世界で一番過小評価されている「なろう」小説

他と較べてどうこう言うのも、嫌らしいかも知れないが。事実として言えば、傑作は、そうそう無いから傑作である。「なろう」小説を読んでいて、本当にごく稀に、ページをめくる手が止まらない作品がある。その時には、知名度などでそこまで高く評価されていない(ように見える)作品であっても、おいおい評価が追い付いてゆく、そんな作品は何作か読んできた。いわゆる、読者である私を自分で褒めてあげたい案件である。
「いい身分だな。俺にくれよ。」は、主人公アイザックがまだ侯爵家の跡目争いをしている時から読み始めた。以来、更新が一番待ち遠しい小説だ。
大袈裟ではなく、この作品を読むために生きているような気がしている。
「なろう」の累計ランキングで何位に入っているのか、なんと累計300位にも入っていない。これはどう考えてもおかしい。この作品を持ち上げるために他を貶すのは、作者には迷惑なことだろうが、思わずそうしそうになるくらいの奇妙さだ。ランキングを拒否しているのか、何かロスチャイルド家が暗躍するような国際的な謀略が背後にあるのか。そう考えざるを得ないほどの奇妙さだ。
「なろう」作品200作以上読んできた私に、TOP10を選べと言われればこの作品は入る。TOP5をと言われても入ってくるし、TOP1を、と言われれば、「無職転生」と「本好きの下克上」とで迷いながらもこの作品を推すかも知れない。
そうした読者である私にとって、この作品の「知られなさ」具合は、地団駄を踏むくらいに怒りを覚えるものだ。
中国人が勝手に翻訳して、中国語のwebに勝手にアップロードした事件もあったが、作者には迷惑なことだろうが、私は思わずその中国人の選別眼を褒めたくなった。著作権云々を別にすれば、彼らも翻訳する労力にそぐわない作品は翻訳しないだろう。
こんなのがアニメ化までしてと、ネガティヴなことは言わないように心がけていても、つい言ってしまう、そう言う凡百の作品は、海賊翻訳の餌食にはなっていないのだ。海賊たちはある意味、目利きでもある。
まだ読んでいない人たちは、幸福である。読書に溺れると言う根源的な快楽へ、ようこそ。

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