最終話
脱力した女の身体は、気の抜けたサイダーのようなだらしなさがあった。人間とも人形とも違うその塊を見下ろしながら、私はほっと息をつく。
私はただ、寂しいのだ。寂しかった。
スナッフマンという狂人に大切な女性を無残に殺され、上っ面の同情をくれる周囲の人間たちの言葉の空虚さに気付いたとき、私は孤独なのだと思った。
世界でただ一人、私だけが孤独なのだと。
立ち上がると、方々に取り付けておいたカメラの回収を行う。死体の処理もさることながら、映像の編集にも、骨が折れそうだ。
スナッフマンになるつもりはない。死んでも、同じ土俵に上るつもりはない。
私はただ、欲したのだ。
スナッフマンに大切な恋人を殺された男、を。
私の気持ちを唯一本心から理解できる人間を。
私が選んだのは彼女ではなく、その恋人のほうである。死ぬ人間は誰からも愛されているほうがいい、スナッフマンが殺した、彼女のように。女が死んだ理由を強いてあげるなら、ただ、それだけだ。最後まで、それを理解できたかどうかは、わからない。いっそ、意味や理由など、知らないままに死んだほうが幸せかもしれない。
君は、どうだったろう。
ようやく孤独を免れる私は早く、本当のスナッフマンによる被害者が出てきてくれることを神に願った。
今度はただただ、彼女のために。
スナッフマンの犠牲者 枕木きのこ @orange344
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