あとがきのようなもの
目指したものと世界観
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本作『帝国への海図』は、未知の深海に挑むダイバーを描きたくて書き始めたものです。
宇宙への進出と、深海への進出を比べると、深海の方が数段難しいという説があります。それが正しいものであるかどうかは分かりません。
しかし、両者を調べれば調べるほど、そこに用いる技術が似通っていることに気づかされます。宇宙では無重力と真空との闘いで、深海は大水圧とガス(酸素、窒素など)酔いとの闘い。どちらも耐圧殻を使って挑まねばならず、どちらも生身の人間が御することができる世界ではありません。
筆者が今回、深海を描くことを選んだのは、宇宙よりもそちらの方が、より人間臭く魅力的に思えたからです。
一足飛びにSFの未来に飛べば、火星への旅、太陽系外への旅は容易に思い描くことができますが、深海への旅は簡単には思い浮かびません。きっとどんなに未来に行っても、ダイバーたちは人間臭く、海の底に挑むのだろうと思えます。
そんな、どこをどう押してもスタイリッシュに書きようがない世界に、とてつもない魅力を感じました。
本作には、このダイバーのストーリーと共に、2つの要素を入れ込んでいます。その一つ目は兵器です。実は筆者は第二次大戦時の兵器に、とても魅力を感じていました。人を殺す道具のはずの兵器が、この時代までは妙に泥臭く、人間臭いからです。
「伊400型がV2ミサイルを撃っていたらどうなるか」というアイデアは、ずっと前から妄想していました。思いついた時に、にすぐに両者のスケールを確認したら、何と伊400型の格納庫には、V2が2発収まるのですね。
しめた! と思い、いつか使おうと思っていたアイデアでした。
2つ目に入れた要素は、は金融の不条理です。誰がどう考えて不可思議で、しかも制御不能な金融構造の上に世界中が乗っているのですから、きっと近いうちにそんなもの、壊れてしまうぞと思っていたのです。
そこで、自分ならばどう金融構造を壊すだろうかと考え、それをスケールアップしたのが、本作での『管理金準備制度』です。
金融関係者に意見を聞きにいったところ、大いにあり得るどころか、すでに水面下で進んでいる話とも聞かされ、いよいよ面白くなりました。
こんな要素の寄せ集めが本作、『帝国への海図』なのです。
また『帝国への海図』は、筆者が『カクヨム』で別途公開済の作品、『ホンファの一日』で描いている、ある大きな世界観のスピンオフでもあります。
筆者の手元には、すでに書き終えた『セセの刻印』という未公開の作品があります。この作品は『ホンファの一日』と対をなす作品であり、近未来のダイビングテクノロジーを書いたものです。筆者がダイバーや深海への挑戦について、調べる切っ掛けになった作品でもあります。
ここから、設定と世界観の一部を切り出したのが本作というわけです。
因みに『セセの刻印』にもルイスとミゲルとエヴァが登場します。そちらでは、ミゲルとエヴァが主人公で、ルイスが脇役でした。
スピンオフも含め、『帝国への海図』では、これまでやったことがなかった色々なトライをすることができました。
とても良い経験をしたと思っています。
さて、また別の作品で、お会いできますように。
高須匡躬
帝国への海図 Ⅱ ~飽和潜水~ 高栖匡躬 @peachy
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