熟練の技量を感じさせる

この人はプロなのかと思った。もちろん商業書籍として既に出版されている時点でプロでいらっしゃるのだが、この作品自体が、設定、台詞、文章力、構成、キャラクター、ストーリー、すべてにおいて素人くささがない。この作品以前からプロでないと、なかなかここまでの作品は書けない。少なくとも相当な技量がなければ無理だろう。
テーマ自体は深刻なのだが、内容や話の進み方はコミカルなので、読者には「何の苦労もなく書いているように見える」だろう。正直言って、技量的には「なんでこんなのが出版されているのか、人気作なのか」と思うことも多いライトノベル業界である。ここまですんなりとプロの技量で満足させてくれる作品は稀少であるし、貴重だ。
これはきちんとした小説だ。月末に束になって資源ごみとして回収されるような「消費財」ではなく、きちんとした小説だ。
大人の読者を満足させることと、若い人の愉しみを満足させることは決して二者択一ではない。本当は両立できるはずなのだ。
きちんとした小説を読みたい方にはおすすめの作品だ。

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