうようさそうという事も。



元々は、

捨てられた普通の子供だった。


山に捨てられ、

野犬に襲われた事で命を落とすが、

母への強い想いから地縛霊じばくれいとなってとどまってしまう。


自分が死んだという意識があまり無く、

そのために、

この場から離れられない理由を理解していなかった。


長い年月の中で、

自由に何処どこにでも行ける生きた人間に

憎悪ぞうおいだくようになり


自身がしばられている場所が道路になった事で、

事故を起こし人を殺すという化け物になってしまう。


本能的に


『成仏=自分では無くなる』


と思っているので、

むかえに来た母に気付いてもらえない」

という理由から、

この館から離れる事をこばんでいた。



母親と合う事無く、

その魂は消滅しょうめつしたそうだ。




以上を持って、

この話の書類作成を終了といたします。


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「閉鎖空間」それ即ち全ての始まりなり 空木真 @utugimakoto

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