この一年を追体験したとき、目頭をハンカチで拭わずには居られない

四月一日をテーマにした、一貫性のある恋愛叙事詩です。大学のアニメ研究会を舞台にした、サークル内恋愛のあれやこれ。

ヒロインの苗字が四月一日(わたぬき)、という所から発想したのでしょうか。センテンスごとに日にちを設け、時系列順に読ませることを意識した文章が非常に巧みでした。

一途に一人の女性を想い続ける主人公の心境も、ストレートでありつつオタクらしい忸怩たるジレンマに悩まされていて、共感できる人は多いはず。
サークル活動を経て徐々に距離を詰めて行く恋愛模様も、堂に入ったものです。この分量でよくぞ一年間の軌跡を書き切ってくれました。

結ばれるけど、結ばれない、痛切な想いを告白する最後の一文をぜひ、多くの方にも体験して欲しいです。
定番だけど、だからこそ胸を打つ王道が待っています。

その他のおすすめレビュー

織田崇滉さんの他のおすすめレビュー415